貞操逆転世界で目覚めたけど、俺がTSした元男だって周囲の女子たちにバレてるんだが? 作:メソポ・たみあ
――面倒くさいことになった。
非常に面倒くさいことになってしまった。
俺が郁美に堕とされるか、それとも郁美が諦めるかを賭けたゲーム。
もっと穿った言い方をするなら、この世界での俺の貞操――というより純潔を賭けた勝負。
だって堕とされた暁には、絶対に食われるだろうから。勿論性的な意味で。
勝負の内容はシンプル。
一か月の間、郁美の誘惑に耐えられれば俺の勝ち。逆に誘惑に耐えられなけば俺の負け。
……この勝負って、俺にとってなにもメリットなくない?
だって俺は郁美からのアタックに耐え続けるだけなんでしょ?
いやまあ、一か月それを無視して向こうが諦めてくれるなら、それはそれで面倒事が解決するからいいんだけどさ……。
そんなことを考えている内に、俺と郁美は繁華街に到着。
平日にもかかわらず周囲は人でごった返しており、とても賑やか。
見回す限り人込みのほとんどは女性で、転生前の世界を知る俺にとっては違和感しかないが、もうこんな光景も慣れたモノだ。
郁美は俺の隣を歩きつつ、
「ちなみにさ、晶は自分を〝男〟だと思ってるんだよね?」
「ん……まあ、一応……?」
「それじゃあ、やっぱり好きな物も男向けっぽい感じ?」
「うーん、どうなんだろう? あんまり意識したことないかも」
この世界は貞操観念が男女で逆転している。
加えて趣味趣向も逆転している節があり、例えば飲食物なら牛丼やラーメンといったガッツリ系の食べ物は女性の方が好むし、パフェやクレープといった可愛らしいスイーツは男性が好む傾向にある。
他にも娯楽なら、例えば車やバイクなどは女性の趣味の代表格で、化粧品やサロンなどは男性の趣味の代表格と言えるだろう。
ディープな趣味でいくと、例えばサバゲーなんてのは九割九分くらい女性の趣味になるんだと。
そんな感じなので、趣味趣向という観点で見れば、実は俺はこの世界の女性側に近い。
なにせ元々は男なワケだから。
だから女性として暮らしている中で困ったり違和感を覚えたりすることはあれど、不便さや生き難さを感じたことは意外と少なく、あまり気にしたことがなかった。
「晶って普段はどんなことして過ごしてるの? 趣味とかあるでしょ?」
「普段はゲームして過ごしたりとか、漫画読んだりアニメ見たり……」
「オタクくんなんだ。可愛いね♪」
郁美はニコッと微笑む。
オタクに優しいギャルか、お前は。
見た目がお嬢様なのにその台詞は反則だろ。
しかもオタク
俺が男だとわかっているから。
本当にわざとらしくてあざとい。
だが、そんなあざとさに一瞬でもドキッとさせられる自分が情けない……。
だってビジュアル五百点、笑顔の可愛さ五千点なんだもん……。
うぅ、陽キャ怖い……。
「そ、そういう郁美の趣味はなんなのよ」
「AV鑑賞」
「……ちょっとは真面目に答えて」
「ゴメンゴメン。それじゃあ――なんだと思う? アタシの趣味、当ててみて」
突然出された郁美からの問題に、「えぇ……?」と俺は困惑。
コイツの趣味ぃ……?
なんだろ、想像つかないけど。
学校にいる時でも、コイツがクラスメイトたちと趣味の話とかしてるのを聞いたことがない。
普段は他愛ない雑談とか下ネタとか、とりとめのない話ばかりしている。
まあ、意識して盗み聞きしているワケじゃないから、俺が気付いてないだけでそういう話もしていた可能性がないではないが……。
そうさな、コイツってお金持ちだし?
趣味なんて選びたい放題だろうから、お金のかかる趣味とか持ってるかもな。
「やっぱり車とかバイクとか? 女の子ってそういうの好きだもんね」
「ぶっぶ~、ハズレ。確かに車やバイクって嫌いじゃないけど、趣味ではないかな」
むぅ、違ったか。
だったらスポーツとかどうだろう?
