ヒトモノガタリ   作:白骨

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虚無(仮免合格後の路上実技がしんどい)


たたかうヴァンプ

 

-01

 

 

その時私は彼女に何を見たのか。

 

 

『初めまして、星見家の最高傑作の雅ちゃんだったっけ?』

 

『おい、儂はまだ了承はしとらんぞ』

 

 

子供の頃、母上から組手や様々な武具の修行を多々行っている最中に父上がこの場を作り、忍野家と呼ばれる怪異を解決する事が生業だと噂される一家と顔を合わせる事になった。

 

 

 

 

『固いこと言うんじゃないよ、忍。』

 

『そもそもなぜ儂がこんな面倒な事をしなければならぬのだ、このガキと御ままごとでもしろと?』

 

 

 

鼻で彼を笑いながら、此方を見つめる彼女は私から言えば、誰が見たとしても2度見するであろう美しい容貌をしている現実味がない人物であった。

 

 

まるで御伽噺から出て来た絶世の美女だ。

 

 

 

『メメ殿、貴方の連れ人に馬鹿にされるほど家の娘は弱くないぞ』

 

 

『いやぁ、すまないねぇ……僕もこんなじゃじゃ馬とは思っていなかったもんで』

 

 

 

私は先程訓練していた為、片手に木刀を握っていた。

 

 

彼女が私をどう思っているのか、その時の私は知りたかった。

 

 

何故その目に私は映っていないのか、理解したかった。

 

 

 

『ならば手合わせしてくれ、忍殿とやら』

 

 

木刀を持ち上げ剣先を彼女に突き付け、宣戦布告を叩き付ける。

 

母上は私の肩を掴み、彼ら二人に頭を下げていたが父上は面白そうなのかくつくつと笑っていた。

 

 

『……おいメメ、このガキは儂に喧嘩を売ってきてるのか?』

 

 

『ん?……あぁ別に構わないよ雅ちゃん』

 

 

『おいコラ勝手に了承するでない、ちゃらんぽらん』

 

 

彼等が口喧嘩を始めたが、彼、忍野メメと呼ばれる男がとある一言で忍と呼ばれる人物の興味を惹く事になる。

 

 

『君が興味を持てるぐらいの力は持っている筈だよ。彼女、星見雅という女の子は』

 

 

 

その瞬間、彼女の視線の感覚が変わった。

 

子供から獲物へと、突き放すような気配から今にも呑み込むような圧へと。

 

 

 

『ほぉ……いいだろう、狐のガキ。相手をしてやる』

 

 

 

『宜しく頼む、忍野忍殿』

 

 

『ふん、挨拶など要らぬ。さっさと始めるぞ』

 

 

 

そう言いながら彼女は脱力し、手刀を構えた。それが私を侮っているとその頃の私はそう思った。

 

 

『あの、彼女は武器を使わないのですか?』

 

『まぁ、見てればわかると思うよ』

 

『メメ殿、流石に我が娘を舐め過ぎでは?』

 

 

 

 

私は両手で木刀を握り、構える。

 

彼女の動きを見逃さないよう集中する。

 

 

『……ほぉ』

 

 

『参る、忍殿』

 

 

『早う来い、狐の』

 

 

 

 

 

 

 

地面を蹴り、即座に彼女の首元へと木刀を振り下ろす。

 

その速度は母上達が見逃す程の速さ。その時はそう自負する。

 

 

彼女はなんて事のないように頭を後ろに下げ鼻先に掠らせる程度で下ろしきった木刀を握りしめそのまま床へと身体を叩き付けられた。

 

 

 

『……ぐっ…』

 

 

即座に私はまだ彼女に握られている木刀を離し、両手を地面へと着け身体を捻り蹴り技を彼女の鳩尾へと放つが、当たる直前に足首に手刀を打たれ弾かれる。

 

 

『ふむ、判断は早いの、まずまずじゃ』

 

 

弾かれた衝撃で地面に2回身体を打ち付けた後、一回転させ体制を整える。

 

彼女は依然緩い足取りで、此方を品定めするかのように見つめていた。

 

 

私から奪った木刀をまるでヌンチャクの様に身体の周りに回転させ、人差し指の上に木刀をピンと立たせ、その人差し指が木刀を弾く。

 

 

そのまま地面に落ちそうになる木刀の剣先が、瞬時にこちらを向いて突き飛んでいた。

 

地面に落ちる寸前の木刀を彼女が蹴り飛ばし真っ直ぐ私の胴体へ攻撃したのだ。

 

 

肩に凄まじい衝撃が走りそのまま後ろへ倒れる。

 

 

『じゃが武器を持たずに動く訓練は差程しとらんの、だからこの攻撃に気付かん』

 

 

痛みに耐えつつも立ち上がり彼女の方へ顔を向けたが既に居らず、いつの間にか背後で頭を搔いていた。

 

 

