貞操逆転世界で目覚めたけど、俺がTSした元男だって周囲の女子たちにバレてるんだが? 作:メソポ・たみあ
『みんなーッ! 今日は集まってくれてありがとォーッ!』
「「「セーックスッ!!!」」」
『今日は俺たち【セックス・パラベラムズ】の主催する対バン、『変態以外お断り!』の日だーッ! 全力で腰ふってけーッ!』
「「「セーックスッ!!!」」」
『それでは聞いてくださいッ! 〝私自身がセックスになることだ〟ッ!!!』
……フロアの中は、一組のバンドが今まさに曲を演奏し始めるタイミングだった。
大勢の観客がぎゅうぎゅうになってステージ近くに押し寄せ、頭を振ったり腰を振ったりしてワーキャーと盛り上がっている。
ちなみに、観客は見る限り全員女性。
……凄い〝熱〟だ。
とてもじゃないが、あの陽キャの塊のような場所へは入っていけそうにない。
なんか人が多すぎて空気も薄そうだし。
「お~、今日も盛り上がってるな~。セーックス!」
俺と一緒にフロアの中へと入った郁美は、セックスを連呼する観客たちのノリに対してキャピキャピと楽しそうに便乗する。
……俺の方はと言うと、あのテンションに付いていけそうにないが。
「……郁美、あなたここにはよく来るの?」
「まあ、たま~に」
「バンドとか音楽が好きなんだね。なんだ、立派な趣味があるじゃん」
「いや、趣味ってワケじゃないかな」
郁美はステージ上で演奏するバンドを遠い目で眺めながら、
「正直、ライブやバンド自体にはあまり興味ない。今日出演してるバンドも知らないし。ギターは少しかじったことがあるけど、すぐにやめちゃった」
「え、それじゃあなんで――」
「ここは、アタシの秘密のスポットなの」
そう言って彼女は、フロア全体を眺めるように視線を動かす。
「ここに来るとさ、非日常を味わえるんだ。面倒なこととか難しいこととか、全部忘れられるの。だから気持ちを切り替えたい時なんかに、時々ここの空気を吸いに来る――そんな感じ」
「郁美……」
「実はさ、このライブハウスに誰かを連れてくるのって初めてなんだ」
「――え?」
「誰か一緒にここへ来るのは、晶が初めてだよ」
郁美は俺の目を見つめて言う。
彼女の碧い瞳は、薄暗いフロアの中でもハッキリとわかるほど綺麗だった。
「どう? ロマンチックでしょ? アタシの彼女になる気になった?」
「……それとこれとは話が別」
……ちょっとズルい。
いつも口を開けば下ネタを喋るくせに、突然こうやって思わせぶりなことしてくるんだから。
まあ……少しグッと来たのは認めるけどさ。
――この後、俺たちはフロアの後ろの方でライブを眺め、出演するバンドたちの演奏に耳を傾けていった。
……出演するバンドがどれもこれも超ロックで、歌詞が過激で卑猥だったことには目を瞑ろう。
そうして何組目かの出演が終わった頃、
「ん……ちょっとトイレ行ってくる」
俺はふと尿意を催し、郁美の傍を離れてフロアを出る。
さっきの店長さんの所まで戻ってトイレの場所を聞き、手早く個室に入って用を済ませる。
「ふぅ……なんか知らない世界を見た気分だなぁ」
俺は洗面台で手を洗いながら、眼前の鏡で自分の顔を見る。
……ライブハウスで聞く演奏って、こんなに大音量なんだな……。
慣れてないからなのか鼓膜が痛い気がする。それに照明がずっとチカチカしてたから、目が疲れた。
それにしても、お嬢様育ちの郁美がこういう場所に来るっていうのは、改めて考えてみても意外――
なんてことを思ってると、
「あ~、今日もいいライブだったなぁ!」
俺のいる女子トイレに、なにやら三人組の女性が入ってくる。
それはついさっき出演を終えたバンドの三人組で、全員髪の色が赤だったり青だったり、服装が敢えてボロボロのダメージデザインが施された物を着ていたりと、かなり荒々しい出で立ち。
なんだか店長さん以上に柄の悪い感じだ。
ロックバンドらしいといえば、ロックバンドらしい格好なのかもしれないが……。
そんな三人組の内、ボーカルを務めていた女性が俺の存在に気付く。
「――あれ? キミ、さっきフロアの後ろでライブ見てた子じゃん」
「あ……ど、どうも……?」
「キミもウチらのファンなの? 女子高生にまで追っかけられちゃうとか、やっぱウチらって罪なバンドだな~」
……おん?
