ダンス・イン・ザ・ヘル(忍殺イグゾーション夢小説)   作:おじロリすこ太郎

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ダンス・イン・ザ・ヘル #1

「アイエーーー!!!ニンジャ!?ニンジャナンデ!??」

 

「オタスケーーー!!!!」

 

煌びやかな宴の場が突如血とNRS(ニンジャリアリティショック)発症者の失禁で汚される。オイラン共の悲鳴と断末魔で満ちた地獄めいたアトモスフィアの中でイグゾーションはふとした違和感を覚えていた。

 

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イグゾーションが立っている場、ここは本来サイバー遊郭であった。ザイバツの金が何者かに横流しされているのではないかという情報が入ったのが先日のこと。事態を重く見たロード・オブ・ザイバツはグランドマスターであるイグゾーション直々に調査を命じたのだ。

イグゾーションは調査を続けるうちに遊郭で金のやり取りが行われている事に気づき宴会の場に駆けつけたのだが、そこで見た光景はイグゾーションの機嫌を損ねるのに値するものだった。悪趣味なピンク色のネオンの中に散らばるコーベイン、中央にはでっぷりと肥えた豚のような男が陣取り、周りには奴隷オイラン共が群がっていた。

 

「...ドーモ、金ノ亡者=サン。グランドマスター:イグゾーションデス。そしてサヨナラ」

 

「アイエーー!??ニンジャ!??ニンジャナンデ!??」

 

次々に人間爆弾となりバクハツシサンしていく奴隷オイラン共、そしてNRS発症者となり股から尿を漏らしつつただ震えるばかりの豚。

 

ザイバツの金がこのような下品な事に使われている事への怒り、そしてグランドマスターである自分がこのような下賤な人間の尻拭いをする羽目になった事への失望、この二つが合わさり普段温厚なイグゾーションの機嫌は過去最悪と化していた。

 

豚をケジメさせた後ふとイグゾーションは違和感に気づく。奴隷オイラン共の死体の数が足らないのだ。

 

苛立っていたイグゾーションは部屋の中にいた人間全てを破壊したつもりでいた。しかし一人足りない。神経質な性格を持つイグゾーションは部屋に中にいた人数と殺した人数を全て覚えていた。

 

「逃げた...か?」

 

いやそんなことは考えられないとイグゾーションは即座に考える。グランドマスターであるイグゾーションの殺気は人間であれば即座にNRSを発症し発狂に至る、とても耐えられないものだった。あの場から逃げ出すことはとても考えられない。ニンジャでもない限り。

「まさか...あの場にニンジャが...?」

 

しかし何故。ニンジャソウルを持つものはニンゲンの上位存在である。社会の最底辺の存在である奴隷オイランをする必要など全くない。ニンジャはニンジャであるだけで崇光な存在なのだ。

「これは話を聞く必要があるな...」

イグゾーションは今や静まり返った宴の場を抜けて逃亡者を探す事にした。

 

マオは震えていた。マオはニンジャソウルを持つモノであった。彼女の能力はゲン・ジツ改竄。触れたモノを眠らせ偽物の記憶を植え付ける事ができる能力だった。

ニンジャである彼女が下層部の場末の遊郭で奴隷オイランとして働いていた理由はただ一つ、金がないからであった。幼き頃から天涯孤独であった彼女が唯一持っていたのは生まれつきの輝くような美貌であり、キョートの最下層で生き抜くにはそれは武器であった。

彼女がニンジャソウルを発現したのは14歳の頃。スラムで男に襲われた際に力の限り抵抗していると突如男が昏睡したように眠り始めたのだ。

 

彼女はその後自らのニンジャソウルに対する研究を重ね、自らの能力は触れた物を眠らせその隙に偽物の記憶を植え付ける能力だと知った。この能力は一見万能であるが欠点として対象に深く密着する必要があった。よって普段使いできるような代物では全く無く、逆に客に深く密着する必要性がある遊郭においてはとても便利なモノであった。彼女は奴隷オイランといった立場でありながら遊郭で働いて2年、その純潔を散らす事もなく客に偽物の夢を見せながら慎ましく平和に生きていたのであった。

 

そしてその日常は突如崩される。マオが普段通り働いていると突然入り込んできた長身の男、次々に発狂し爆発四散していく同僚達。マオはNRSを発症することはなかったがその異常性は十分に理解する事ができた。

(このままでは殺される)

初めて見る同類、その恐ろしさに震えながらも部屋を脱出しどこか安全な場所はないかと走っていた。

 

「ドーモ、イグゾーションです。貴方の名前は?」

「...!ドーモ、イグゾーション=サン。私はマオです。よ、よろしくお願いします」

 

