作者の都市改善記録   作:FUREA-205-jp

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こんにちは、作者です。
最近は夏を感じさせられる程の暑さになってきましたね。

そろそろエアコンのフィルター交換しないと....嫌だな〜


残り火の少女

私は大きな館の長女として生まれた。

 

家族は私と父、そして数人のお手伝いさんが居た。父は寡黙な人で執務室で夕暮れまで仕事をしていて、私に見せる微笑は作ったものではない暖かい物を感じられた。

 

お手伝いの方々は、いつも掃除や料理を作ってくれた、この頃の私はまだ大人の事情とか社会の闇を知らない純粋な子どもだった、だから大人の人たちは父には内緒でおやつをくれたり、庭の花で栞を作ってくれたのを今も覚えている。

 

 

 

 

私は....幸せだった。

 

 

 

私が15になる頃、父は私に剣の稽古を付けてくれた、父は強く冷徹に私の急所を狙い、時には足払いなどの手を加えながらこの都市で生きていけるように、大切なものを守れるように、私が倒れ、泣いたとしても毅然とした態度で稽古をした、少し苦い思い出だ。

 

 

稽古のときに父が言った言葉、今も忘れない

 

 

『いいかガリーナこの世界で一番気をつけなければいけないのは幻想体やねじれではない、一番の脅威は ”人間” だ。

人は動物より執念深く凶悪だ、だから油断はするな奴らは殺しても殺せない怪物だと思え、大切な者を守りたいのならお前に剣を向ける者を完膚なきままに叩き潰せ、こちらに毒牙をかけようものなら肉片一つ残らぬよう切り刻め。お前の持つその剣は守り、断罪を与えるためのものだ。

お前が諦めずに守り続ける限り、その剣はきっと力を貸してくれる。」

 

だから忘れるな、と。

 

 

 

 

私は父が好きだった、大好きだったんだ

 

 

 

 

 

あいつらが父を殺すまで。

 

 

 

私が18の時だった、あの時私は家におらず私はT社との取引を初めて父に任され、交渉をしていた。

結果は初めてにしては良い成果だった。私は取引した代物をW社の特異点に詰め込み、付添人の従者の女の子と館への帰り道話していたときだった。

 

 

「おい、あれ見たか?」

 

街角で男性二人組の話し声が聞こえてくる。

 

「ああ、あんな大きな火柱見たことねえよ、最近近くに住み着いた強盗集団がやったのか?....」

 

「確かあそこの館、【ベレツハイム】家の館じゃなかったか?」

 

ベレツ...ハイム? その名前は、私の...私の一家の名前だ...まさか、そんな....あり得ない!

 

「あそこ、住んでる人が少なかったからな...標的にされたんだろ...可哀想に」

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ...」

 

 

私は気づけば駆け出していた、私の帰るべき家を目指して通り過ぎた通行人の話が嘘であってほしいという願いを証明するため、隣りにいた従者の子のことを置いてきていることに気付かない程にあの時の私は必死だった。

 

 

だが、現実はそう甘くはなかった

 

私が館のもとに着く頃には館を包み込むように火が轟々と燃え盛っていた。

 

「私の...家が.....」

 

あまりにもつらい現実に体の力が抜けていくが

いや、まだ、人が死んだわけではない!父さんは、従者の人はまだ館の中にいるかも知れない。

 

私は....まだ諦めきれない思考と心に動かされ館の敷地をまたぐ......

 

館の敷地内にはとても綺麗な白いユリの咲く庭があった、夏頃になれば満開の綺麗なユリを咲かせる。父のお気に入りの場所だ。

だが、その時私はユリや館より、”あるもの”に目が離せなくなった。

 

「う...そ.....」

 

 

 

私は見た...見てしまった、満開に咲く白いユリの中央で私の実の父が....大量の血を流して立っているのを

 

「父...さん...父さん!..父さん!!」

 

私は父の傍に駆け寄り父に半ばヒステリック気味に父を呼ぶ....だが、返事は帰ってこなかった。

 

信じたくない、こんな現実、知りたくもない。

 

 

そう思っても思考は冷静なようで私に無慈悲な答えを出す、眼の前に居る父は”死んでいる”と。

 

 

 

「あ...ああ..ア”ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ゙」

 

 

 

私は、父の体に縋り付き、幼子のように泣き続けた

 

