貞操逆転世界で目覚めたけど、俺がTSした元男だって周囲の女子たちにバレてるんだが? 作:メソポ・たみあ
『旧第3話 捕食者からは逃げられない』と『旧第4話 ゲームしよっか』を統合してあります。
この世界は〝同性愛〟に寛容だ。
特に女子×女子の同性愛者は割と多い。
俺の通っている百合高内でも「アイツとアイツって実は付き合ってるらしいぜ」といった噂話もちょくちょく耳にする。
TVに映る女性芸能人も「○○と○○の熱愛発覚!」というスキャンダルが定期的にゴシップ誌に掲載されるし、最近では同性愛者のカップルYouTuberが自分たちの生活を配信するなんて活動も増えているとか。
何故〝同性愛〟――特に女性同士での同性愛者が多いかと言えば、それは勿論男性の数が少なすぎるから。
世のほとんどの女性は男性と巡り合えないので、必然的に同性同士でくっ付く機会が増えるのである。
さらに女性同士で赤ちゃんを作る医療技術も既に普及しているため、同性愛者が多くなって国が困ることもない。
この世界の日本の場合、元を辿れば平安時代の衆道ならぬ女色に端を発しており、その女×女の風俗文化が現代まで継承されているとかなんとか……。まあどうでもいいが。
なので「女だけど女が好き」という同性愛者は割かし珍しくない存在なのだ。
しかし……だからと言って俺がその同性愛を受け入れられるかは、別問題なワケで。
「だって元の世界で言えば、男から身体の関係を迫られたようなモンだしなぁ……」
――俺は花山院から身体の関係を迫られた。
有り体な言い方をすれば、
花山院という女が同性愛者――いや本人の弁を信じるなら
だって今の今まで「アタシは女も好きだ」なんて素振りは見せてこなかったのだから。
……いや、改めて思い返してみるとアピール自体はしてたのかもな。
俺に対して妙に距離感が近くなったのが、そのアピールだったのだろう。その事実に、狙われていた俺自身が気付きもしなかっただけで。
…………どうしよう。困った。
俺は今、感情の処理ができないでいる。
俺は別に同性愛者じゃない。
なんと言ったらいいのか、身体が同性を求めていないというか……。今の俺の性別は女性なので、同じ女性に対して不思議とあまりムラッとこない。
だがあくまで、俺の中身――つまり心は〝男〟だ。それも異性愛者の。
だから心理的には女性が好き。というか女体が好き。
今でも「男に抱かれたいか?」と聞かれれば、基本的にはNOと答えるだろう。
要するに今の俺は、心と身体がちぐはぐなのだ。
心理的には女性を求めているが、肉体的には女性を求めていない感じ。
男に抱かれたくはないが、かといって女に抱かれたいかと聞かれると……う~ん……。
ぶっちゃけ、自分で自分の性癖がわからなくなりつつある。
このままだと無性愛者にでもなってしまいそうだ。
だから花山院を受け入れてもいいのかどうか――というより受け入れられるかどうか、自分でもわからない。
花山院に迫られて自分が嬉しいのか嬉しくないのか、それすらもわからないのだ。
花山院は魅力的な女性だ。
顔は凄まじく綺麗だし、プロポーションも抜群だし、性格も明るく気さく。
もし元の世界にもアイツがいたら、疑いの余地もなく高嶺の花となっていたであろう。
そんな絶世の美女に迫られるなんて、以前の俺なら感涙にむせび泣いていただろうが……現状を素直に喜べない自分がいる。
いやまあ、女体同士でのレ〇S〇Xにまったく興味がないのかと問われると、それはそれで……。
……いや、これ以上考えるのはよそう。
本気で自分のアイデンティティを喪失してしまいそうだから。
「どうしたモンかな……。とりあえず花山院からは、しばらく距離を置くか……」
帰りのホームルームを終えた俺は、抜き足差し足で校舎玄関の下駄箱へと向かう。
職員室に呼び出しを受けた花山院はホームルームが終わるまで教室に戻ってくることはなく、俺はホームルームが終わるなり即座に教室を後にした。
そのまま教室にいれば、間違いなく戻ってきた花山院に絡まれるから。
心の平静を取り戻すためにも、今日はこのまま家に帰ってしまうのが一番だろう。
花山院には少し悪いが。
「よしよし、このまま誰にも見つからずに家まで……」
「誰にもって、誰に見つかりたくないの?」
「そりゃ花山院の奴に――」
どこからともなく聞こえてきた声に対し、俺は無意識に答える。
だがすぐにハッとして、背後に振り向く。
すると――そこには――
「かっ……花山院……!」
「言ったでしょ、放課後
そこには
あの――
▲ ▲ ▲
……俺は花山院に捕まった。
結局逃げられず、放課後は
女の執念は恐ろしい……。
いや、花山院が恐ろしいだけかもしれないが……。
「フフ、それじゃあどこ行こっか晶」
二人揃って百合高を出て、街へと繰り出した俺と花山院。
彼女は俺と肩を並べて歩き、満面の笑みをこちらに向けてくる。
……悔しいが可愛い。
本当に、コイツのビジュアルは百点満点だ。いや、百点では足りないかもしれない。最低でも五百点は下るまい。