突如目の前に現れた先程の男、マオはその出現を回避することはできなかった。アタリマエである。マオはゲン・ジツ改竄能力こそ持っていたが体力に関してはただの16歳のコムスメであった。魂に刻まれたニンジャソウルがアイサツをイグゾーションへ行う。外見では冷静を保っている様に見せかけていたが脳内ではソウマ・ライトが見えていた。

 

「怖がらなくていい、ただ少し君について知りたいだけなんだ。一緒に来てくれないかな?」

「はひ...?」

 

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煌びやかなネオンの中を音を立てずに滑らかに走る漆黒の高級車。イグゾーションとの二人きり。哀れな少女は獲物に囚われた子うさぎの如くぶるぶると震えていた。生まれて初めての車もキョートの上層部の光景も全く目に入らずただ下を向き時間が過ぎ去るのを待つ。

 

イグゾーションは安心させるようにマオに微笑んだ。

 

「先程は怖がらせてしまって申し訳なかったね。私も仕事でああするしか方法はなかったのだ。」

 

嘘である。しかしイグゾーションの目的はとにかくこの謎の娘-マオ-を懐柔し能力とその目的を知ることであった。

 

マオはガクガクと首を振り頷いた。しかし全くその言葉を信じる事はできなかった。当然である。数時間前この男によって突如同僚と客が吹き飛ばされたのだ。そしてあの能力、一歩間違えれば自らも吹き飛ぶ。ここはイグゾーションの機嫌を取ることを最優先で動く必要があった。

 

静まり返る車内。漆黒の高級車は滑らかな動きでキョートの一等地にある煌びやかなビルに入っていった。キョートスゴク=タカイホテル。キョートの中でも最高級として誉高い格式のあるホテルである。

 

イグゾーションは慣れた動きでカウンターからキーを受け取りマオをエスコートする。エレベーターで上がった先は最上階のスイートルーム。最下層部出身のマオには全てが未知のモノであった。もちろんマオにそんな事を楽しむ余裕はなかったが。

 

「大丈夫だ、君に危害を加えるつもりはない。」

 

イグゾーションはベットに腰掛け、マオにも座る様に促す。マオは震えながらイグゾーションの横に腰掛ける。最高級のコットンで作られたフトンはまるで雲の様に心地よく肌に張り付く。その感触もマオにとっては地獄へ招く手のように思えた。

 

イグゾーションの手がマオに伸びる。奴隷オイランとして働いているならよくある光景である。奴隷オイランは客と寝、一晩の夢を見させる。

 

ただしマオは別であった。マオは処女であった。奴隷オイランの身でありながら能力のおかげで一度も客と寝る事なく生きていたのだ。ここでの最善手としては能力を発動させずイグゾーションと寝る事であろう。なにせ相手は人間を即席爆弾に変えることのできる化け物である。下手に刺激しない方が良い。とにかく生き延びる事、それが今マオにできる事であった。しかし本能が、14歳の頃に男に襲われた時のトラウマが能力を強制発動させた。

 

イグゾーションはマオを抱くつもりなど毛頭なかった。ただマオの中のエネルギーを増幅させ自身の能力や目的について告白させようと思ったのだ。イグゾーションはマオに手を伸ばし普段通りエネルギーを注入する。対象を破壊しないよう計算され尽くした精密な動作。しかしふとある違和感に気づく。フクスケがウェディングドレスを着ている。

 

「ゲン・ジツ使いか!?」

 

フクスケをスリケンで切り裂き生えていない筈の百合の花を折り現実世界に戻る。イグゾーションはベッドに横たわっており部屋には既にマオの姿はなかった。

 

「なるほど、これは厄介な能力だな...」

 

イグゾーションは服を整えると姿を消したマオの後を追う。

 

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哀れな乙女はパニックに陥っていた。殺されてしまう!殺されてしまう!あの化け物の様な男相手に能力を発動させてしまったのだ。もしバレたらあのプライドの高い男は烈火の如く怒りマオをネギトロの様にして殺すだろう。あの男の残忍さは深く理解していた。

 

奴隷オイランの裸めいた姿のままスゴク=タカイホテルの中を駆ける。しかしその逃走はすぐに阻まれる事になった。でっぷりと油じみた男がマオの前に立ちはだかる。

 

「あれぇ?奴隷オイラン?どちたの〜?お話きこっか?」

 

奴隷オイランがその過酷な仕事に耐えられず逃げ出すことはよくある事である。そして逃げ出した奴隷オイランに人権はない。奴隷オイランが逃亡した先は常に徹底された尊厳の破壊と蹂躙であった。

 