 

泣いて、泣いて、泣き続けた

 

 

 

泣き続ける中、私の中に何かが芽生え始めていくのを感じた。

 

 

それは、楽しさや喜びではない、怒りや悲しみのような生易しいものでもない。

憎悪や憎しみの類が、私の心を、体を、憎悪が炎の様に包み込み侵食していく。

 

 

体の内が暖かくて、心地良い、この感覚に何も考えずにすべて忘れて預けてしまいたい。

そんな気持ちが強く芽生えた。

 

 

だけど...今の私にはこんな心地よさはいらない、そんなものより

 

 

 

 

父さんを殺した者を焼き殺す力が欲しい

 

 

 

 

そう願った瞬間、私の体から新緑色の炎が噴き出した。

その火を消そうとして手で火を叩く、だが消えることは無く火は小さくそれでいて鮮やかに存在を証明する。

 

火自体に熱は感じない、この火は...私の憎しみか?

 

 

「ん?なんだ、まだ生き残りがいやがったか」

 

後ろから男の声が聞こえる...そうか、アイツか、アイツがやったんだな

 

「目撃者は全て殺せ、生きては返すな」

 

「分かってるよ...ん?ありゃベレツハイム家の長女様じゃねえか」

 

「ありゃ上物だ、渡すには惜しいな。」

 

「おい...我らとの契約に判するぞ」

 

「大丈夫だ、臓器全部切り取った後に綺麗に縫合した死体を渡せば契約には反しないだろ?それに...相手は良いところのお嬢さんだ、俺等がちょっと腕を捻ればすぐに泣きわめきながら命乞いをするだろ、その時にやれば良いだろ?」

 

アイツ...か...アイツラが殺ったのか...

 

アイツラを殺す前に黒幕の情報を吐かせないと。

 

 

大丈夫だよ父さん、今から私達の家を荒したあの”化け物”を殺してくる、だから、父さんの剣、借りるよ

 

 

私は父の骸が最後まで握りしめていたフランベルジェを取り、奴らの方に向く。

 

 

「嬢ちゃん、悪いことは言わない今すぐ持ってる武器を捨てろ、そうすれば命だけは取らないでやる」

 

さっき聞いたことと話しが矛盾している、だが私にはその話を聞き入れる事はしない

 

アイツラに強く殺意を向けると私を包んだ小さい火は体を覆う鎧のように身を包み、私の背中を後押しするように力を強めていった。

 

 

 

...そこからのことは今でも鮮明に覚えている

私はあの二人組の手足を斬り落としアイツラの黒幕の場所を聞き出した、どうやら盗賊集団と私達一家と関係の悪かった領主がグルのようだった。

 

 

聞き終えた後アイツラは私に向かって助けてくれだの死にたくないだの戯言を言っていたが、そんな吠え声は私には届かない

 

 

『狩る獲物に慈悲はいらない』と父から学んだのだ。

だから父の言いつけ通り、原型を留めないほどに切り刻んだゆっくりと、そして確実に。

 

 

殺した

 

 


 

 

その後私はこれ以上私の家族が傷つかぬよう私に火の粉をかけてくる奴を殺した

すり潰し、切り刻み、腹を裂き、串刺し、焼き殺した。

こんなにやっても私に罪悪感や後悔は無かった、アイツラはただの怪物、人間じゃない。

 

 

 

”怪物なら”殺してもいいでしょ?

 

 

 

私はアイツラを殺し尽くした、私の足元には怪物たちの体が積み重なって、重なっている死体の目は恐怖と憎悪に満たされた目をしていた。

 

疲れたな...早く父さんの所に帰ろう。

 

 

 

誰かに臓器を抜かれる前に父さんを埋めないと。

 

 

 

 

私は家に戻り庭に父さんのことを埋め、満開に咲いていた黒いユリの花を供えた。

 

 

....ユリの色ってこんな色だったっけ?...まあ...いいや

 

 

「行ってくるね、父さん」

 

父の墓に言葉をかける、だがその言葉に当然のごとく返事はない。

太陽の陽が顔を照らす、まるで新たな門出を祝福するかのように黒いユリの咲く庭を去る少女を明るく照らし続けた。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父....さん....」

 

彼女は自身の父を寝言で呼ぶ、彼女の表情は物悲しく、目尻には涙を浮かべていた。

 

〚アスク、彼女、ガリーナの容体は?〛

 

 

「極めて良好と言えます、バイタルは正常、呼吸も安定しています。心配なのは血が少ない点です。」

 

 

私は彼女の涙を指で軽く拭いながら検査結果を聞く

 

〚ありがとう、このまま治療を続けてくれ、私は仕事に戻るから覚醒時は連絡を〛

 

「ええ、仰せのままに」

 

 

 

 

 

 

私は...死んだのか?