『即座に判断し、柔軟に行動をする。その想像はまだ人間の範疇に収まっておるの』

 

 

『まだだっ……!』

 

 

私は肩にぶつけられた木刀を手に取り、星見家に伝わる剣技、「風花」と呼ばれる5段の斬撃を放った。

 

 

 

 

『じゃがその成長速度は、目を見張るものがある』

 

 

 

斬撃を呆気なく軽い手刀で相殺される。

 

なんだ、何だこの出鱈目は。

 

 

私の攻撃が、ままごとのように、防がれ、反撃され、身体に激痛が走る。

 

 

こんな事今まで体験した事が無かった。

 

 

 

『儂に見せてみよ、お前様の輝きを』

 

 

 

 

その時の私は初めて、心の底からの感情が表へと出た気がした。

 

 

 

 

『ははっ!』

 

 

私は笑った、剣を握りながら昂る高揚感を抑えきれず顔に出た。

 

コレが、興奮と言うモノかっ!

 

 

それを見た忍は少し吹き出した後、笑いだした。それに倣って私も一緒に笑う。

 

 

 

 

『『あはははははっっっ!!!』』

 

 

 

 

強く、強く握り締めた木刀と一緒に彼女の元へ、地面を強く蹴り飛ばす。

 

 

 

 

 

戦いの楽しさを私、星見雅は心から知ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

04

 

 

 

 

「アンビーっ!そろそろこの数はやべぇぜッ!?」

 

 

「くっ……」

 

 

 

邪兎屋の社員である2人、自我を持った人形の機械で、人間の魂に該当するAI「論理コア」を搭載し、知能試験「禁断の果実テスト」を突破すると"個"を持った存在として認められている「知能構造体」。それがビリー・キッドと呼ばれる人物のおおまかな詳細だ。

 

もう1人は映画、ハンバーガー好きの戦闘力つよつよ軍人女の子ことアンビー。

 

 

ん?1人の紹介が雑だって?それは許してくれたまえ。

 

 

彼等が邪兎屋に入った理由も伝えたいところではあるが、また後日説明貰いたい。

 

 

 

今の現状は赤牙組から金庫を盗むと言う依頼だったのだが色々と騒動に巻き込まれ、ホロウへと飲み込まれてしまった。

 

金庫は発見したのだが、赤牙組の『シルバーヘッド』・ミゲルと呼ばれる組長とその仲間が追っ掛けられた挙句ビルから逃げようとした。

 

治安局の戦闘ヘリによって窓が吹っ飛びホロウへと2人が呑み込まれて今に至る。

 

 

 

 

先程ホロウ内へ落ちてしまった金庫を見つけはしたのだが組長のミゲルが上級エーテリアス化し、逆に反撃されてしまったので今はホロウから脱出する為に撤退中の2人。

 

 

 

アンビーの首元にエーテリアスの剣に変蝕した右腕の刃が届こうとした時。

 

 

 

 

 

 

「お前さんよ、頭を垂れよ」

 

 

 

 

 

 

その威圧の籠った声を聞いたアンビーは即座に頭を下げる、髪の毛の一、二本がはらりと切れたが、首を斬られるよりかはマシだ。

 

 

 

 

後ろから刀と鞘が擦れる音が聞こえる。

 

 

その摩擦音が納まった瞬間、エーテリアス達は細切れへと変貌し、地面にバラバラへと落下し消滅した。

 

 

アンビーとビリーが後ろを振り向くと、オレンジのスカーフをしたボンプが手を振りながら話し掛けてきた。

 

 

『やぁ、2人とも無事かい?』

 

 

「スカーフの喋るボンプ……」

 

 

「おぉっ!もしかして『パエトーン』!」

 

 

 

そのボンプを見て2人は表情が明るくなる、その隣に居る金髪の幼女はその二人を見て鼻で笑った。

 

 

 

 

「ふん、こんなえーてりあす共に撤退とは情けないの機械体に映画好きよ」

 

 

先程パエトーンと呼ばれる伝説のプロキシの隣には黄色のヘルメットとゴーグルをした幼女が刀を携えて立っていた。

 

 

「……貴方、忍?」

 

「あっれぇー!?忍って戦えたのかよっ!?」

 

 

2人は驚愕、それも当然の事であり彼女は基本店番をしている女の子の認識が強い。

 

そんな彼女がホロウ内でエーテリアスをものともせず倒せる事は驚きに値するだろう。

 

 

「お前様よ、この2人を出口まで案内しておいてくれるかの」

 

 

忍の視線は追加のエーテリアスに向けられており、忍の音も無く抜き放たれた刀の刃はホロウ内の太陽光を反射し、ぎらりと光る。

 

 

 

「……私達も援護を」

 

 

「そうだぜ!流石に1人でこの大群は────」

 

 

『大丈夫だよ2人共、行こう』

 

 

 