郁美って運動神経が凄くいいし、この前体育の授業でバスケやった時なんて、華麗にスリーポイントシュート決めてたもんな。
あの時の健康的に汗を流す郁美の姿……それに頬を伝って落ちる雫のような汗は、それはそれはスケベ――じゃなくて綺麗だった……。
って、イカンイカン。
油断していると、ついつい思考が男の頃に戻りがちになってしまう。
やっぱりまだ心と身体が乖離してるんだよな……。
別に貞操は逆転してるんだしさして問題ないかもだが、そんな隙を郁美に晒すのはゴメンだ。
また捕食者の目で見られてしまうから。
「ならスポーツとかどう? この前体育でバスケやった時、凄い上手だったじゃん」
「ああ、あの時晶ってばアタシに見惚れてたもんね」
「――!? なんで気付いて……!?」
「あ、本当に見惚れてたんだ。言ってみただけなんだけど」
ニヤニヤと笑う郁美。
し、しまった……!
カマをかけられた……!
本当に見惚れてたことを知られるなんて、なんたる失態……!
隙を見せまいとした矢先、もう隙を見せてしまうとは……!
「それじゃあ素直にバラしてくれたお礼に、晶にいいこと教えてあげる」
「な、なによ……?」
郁美は俺の耳元に唇を寄せ、
「実はさ……アタシあの時、
ポソッと、小声でそんなことを呟いた。
「――――んなっ……!」
思わず、俺は自分の耳が熱を帯びる感覚を覚える。
郁美はスタイル抜群だ。
細身だが肉付きはよく、スリムだが出る所は出ている。
なので当然、
敢えて最低な表現の仕方をするなら、郁美のバストサイズは美乳~巨乳の間くらい。
大きすぎず小さすぎず、もし揉もうとすれば手の平に収まり切らず僅かに零れ落ちてしまいそうな……そんな贅沢なサイズ感。
一言で表すなら「綺麗な形なのに重量感あるよな」となる。
そういえばバスケやった時、いやに郁美の胸が揺れているような気もしたが……まさかブラ未着用だったとは……。
体育の授業って薄手の
危な……!
「なっ、なに考えてんの郁美!? そんなの、一歩間違えたら全部見えちゃうよ!?」
「なにか問題でも~? だってウチ、女子高だよ?」
うぐっ……!
確かにそうだった……!
どうせ異性がいないから、どいつもこいつも裸を他人に見られるのに抵抗がないんだった……!
「晶はアタシがブラしてないと意識しちゃうんだ? やっぱりエッチじゃん」
「ちがっ……うぅ、もう違うって言い切れないかも……」
自分がエッチでスケベであることを、もはや否定できなくなりつつある俺。
いやまあ俺だって元々はごく普通に健全な男子だったワケだし、その心が残っている以上、ブラなし美少女を意識するなと言われても無理がある。
本当にマジで、俺の純情を弄ぶのはやめて……。
「そ、それより話を戻すけど、郁美の趣味がスポーツっていうのは正解なの!?」
「それもハズレ。別にスポーツが好きって思ったことはないし」
「はぁ……それじゃあ結局、あなたの趣味ってなんなのよ?」
もう降参、といった感じで肩を竦めて、俺は郁美に尋ねる。
すると――
「
一言、郁美はそう答えた。
「え?」
「わからないんだよね、自分でも。正直、趣味って呼べる趣味がないと思う」
どこか遠い目をして、郁美はそんなことを言う。
そんな彼女の瞳は、少し寂しそうにも見えた。
ある意味意外な答えに、俺は一瞬目が点になる。
「趣味がないって……なにか好きな物とかないの?」
「好きな物ならあるよ」
「それって?」
「あ・き・ら♪」
こちらに向けて、パチッとウインクしてくる郁美。
……なんだろう、一瞬でも寂しそうだとかコイツを心配した自分がバカだったかもしれない。