なにか勘違いされてらっしゃる?
確かに俺と郁美はアンタらのライブも見てはいたけども、別にアンタらが目当てだったワケではないんだが?
なんなら、俺アンタらのことついさっき知ったレベルなんだけど?
ちょっと自意識過剰も甚だしいな。
「……っていうかさ、もしかしてキミ、ウチらのこと
「はい?」
「ごまかさなくっていーよ。ウチに食べられたいってバンギャは、たくさんいるからね」
ボーカルの女性はそう言って舌なめずりすると、俺へと近付いてくる。
「キミ、よく見るとケッコー可愛いじゃん。どれどれ……」
俺の顔を見て、品定めするかのようにボーカルの女性はニヤニヤ笑うと――俺の着ているブラウスに手をかけ、おもむろにボタンを外し始めた。
「――ふぇ!? あのっ、ちょっと!?」
「ダイジョーブダイジョーブ、ちゃんと気持ちよくしてあげるから」
慣れた手つきで、彼女は次々とボタンを外していく。
当然俺は止めようとするが、バンドマンだからなのか力は向こうの方が強く、俺の腕力では止められそうにない。
「ちょっ、ホントに人を呼びますよ!?」
「暴れるなって。おい、お前らも見てないで脱がすの手伝ってよ」
ボーカルの女性に言われ、「仕方ないなぁ」と俺の服を脱がす行為に加わってくるバンドメンバーの二人。
俺は壁際に追い込まれ、一切身動きが取れなくなる。
「ごめんね~。コイツ自分のファンを食べるのが趣味の変態でさ」
「しかも処女を奪うのが大好きな処女食いなの。キミ、どう見ても処女でしょ? ここで卒業してっちゃおうよ」
メンバー二人も乗り気な様子。
――ネットの深淵で語られる伝説として、聞いたことがある。
有名なライブハウスには〝童貞食いのお姉さん〟がいて、頼めば童貞を卒業させてもらえると。
だが俺がその伝説を聞いたのは、この世界に転生する前の話。
貞操が逆転し、さらに男女比がイカれてしまったせいで同性愛が一般的となったこの世界では、どうやらそれが〝童貞食いのお姉さん〟ではなく〝処女食いのお姉さん〟になるらしい。
まさか、よりにもよって俺がその〝処女食いのお姉さん〟に目を付けられ、あまつさえレイプされそうになるなんて――
やべーぞ、レイプだ!