片手で握っている刀を回転させてエーテリアスの攻撃を軽々と防ぐ後姿を確認し、『パエトーン』のアキラは2人を連れて出口へと誘導する。

 

 

 

「……さて、行ったかの」

 

 

 

 

 

敵三体からの攻撃を紙一重で避ける。

 

首元、胴体、足と彼女を狙った攻撃はするりと裁縫針の穴に糸を通すかのようにすり抜けていく。

 

 

 

「……ふむ、こんなんじゃったかな」

 

 

忍の刀が鞘に納まる。

 

だが右手は刀の柄を握ったまま。

 

左手は鞘引きが出来るようにと鞘を掴んでいる。

 

足を肩幅に開いて前傾姿勢を取っていた。

 

刀を鞘に納めると右膝を曲げる。不安定になった身体が、重心の位置によって前方へと急速に倒れ出し地面を蹴り飛ばし、エーテリアスへと接近する。

 

 

「『風花』、じゃったかな?」

 

 

 

高速の居合が放たれ、5連の斬撃の衝撃波がエーテリアスを切り刻んだ。

 

 

 

 

「雅のガキの技を使うとは儂も衰えたのぉ、力任せの技では今の儂じゃと腕が千切られるから致し方無しではあるが……」

 

 

 

周囲を見渡し残敵がいない事を確認し、納刀し終えた後、今握りしめている刀の鞘を見つめながらため息を零す。

 

 

 

「あの頃から衰えたもんじゃな」

 

 

 

 

昔を思い出しながら、忍は今の帰る居場所へと歩んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

05

 

 

 

2人は先程パエトーンが操作していたボンプを持ちホロウから抜け出し、ニコと合流して新エリー都ヤヌス区の六分街に店舗を構える個人経営のレンタルビデオ屋、Random_Playへと到着した。

 

 

 

「パエトーン、話を聞かせてもらっても良いかしら?」

 

 

腕を組んでアキラを見つめるニコはその発言を切り口に聞きたい事を聞こうとしていた。

 

内容を察したアキラは真剣な表情で見つめ合う。

 

 

 

「あぁ…忍の事かい?」

 

 

「えぇ、彼女の事について」

 

 

ただの店番にあんな芸当は出来ない。そう言ったアンビーとビリーの証言にニコは考えた。

 

ホロウレイダーとしてこの2人は熟練度はかなり高い。ここまで言うのであれば忍は何故今まで噂をされなかったのか?という疑問。

 

そして彼女の関係はあなた達とどう関わっているのか。

 

 

 

 

「その情報漏洩の問題については僕とリンでどうにか抑えていた。噂話や目撃証言を少しの嘘と真実を交えることでね」

 

 

この作業は中々に大変で……と頭を抱えながら苦笑いで答える。それもそうだ、幼女のホロウレイダーなど明らかに異常であり噂も絶えない存在であろう。

 

 

 

 

「そしてもう1つは彼女、忍野忍は僕達を命懸けで助けてくれた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの崩落の過去

 

 

目を閉じるとあの光景がフラッシュバックする。

 

血塗れに染まったのにそれすらも美しさを相乗させる演出家のように見せる彼女の異端さ。

 

そしてその悲惨な場面を。

 

 

 

両手両足がちぎれ、地べたに這い蹲っている彼女をそのままにする訳が無い。

 

 

 

彼女は僕達の命の恩人だから。

 

 

 

『お兄ちゃん…』

 

 

妹が泣きそうな顔で此方を見つめる。

 

 

僕は必ず助けると口にし、僕に出来ることは無いかと彼女に尋ねた。

 

 

 

すると彼女は僕の首元に噛みつき、血を吸った。

 

鋭い痛みに少し唸ったが、徐々に吸う勢いが落ち着いていく。

 

 

腕と足の断面の出血が収まり、徐々に形成を始めてその再生に合わせ身体が縮んでいく。

 

 

 

『わ、ちっちゃくなった!?』

 

『まさか……吸血鬼?』

 

 

少し血を飲ませ過ぎたのか頭が働かないが、彼女が人間では無いものだと感覚で理解出来た。

 

 

元の身体より小さくなったであろう彼女は僕達を見つめ、笑う。

 

 

『お前様よ、体を張って其方を助けたのに儂も助かってしまったな』

 

 

『この恩は忘れん、儂の名前はキスショット……まぁこの名前よりこっちか。忍野忍、忍と呼んでくれ』

 

 

その後も色々あったが、割愛させて貰おう。

 

その話はまた後で話す事になると思うから。

 

 

 

「僕達は血で繋がった家族のようなものさ、だからそれ以上の詮索は少し困るかな」

 

 

 

 

少しだけ威圧したのが分かったのかニコが少し引いた。それを見てアキラはくすりと笑った、目は笑っていなかったが。




暫く投稿キツイかもしれぬ。

コレもだいぶ前に書いたやつだからストックない…
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