ソードアート・オンライン ──孤高の白虎── 作:マイペースライター
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レオは静かに歩み寄ると、キリトと視線が交錯した。
互いに言葉を交わさずとも、どこか既視感のようなものがあった。
「……やっぱり、君だったか」
先に口を開いたのはキリトだった。日が傾きかけた草原に、彼の落ち着いた声が落ちる。
「白虎のレオ。ベータテストの最終日、同じレイドで戦ってたからよく覚えてるよ。」
レオは一瞬だけ微笑んだ。
「僕も君のことは覚えてるよ、キリトくん。あの時僕の指示を完璧以上にこなしあ印象深いプレイヤーは君ともう1人しかいなかったからね。気軽にレオと呼んでくれ」
「こっちもキリトでいいよ。それよりもう1人って?」
その質問に対してレオが答えようとするが――。
「おいおい!俺も話に入れてくれよ!」
場に割って入ったのは、キリトの隣にいた武士のような面持ちのバンダナ姿の男。
その男はレオに声をかける。
「えっと、俺はクライン!俺も呼び捨ててくれ構わねぇ。今日からこのゲームを始めた初心者だ。」
「僕はレオ。よろしく、クライン。」
レオは一歩進み、クラインと握手をした。
「さっきまでキリトに操作教わってたんだけどよ。なんか雰囲気が違いすぎるっていうか、さっきの戦闘を見てすげぇやり込んでる空気がしてよ。思わず声をかけに来ちまった。」
クラインは後頭部をワシャワシャと掻きながら照れくさそうにした。
「構わないよ」
そしてキリトが口を開く。
「そうだ、レオ。良かったらクラインの動きを見てくれないか」
「キリト!?そ、それはちと申し訳ないんじゃ」
「僕は構わないよ。まだ本格的に攻略を進めようって訳じゃないからね」
「いいのか?それじゃあ頼む」
「よし、ちょうどいい。そこのモンスターと戦ってみてくれ」
草むらから小さな唸り声が聞こえた。
一頭のフィールド・ボア――小型の猪型モンスターが、こちらを警戒しながら接近してくる。
「じゃあ、クライン。さっき教えた通り、まずは通常攻撃で牽制。相手の出方を見て、タイミングを計ってそうどスキルを叩き込むんだ」
「おうよ・・・!」
クラインが抜刀し、フィールド・ボアに向かって剣を振るう。だがそれは少しかすっただけで、フィールド・ボアが興奮し、突進攻撃をしてくる。
「うお!?・・・んにゃろぉ!」
やられる前にやってしまおうとクラインは再度剣を構える。
しかし「止まれ」と、レオが静かに声をかけ、瞬時にクラインとフィールド・ボアの間へと入りその攻撃を剣で受け止める。
「前傾が強すぎる。その構えでは、モンスターの突進に対して踏ん張れない」
「そ、そうなのか?」
「重心を腰に落とす。両足は肩幅よりわずかに広め。左足は半歩後ろ。剣を振るとき、腕ではなく腰から捻るんだ」
レオの口調は柔らかだが、一つ一つの言葉に的確な重みがあった。
クラインは思わず身体を直し、レオの見本を真似て再度構える。
「よし、そのまま……斜めに間合いを詰めろ。真正面に立つな。敵の突進軌道を意識して、半身に構えろ」
「りょ、了解!」
クラインの声に合わせてレオはフィールド・ボアを解き放つ、そしてそのモンスターは再度咆哮とともにクラインへと突進していく。
レオが一瞬だけ声を張った。
「今だ、右足を軸に回避! 後ろに逃げるな、横へ跳べ!」
「わ、うおおおおおッ!!」
クラインの身体が反射的に回転し、ギリギリで突進を回避。
「よし、そのタイミングでソードスキルだ」
レオの指示に合わせ、クラインは土が舞い上がるなか、剣を構えなおして背後から斬りつける。
「《スラント》――!」
鋭く青白い軌跡が走り、フィールド・ボアのHPバーが大きく削られた。
硬直するモンスターを前に、クラインは後続の通常攻撃を浴びせる。
「すげぇ! 当たった、当たったぞ!」
「もう一度、距離を取って、回り込んで」
「おっしゃあ!もういっちょ!《スラント》!!」
その攻撃によりフィールド・ボアが光の粒になって霧散する。
クラインは息を荒げながら、剣を構えたまま叫んだ。
「やった……! 勝ったぞ、俺!」
「フォームはまだ粗い。だがタイミングはよくなってきた。敵の攻撃も見えていたな」
「へっへ……レオ、ありがとな。すげぇ分かりやすかったぜ。今まで画面越しのゲームしかやってこなかったからな。実際に自分の体使って“どう動くか”ってことまで考えると、全然違うんだな!」
レオは小さく頷く。
「反応は大切だ。SAOはただ敵の攻撃に反応すればいいってものじゃない。思考と判断、それに五感が使えるからこそ動作の一体化が求められる。“感じて動く”ことが重要だ」
「なろほどな!勉強になるぜ」
キリトもいつの間にか腕を組んで、感心したように言った。
「流石白虎だな。クライン、お前、一瞬で見違えたよ」
「へっへー、もっと褒めていいんだぜ?」
3人はそのまま笑い合い、並んで草地に腰を下ろした。
空はすでに茜から紫へと染まり、夜の訪れを告げている。
「……それじゃっ、そろそろ俺はログアウトすっかな。そろそろ現実の体も腹減ってるだろうしな」
「この世界じゃ空腹を満たすことが出来ても、現実世界はそうはいかないからな」
「おうよ!熱々のピザ注文してんだ」
「火傷には気をつけるんだぞ」
「おう!」
レオの心配に対して威勢よく返事を返す。
そしてクラインは立ち上がりながら、メニューを開いた。
「……あれ?」
「どうした?」
その声に対してキリトが振り向く。
「ログアウトボタンが・・・ねぇ」
「そんな訳あるか。ほらこの右の一番下に・・・」
キリトもすぐにメニューを操作する。
一瞬の沈黙。
そして――
「ほらな、ないだろ?」
レオも確認するがどのカテゴリを開いても、ログアウトの項目が見当たらない。
「バグなのか? いや、まさか、こんな基礎的なバグの洗い出しができてないはずが・・・」
クラインが額に汗を浮かべる。キリトの顔も硬直していた。
「これは・・・運営は大炎上だろうな」
「俺の熱々のピザ・・・」
レオの目は、虚空の一点を見つめていた。
この静かな違和感――何かが、普通ではない。
「何かがおかしい」
「レオ?」
キリトがレオに声をかけた瞬間、遠くで鐘のような音が鳴った。
それと同時にその場の3人の身体が輝き始める――。
「な、なんなんだよこれ!?」
「これは、強制転移・・・!」
「くっ・・・!」
この時、この世界に存在する全プレイヤーに同じことが起きていた――
もう1人はクラインでしたね。やっぱりね。
そして次回ついにあの方が来ますね。楽しみ。