ソードアート・オンライン ──孤高の白虎── 作:マイペースライター
他の作品の二次創作を書いていたんですが、ふと書きたくなってこっちにも手を出してしまいました。
駄文でと妄想を詰め込んだだけの作品ですがマイペースに読んでいただけたら幸いです。
《ソードアート・オンライン》 ベータテスト 最終日 第10層《カガチ・ザ・サムライロード》戦
アインクラッドの第10層フロアボス、カガチ・ザ・サムライロードを討伐するために集まったのは、ベータテスト最上位層のプレイヤーたち、約20名。その中で、ひと際異なる存在感を放つプレイヤーがいた。
彼のプレイヤーはReo。その見た目と戦闘スタイル、そして冷徹なまでの完璧さから、彼は「白虎」と呼ばれていた。白髪をなびかせて戦場に立つその姿は、まるで戦場に舞い降りた戦神のようで、周囲のプレイヤーたちは、その存在を感じ取るだけで、自然と背筋が伸び、彼の言葉に無意識に従っていた。
「遅れてごめん、準備はできてる?」
その一言に、誰もが黙ってうなずき、無駄のない動きで準備を整えていく。まるで彼の言葉だけで、全てが決まるかのように周囲が動き出した。
「ボスの攻撃パターンは、偵察半の情報を元に把握できた。盾役は今回は後ろに少し下がった方がいいかもしれない。アタッカーは、間合いをしっかり見て動いて」
その言葉が、空気を静かに支配していた。どんな命令よりも確実に従わせる力を持っていた。
討伐隊のメンバーは全員精鋭だ。前衛役は4人、後衛役は6人、残りは支援役となり、ボスの動きを見極めながらサポートのタイミングを待つ。
「よし、それじゃあ今回も全員で生き残ろう」
戦闘が始まると、カガチ・ザ・サムライロードが二刀を振り下ろしてくる。巨体を揺らしてその刀を振りかぶるが、そのプレイヤーは、ただの一歩も動かずにじっとボスの動きを観察していた。
次の瞬間、彼はまるで風のように飛び出し、その速さは他の誰もが見失うほどで、すぐにボスの間合いに入り込んでいた。
アタッカーたちもその動きに合わせ、敵の懐に飛び込んでいく。
数秒後、彼の一閃がカガチの体に深く刻み込まれ、ボスの動きが一瞬だけ鈍る。次の瞬間、彼はすぐに退避し、ボスの反撃を巧みに避けた。
その後の数秒間、彼の動きはどこまでも速く、完璧だった。
まるで他のプレイヤーたちと連携しているかのように、みんながその動きに合わせて戦闘を進めていた。
攻撃の手を緩めることなく、ボスの体力を削り、確実に追い詰めていく。
数分後、ついにカガチ・ザ・サムライロードは倒れ、その巨体が地面に沈んでいった。
討伐完了の瞬間、静けさが訪れた。周囲のプレイヤーたちは、互いに言葉を交わすことなく、自然と彼の元に集まっていた。
「良くやった、みんな」
その一言が響いた後、彼は振り返ることなくその場を離れ、次なる戦いへと意識を向ける。
討伐隊のメンバーたちは、あまりに完璧な戦闘を見せられたことで、しばし言葉を失う。しかし、次第に口々に感嘆の声を上げながら、彼の後ろ姿を見送るのだった。
そして数十分の後ベータテストの終了の合図とともにゲーム内に残っていたベータテスター達は強制的にログアウトさせられるのだった。
⸻
意識が現実に戻り、ナーヴギアをゆっくりと外す。ぼんやりとした頭の中で、アインクラッドの景色が次第に薄れていくのを感じる。今まで味わってきた戦闘の熱や仲間とのやり取りが、まるで夢のように遠く感じる。
「……終わっちゃったな」
しばらく呆然と立ち尽くし、ふと窓の外を見やる。外はもうすっかり夕方の空。忙しい日常がまた始まる。ゲーム内での出来事を反芻しながら、深く息をついた。
先程のフロアボスとの戦い、しっかり厳選したとはいえメンバーの中に一際目を引く動きをしていたプレイヤーが2人いた。迅速で正確な行動、そして何より、迷いのない一撃。
「……あの人達、なかなかだったな」