それになにか香水を付けているのか甘い匂いもするし、綺麗で長い金髪がフワリと風に流される度に花のようなシャンプーの香りが鼻孔をかすめるし。
一言で言うと、花山院からはめちゃくちゃ女の子の香りがする。
この世界において女の子から俺の想像通りの女の子の香りがするというのは、かなり稀少――というか異常。
本当に、マジで、この世界が貞操逆転してさえいなければ、花山院は俺の理想オブ理想の美少女。
もし俺が男の身体のままで、異性を意識させられたままだったら、きっと今頃緊張で冷や汗が止まらなかったことだろう。なにせ俺、童貞だし。
なんなら未だに現実味がない。
どうして自分は、こんな絶世の美少女と肩を並べて歩いているんだろう……と。
――が、勿論そんなこと口には出さない。
少しでも口を滑らそうモノなら、絶対に花山院につけ込まれるのは明白だから。
なんなら、いつまた襲われるかわかったモンじゃない。
俺は警戒心を隠そうともせず、敢えて素っ気ない素振りを見せ、
「花山院が私を連れ出したんでしょ。どこへなりとも連れていきなよ」
「じゃあホテル」
「っ……あのねぇ!」
「フフ、冗談冗談」
反射的に顔を赤くしてしまう俺を見て、花山院は相変わらず愉快そうに笑う。
どうやらコイツは俺の身体を狙っている以外にも、俺をからかってその反応を見て楽しんでいる節がある。とんだドS女だ。
花山院は「それよりさ」と話題を変え、
「アタシのこと〝花山院〟って呼ぶの、やめてくれない? 下の名前で、
「え~? 別に花山院で――」
「い・く・み」
どうしても姓ではなく名の方で呼んでほしいらしく、重ねて催促してくる花山院。
なんか馴れ馴れしい感じもするけど――と思いつつ、
「……はぁ、わかったよ
彼女の名を呼ぶ。
すると郁美は「うんうん」と満足そうに頷き、
「いいね。やっぱり意中の相手に名前で呼ばれるのって、エッチな感じ」
悪戯っぽい微笑を浮かべて言う。
……もう突っ込まん。もう突っ込まんぞ。
下の名前で呼ぶ行為のどこがエッチなんじゃい、なんて絶対に突っ込んでやらん。
むしろお前の表情の方がエッチだろ、なんて思っても口に出してやるものか。
本当に、郁美のこの隙あらば会話に下ネタをぶち込んでくる癖はどうにかならんものか……。
いや、この世界の女子だったらこれくらいは普通ではあるんだけども……。
見た目が完璧な美少女であるだけに、思わず聞かされるこっちが恥ずかしくなっちゃうんだよな……。
「――っていうかさ郁美、あなたいつ気付いたの?」
「ん~? なにを?」
「私が、その……
――この世界で目覚めて以降、俺は〝この世界の女子〟として馴染むべく相応の努力をしてきた。
周囲の女子たちを観察し、その言動や趣味趣向を把握して、自分が集団の中から浮かないようにと務めてきたつもりだ。
なのに――いつの間にか、郁美は俺の中身が〝男〟であると見抜いていた。
正直、驚きを隠せない。
俺が尋ねると、やはり郁美は小悪魔っぽく口元に微笑を浮かべる。
「そんなの、見てれば気付くよ。だって晶ってば
「へ、変って……」
「ああゴメン、エロいって言った方が伝わるかな?」
相変わらずからかってくる郁美。
俺は彼女の発言をスルーし、
「もしかして、私の中身が男だって他のクラスメイトたちにもバレてる?」
「さあ、どうだろ。でも皆気にしてないなら、それでいいじゃない」
「……郁美は気にならないの? 私が男ってこと」
「別に~」
郁美は軽やかな足取りで、俺の一歩前に歩み出る。
そして可愛らしく笑ったまま、俺を正面に見据えて、
「外国で性転換手術でもした? それとも生まれつきそういう心の持ち主? ――なんでもいいよ。晶は晶だもん」
「郁美……」
「それに――」
郁美は、グッと俺に近付く。
そして左手を腰に回して互いに密着すると――右手で俺の
「ちょ――!?」
「エロければなんでもいいじゃん? エロは全てを解決する~……なんてね♪」
モミモミ、と
その手は綺麗だが、手つきは大変にやらしい。
「晶ってさ、アタシの好みにドンピシャなんだよ。晶が女でも男でも、アタシ構わない。だからアタシのモノになってよ」
「はっ――放してってば!」
どうにか捕食者の拘束から逃れる俺。
幸いにも周囲に人気はなく、俺たちのスケベすぎるボディタッチが誰かに見られることはなかった。
「わ、私はそういう趣味はないの! だから触らないで!」
「クスクス、それじゃあそういう趣味に目覚めさせてあげる」
捕食者の目つきをして、小悪魔のように郁美は微笑する。
だが俺からは少し距離を置き、
「でも晶が嫌なら、まずは普通のお友達から始めよっか」
「え……?」
「無理やりっていうのも嫌いじゃないけど、アタシ結構
「ゲーム?」
「そ、アタシは晶を本気で堕としにかかる。だから晶は、堕とされないように全力で抵抗する。期限は一か月。その間に晶が堕ちなかったら、アタシは潔く諦める」
フワリ、と郁美の長い金髪が風に流れる。
その姿はとても綺麗で、幻想的にすら見えた。
「アタシが晶を堕とすか、晶がアタシの誘惑に耐え切るか……