ソードアート・オンライン ──孤高の白虎──   作:マイペースライター

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はい、というわけでリンクスタートです。
ここからSAOが始まっていきますね〜


リンクスタート

 

窓の外には、秋の柔らかな陽射しが差し込んでいた。東京の街は、どこか浮き足立っているようにも見える。

 

大型ディスプレイに映し出されるニュース番組。その特集は今日のメインイベント――《ソードアート・オンライン》正式サービス開始についてだった。新型フルダイブ型VRMMORPG。βテストの終了から約一か月、ついに幕が上がる。

 

《ナーヴギア》とソフトを求める行列の映像が画面に映し出される。秋葉原の電気街、全国の大手家電量販店。長蛇の列が朝からできていたらしい。

 

レオ──皇 玲旺はソファにもたれかかりながら、それを見て少しだけ苦笑した。

 

「……みんな、本当に待ってたんだな」

 

自分は、その行列に並ばずに済んだ。ベータテスターとして参加していたことで、正式版のソフトは優先購入権によって手に入れることができていた。皇財閥の人間という立場が関係しているかどうかはともかく、幸運だったのは間違いない。

 

テーブルの上には、パッケージから取り出したばかりのSAOディスクと、ナーヴギア。メタリックな曲線が美しく、何度見ても近未来を感じさせるデザインだ。だが、レオにとってそれは“装備”であり、“道具”だった。

 

「……やっと、帰れるな」

 

ポツリと、独り言のように呟く。

 

彼にとってSAOは単なるゲームではなかった。あのアインクラッドで過ごした時間、磨いた技、感じた手応え――そのすべてが現実よりも濃密だった。皇家の後継争いも、家族の視線も、退屈な日々も忘れられる自由でいられる唯一の世界。

 

ベータテスト最終日に、自らの手で10層のボス《カガチ・ザ・サムライロード》を討ち取った瞬間の感触が、今でも掌に残っている。

 

ナーヴギアを手に取り、ゆっくりと頭に被る。薄く息を吐きながら、視界がバイザーで覆われていく。次の瞬間、耳に柔らかく響く音声認識システムの待機音。

 

レオは一瞬目を閉じ、心の中を静かに整えた。

 

「……リンクスタート!」

 

その言葉と共に、視界が一瞬で光に包まれる。

 

そして、次の瞬間――。

 

現実が遠ざかり、重力が変わり、彼の意識はアインクラッドへと滑り込んでいった。

 

 

光の奔流が視界を埋め尽くし、次第に輪郭を持つ世界が立ち現れる。

 

風の感触、地面の柔らかさ、空の広がり――。

 

五感が完全に接続されると同時に、そこはもはや「仮想」などという言葉では収まらないリアリティを持って、彼を包み込んでいた。

 

 

《アインクラッド》――その最下層、《第1層》に存在する都市《始まりの街》。

 

「……戻ってきたか」

 

レオは小さく呟いた。口にした言葉の通りだった。

 

視界の先には見覚えのある光景が広がっている。古風なヨーロッパ調の石造りの建物群。中央にそびえる塔《黒鉄宮》。そしてプレイヤーたちが行き交うにぎやかな広場。広場の端では、装備を調整する者、友人と合流する者、呆然と立ち尽くす者――。

 

だが、レオの目はその喧騒の奥を見つめていた。

 

「……多少、雰囲気が違うか?」

 

彼はゆっくりと歩き始め、目についた通りや店舗の構造を確かめていく。外観はベータ版とほとんど変わらない。だが、例えば装備屋の看板の色が違っていたり、アイテム屋の品揃えが微妙に変更されていたりと、マイナーチェンジがなされているようだ。

 

(運営が調整を加えたのか……)

 

そして彼は黒鉄宮へと向かった。

 

「……ここは混むからな。あまりお世話になりたくないものだ」

 