そしてマオは奴隷オイランの身で半狂乱になりながらホテル内を駆けていた。逃亡奴隷オイランそのものである。でっぷりとした男はマオの腕を乱暴に掴むと部屋に引き摺り込む。マオをベッドに押し倒すとそのよく肥えた舌でマオの口内を蹂躙する。息が出来ない。苦しい。声のない悲鳴が口から漏れる。マオの瞳から涙が溢れ出る。

 

マオは能力を発動させようともがいた。しかし能力が発動することはなかった。マオは気づく、能力に1日1回までといった制限があった事を。今まで1日に一回以上能力を発動させる事がなかったため忘れていたのだ。仕方がないことであった。

マオは力の限り限り抵抗する。しかし16歳の少女に体の3倍以上もあろうかという男を跳ね除けるのはどだい無理な話であった。男の手がまろい少し控えめなマオの胸に伸びる。乱暴に奴隷オイランの服を破こうとする。ムネン!マオの純潔はここで散らされてしまうのか...!?

その時...

 

「うちのマオが迷惑をかけた様で申し訳ない。帰ろうか、マオ」

 

男が悲鳴をあげる。突如部屋に現れたイグゾーションは外見こそ冷静を保っていたが殺気が滲み出ていた。NRSによって発狂する男。イグゾーションはその長身を屈ませ奥ゆかしくマオの手を差し伸べる。

 

その手は優しさに満ちており、マオは彼女の中のニンジャソウルからその仕草に彼が本気でマオの身を案じている事に気づく。マオは震える手でその手をとった。少なくとも彼が暴漢から己を助けてくれたのは事実であり、これを無碍にするのはシツレイにあたる。マオとイグゾーションは発狂してうわ言を繰り返す男を背に部屋に戻った。

 

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部屋に戻るとイグゾーションは申し訳なさそうな顔でマオの破られた服と涎と涙まみれの顔を見た。

 

「着替えなら用意してあるからそれを着れば良い。フロも用意してある。きっとそのままだと辛いだろう。先に入ると良い」

 

断る必要などなかった。マオはフロに入る。最高級のホテルだけあってフロも豪華なものであった。広々としたロテン・ブロに鳴り響くシシオドシの音。ワビサビである。体を充分に清めたマオが見たのはイグゾーションが用意したであろう寝巻き着だった。性的な飾りなど全くないただ人に安眠をもたらす為だけに作られた寝巻き着。オートクチュールで作られたであろうそれはマオに安心を齎した。

 

風呂から出るとイグゾーションが頼んだであろうディナーが並んでいた。色とりどりの最高級オーガニックスシとニホンシュ。まだ16歳であるマオの為にウメ=ジュースが横に添えられていた。

 

「すまないね、突然眠ってしまって。もしかしたら疲れていたのかもしれないな。」

 

イグゾーションが突然口を開く。マオは安堵した。ジツが上手く効いていたのだ。きっとイグゾーションは自分が寝てる間マオが出ていっただけと思っているに違いない。こちらこそ勝手な勘違いで部屋を出て行ってしまい申し訳ないと謝罪するとイグゾーションは少し微笑んだ。

 

イグゾーションは姿勢を改める。鈍く光る白金色の瞳が真っ直ぐマオを見据える。

 

「マオ、本題なのだけれど...」

 

部屋が静まり返る。イグゾーションが続ける。

 

「君に一目惚れしたんだ。ぜひ私の恋人となってほしい」

 

大嘘である。マオのその艶やかなシルクの様な黒髪や輝く丸い大きな目、まろい桃色の頬にぽってりとした赤い唇は確かに男として魅力的なモノであったが、そもそもイグゾーションにとって恋人の様な行動を制限をされるものは自身の嗜好として正反対のモノであった。

 

イグゾーションがここまで言い切ったのはただ一つ、マオの能力に膨大な利用価値があった事に過ぎない。彼女の能力、対象を眠らせた上で記憶を改竄させるといったものはハニートラップを行うにあたってこの上なく強いものであった。しかも油断していたとはいえイグゾーションを一時的に昏睡させることの出来る力強い能力である。上手く使えば情報など抜き放題であろう。

 

イグゾーションの優秀な脳は瞬時に計算し、彼女の能力を利用するには恋人として接した上で洗脳するのが一番だという結論に至った。ヒトは情ですぐ流される。良くも悪くも。

 

マオは...。マオに選択肢は何もなかった。既に失態を犯しその上で頼まれているのだ。断れるはずもない。この化け物の様な男を前にできる事はただ一つ、相手の機嫌を損ねない様に振る舞うだけであった。

三つ指を重ね深くオジギ。遊郭にて散々叩き込まれた礼儀作法である。

「...ハイ、喜んで」

 

こうしてこの日、マオは下層の奴隷オイランからグランドマスターの恋人となったのであった。

 

 

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