なんて突っ込んでいる心理的余裕はもはや一ミリもない。
「はっ、放してッ!」
恐怖で全身が震えながらも、俺は必至に抵抗する。
だが両腕がバンドメンバーの二人に抑えられ、ボーカルの女性によってあっという間にブラウスのボタンが全て外される。
女体化した俺の肌と、ブラウスの中に身に着けていたブラが露わになる。
そして遂には、ボーカルの女性の手がパンツの中へと滑り込んできた。
「さーて、こっちはどんな具合かな~」
もうダメだ――。
そう思って、俺は両目をギュッと瞑る。
しかし――その時だった。
「……ねぇ」
ボーカルの女性の背後から、誰かが声をかける。
「あん?」
「
俺をレイプしようとしていたバンドメンバーたちが振り向くと――そこには、郁美の姿があった。
「――! 郁美……!」
「その汚らしい手をさっさと晶から離しなよ。でないと……アタシなにするかわからないけど」
――いつもの郁美と、明らかに声色が違う。
表情には小悪魔っぽい笑みは一切なく、目つきは据わり、もの凄く怒っているであろうことが一目で読み取れる。
いや、怒っているどころか――全身から放たれる
しかしボーカルの女性は変わらずヘラヘラとした様子で俺から手を離し、
「お、キミもこの子と一緒にライブを見てた
軽い足取り郁美へと近付いていく。
そして警戒するでもなく、郁美の肩に手を置いた。
「キミも交ぜてあげるよ。優しくしてあげるから――」
――郁美の行動は、ボーカルの女性が言葉を言い終えるよりもずっと速かった。
郁美はボーカルの女性の手を掴むと、彼女の足を払って体勢を崩し――あまりにも見事な背負い投げを披露。
そのままトイレの床に、ボーカルの女性を背中から叩き付けた。
「――ふぎゃッ!?」
「晶を怖がらせたのはこの手? ねぇ、この手?」
続けてボーカルの女性に対してガッチリと関節を決め、一切の身動きを封じる。
見ているだけでも肘がギリギリと軋んでいるのがわかり、今にも絶対に曲がらない方向にへし折られてしまいそうだ。
なにより――郁美の顔が怖い。もうとてつもなく怖い。
普段ニコニコしている人ほどなんとやら、とは言うが、それでもここまで人ってのはおっかなくなるのかと思わせられるほど、マジで怖い。
今の郁美の表情を見たら、たとえ人殺しでも裸足で逃げ出すと思う。
それくらい怖い。
そんな郁美の姿に、俺の腕を抑えていたバンドメンバーの二人はドン引き。
なんなら俺もドン引き。
「いだだだだだだッ!? 痛いッ! 痛いっしゅッ! すいましぇん! ホントごめんなさい許してぇあだだだだだッ!?」
「今回の件、店長に報告して出禁にしてもらうから。二度とこの
冷たい声でそう言うと、郁美はボーカルの女性の腕を解放。
見た目の割に荒事には慣れていなかったのか、ボーカルの女性を始めバンドメンバーたちは一目散にこの場から逃げ出していった。
そしてトイレの中には、俺と郁美だけが残される。
郁美は俺の傍に歩み寄ってくると、両手で優しく頬を触ってくれる。
「大丈夫? 怖かったね」
「へ、平気……。怖かったのは、まあ、そうだけど……」
……正直、我ながら情けない。
いくら転生して女性になったとはいえ、俺って一応は男なのにさ。
女性三人にいいように手籠めにされて、反撃の一つもできなかった。
郁美が来てくれるのがあと少し遅かったら、どうなっていたことか……。
「……ありがとう、郁美。助けてくれて」
「――はぁ。やっぱりさ、晶は隙が多すぎるんだよ」
「え?」
「でも今回のでよくわかった。モタモタしてたら、本当に晶が誰かに盗られちゃうって」
郁美は俺の頬から両手を離すと、今度は片手で俺の顎をクイッと持ち上げる。
郁美の碧い瞳と目が合う。
だが――その瞳を見た瞬間、俺は気付いた。気付いてしまった。
郁美の目が、あの
「晶はアタシのモノだよ。絶対、誰にも渡さない」
「あの……郁美さん……!?」
「他の誰かに奪われるくらいなら――先に奪っちゃうから」
そう言うや否や――郁美は、俺と〝唇〟を重ねた。
「むぅ……!?」
彼女の柔らかくて温かな感触が、唇越しに伝わってくる。
それは明確に、俺の初めての〝キス〟が奪われた瞬間だった。
だが、すぐに郁美は俺から唇を離す。
「晶、
「ふぇ……?」
「早く」
俺はもはや、目の前の捕食者に抗う術を持ち得なかった。
震える唇が自然と開き、口内に収まっていた舌が少しずつ外へと露出。
すると迷いも躊躇もなく、郁美は俺の舌に自らの舌を重ねてきた。
蠢く生き物のような生暖かい感触が、舌から伝わってくる。
さらに郁美は再び唇を重ねてさらに奥深くへと舌を突っ込み、味わい尽くすかの如く俺の口内を蹂躙してくる。
その蹂躙は俺の思考を奪い去る程度には甘美で、以後しばらくの間意識がすっ飛んだ。
どうにか覚えているのは無事に家まで帰れたことと、郁美がこの深いキスだけで