黒鉄宮を後にした彼は転移門広場の中心に立ち、空を見上げた。どこまでも高く、青い空の下に円形の浮遊城がそびえ、その上層に向かって幾層にも重なる巨大な影が伸びている。

 

一瞬、現実世界の時間感覚が遠のく。ここが“現実ではない”ことを、脳が忘れかけるほどに、全てが“本物”だった。

 

「さて、時間ももったいないし、他のプレイヤーに置いていかれる前に行こうか」

 

そしてレオは決めた。戦闘感覚を取り戻すため、まずは最初のフィールドに出てみようと。

 

そのまま南門を通り抜け、《第1層・草原地帯》へと足を踏み出す。

「……やっぱり、ここだ」

 

彼は静かに呟きながら、ゆっくりと周囲を見回す。

 

ベータテストで幾度となく走り抜けた道、見上げた空、そして斬った敵。すべてが“帰ってきた”という感覚を呼び起こす。身体の奥から、熱が蘇るような感覚。現実では得られない昂揚が、確かにそこにあった。

 

耳を澄ますと、遠くから剣戟の音と、プレイヤーたちの歓声が聞こえる。正式サービス開始直後のこの時間帯、多くのプレイヤーがここに降り立っているはずだ。

 

だが、レオは一人。孤独を選んでいたわけではない。ただ、この世界に戻ってきたその喜びを、まずは自分だけのものとして味わいたかった。

 

「フィールドの感覚……ソードスキルの反応、モンスターのアルゴリズム……少しずつ、戻していこうか」

 

彼は静かに剣を抜く。背中に背負っていた片手直剣。ベータテスト時の序盤に愛用していた型と同じ武器だが、性能は当然ながら初期装備だ。

 

それでも、握り込んだ瞬間、指先に馴染む感触が蘇る。敵の動き、スキルの発動タイミング、回避のステップ。身体が自然と戦闘に備えていく。

 

前方、草むらの中からゆらりと現れたのは《フィールド・ボア》。第1層における定番モンスター。レベル1の初期モブだが、攻撃は素早く、動きもそれなりに鋭い。

 

「ちょうどいい」

 

彼は低く構えた。

 

敵が咆哮とともに突進してくる。その一瞬を待ち、彼の身体が加速する。

 

「《スラント》」

 

斜めに切り裂く一閃。片手剣用の基本ソードスキルだが、両手剣のモーションに切り替えてもなお、鋭さは健在だった。

 

「よし、次はっ…!」

 

命中、そしてノックバック。敵がよろけた一瞬の隙に、即座に第二撃。

 

「《バーチカル》」

 

縦に振り下ろされる重い一撃が、フィールド・ボアの頭部に深く食い込む。赤いエフェクトが飛び散り、体力ゲージが一気に削れる。

 

数秒後、敵は消散。クリア音とともに、初戦闘は終わった。

 

息を整えながら、剣を振って返り血のようなエフェクトを払う。手応えは申し分ない。やはりこの世界では、何もかもが鮮やかだった。

 

「……やっぱり、ここが俺のフィールドだ」

 

笑みすら浮かべながら、彼は再び前を見据える。すでに彼の脳裏には、数層先の風景までが思い描かれていた。

 

その時だった。

 

背後から、ふと声が飛んできた。

 

「ほへぇ、あいつすげぇな……あの動き、お前と同じベータテスターじゃねぇかキリト?」

 

「ああ。あいつ……確かにベータテストで見たような……」

 

振り返ると、フィールドの端でこちらを見ている二人のプレイヤーがいた。そのうちの一人。黒い剣士風の装備を身にまとった男を、レオは一目で思い出した。

 

《キリト》。

 

ベータテスト、最終日。パーティメンバーとして戦っていたうちの一人で、その動きから記憶に残っていたプレイヤーだ。会話はほとんどなかったが、“ただ者ではない”という印象だけは持っていた。

 

レオは一歩前に進み、その2人のプレイヤーへと近づいた。

 




キリトと、、、もう1人誰でしょうね?
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