名を、たしか——キリト。そしてもう一人、直感的に印象に残ったプレイヤーがいた。ミトという名の不思議なアバターが記憶に残るプレイヤー。その2名が群を抜いていた。
そして記憶を遡るのもそこまでにして、一呼吸終えると立ち上がりそのまま部屋を出て下の階へ降りていく。その先のリビングには母がいた。母は僕を見つけると、優しく微笑んだ。
「あら、玲旺。ゲームはもう終わったの?」
「うん、一区切りついたよ」
「そう。もうすぐ夕食作るからしばらく待っててね」
「うん」
母の優しい問いかけに、僕は適当に答える。話しながら、心の中ではすでに次のことを考えていた。アインクラッドで見た風景や、あの戦いのことを、もう少し考えたい。けれど、現実の世界でもしっかりしなければならない。
その時、リビングの扉が開く音が聞こえてきた。僕の長兄——皇 竜也が、険しい表情で現れる。
「お前、またゲームか?」
その言葉に、僕は少し苦笑を浮かべる。「うん、ちょっとね」
竜也は僕に向けて鋭い視線を投げてきた。視線には明らかに苛立ちと不満がにじんでいる。それも当然だろう。彼は、家族の中でずっとトップに立ってきた人物で、皇財閥の後継者としての地位を固めている。しかし、僕——玲旺が若干14歳でありながら、すでに自分の会社を経営し、技術や才能を発揮して成果を上げ続けていることに対して、彼は複雑な感情を抱えているようだ。
「ゲームばっかりして、他のことはどうした?後継者じゃないにしても、少しは家のことを考えろよな」
竜也の言葉には、どこか焦りのようなものが感じられる。だけど、僕はそのような言葉に動じることはない。実際、僕はゲームをしていても、何一つ問題がないと思っている。仕事だってちゃんとこなしているし、家庭のことも考えている。それに、僕がこのまま成果を上げ続ける限り、竜也が心配するようなことはない。
「わかってるよ、心配しなくても大丈夫。ゲームもただの気晴らしみたいなもんだし」
僕は穏やかに言う。竜也がイライラとした様子で腕を組み、しばらく黙っているのを見て、僕は続けて言った。
「それに、僕はまだまだ成長中だし。ゲームの世界にだって学べることはあるんだ」
竜也はそれに対して何も言わず、むしろ少し顔をしかめた。おそらく、僕が言うように、彼自身も心の中で何かを認めたくないのだろう。だけど、僕には彼の心情を無理に解釈するつもりはない。
「お前はただの子供じゃない。皇の人間だということを忘れるな」
その言葉には、どこか対抗心が見えた。竜也は以前から僕が彼の席を狙っているのだと考えているようだ。しかし、僕の頭の中にはそのようなことは一切ない。今は、ただ自分がやりたいことをしているだけだ。
「わかってる。ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫だよ」
竜也は渋い顔をしながら一言、「お前、ほんとに」とだけつぶやいて、苛立ちながらも部屋を出て行った。
少しだけ胸の奥に何か引っかかるような感覚があった。竜也が僕に対して持っている対抗心と嫉妬。彼が家業に対してどれだけ責任を感じているかを理解しているからこそ、言葉には敏感にならざるを得ない。けれど、僕には僕のやり方があるし、これからも自分の意志を貫いていくつもりだ。
「……まあ、いいか」
それだけ呟いて、僕は部屋の片隅にある机に向かい、再びモニターを点けた。ゲーム内で過ごした時間が、もう一度頭の中で輝き始める。けれど現実は現実。僕にはやらなければならないことがある。
その先にあるのは、また次の冒険。今度はどこまで行けるのか、自分をもっと熱くさせる物があるのか。まだわからないけれど、ひとつだけ確かなことがある。
『ソードアート・オンライン』は退屈だった僕の世界に唯一熱を与えてくれる存在であるということだ。
現実って厳しいよね