 

私は一体白の空間を見渡す、そこは私が居た場所ではない、どこか心地良い感覚にさらされる。

 

死の先は、やはりなにもないのだろうか?

誰にも知られずに消えてしまうのも悪くないかも知れない。

辺りを見渡していると、私はある人を見つけた

 

 

 

「父...さん?」

 

 

 

そこには死んだはずの父が居た、体には怪我もなく、私をただじっと見つめていた。

 

父をみて私は、なぜだか熱いものが込み上げてくるのを感じた、体が、顔が熱くなり、思いが止められなくなった、言いたいことがたくさん、たくさんあった。

 

 

「父さん、父、さん、私、私やったんだよ!父さんの言いつけ道理家族を守るために戦ったんだ!それに、私翼にも就職出来たんだ!だから...だから!!」

 

 

褒めてほしい、頭を撫でて欲しい、私は言いたくて抱きつきたくて、父に近づこうとした.....だが、父は私を静止させるために手のひらを前に突き出す。

 

 

父の表情は落ち着いた表情かつ、どこか暖かい雰囲気がした。私が小さい時と同じ雰囲気の父さんだ

 

あの表情で分かる、まだこっちに来るのは早いと言いたいのだろう。

 

 

突然、後方に引っ張られていく、父の距離がどんどんと遠ざかってゆく

 

 

「待って!父さん!父さん!!」

 

 

段々と視界が暗くなってゆく

 

 

 

そんな中、私や従者に見せたことのない優しい笑みをこちらに向けている.....そんな気がした。

 

 


 

 

 

 

 

目を覚ますと、私は見知らぬ場所に居た。

 

此処はどこなのか知るために体を起こし周囲を見渡そうとする。

 

「”イ”ッ”ッ”!?」

 

体は幻想体との戦闘でのダメージが蓄積されているようで動いた瞬間激痛が体を襲う。

 

体は動かないか...なら

 

聴覚と嗅覚を頼りに周囲を調べる......心電図を計る心電計の音と、強い医療用消毒液の匂いがする。

 

....L社の医療室か?だがあの状態だと医療班は全員死んでいるはず、だとするとここはL社では無い...じゃあ此処は一体?

 

 

「お目覚めですか?」

 

 

左後ろから男の声が私に話しかけてきた。

私は声の主の方に警戒心を抱きながら振り向こうとする。

 

「そのまま安静になさってください、こちらから向かいますので」

 

そう言って男は足音を立ててベットの正面に移動する。

 

 

男の姿は人の部位が感じられないほどの鉄やプラスチックなどの無機物で構成された体をしていた。

 

顔は面長で目のようなモノアイが6つ緑色の光を放ちすらっとした体型で、腕や足は人間にとても近い形状をしていた。

服装は白衣に白シャツ、ズボンは黒色の物を履いていた。

 

「義体?....」

 

「いえ、私は元々人の義体ではなく意思を持った人工知能です。」

 

 

人工知能...都市の条約では確か禁忌にされていたはず...

 

「ご安心を、私は人を救うために作られた者ですので危害は患者には加えませんよ」

 

「そ、そう....ここは...どこ?」

 

「此処は私達offenerのホームです。」

 

「オフェナー....」

 

聞いたことのない言葉...名のはせていないフィクサー事務所の一つだろうか

 

「おっとその前に、自己紹介をしていませんでしたね、私はオフェナー管轄医療機関最重要責任者”アスク”と申します、よろしくお願いします。」

 

「私は、ガリーナ、”ガリーナ・ベレツハイム”よ。」

 

軽く挨拶を交わす、アスクからはこちらへの敵意は感じられない、ひとまずは警戒を解こう。

 

「さて、連絡を入れないと。」

 

「連絡?...誰に」

 

連絡と聞いて私は敵意を向け、傍にあった剣を持とうとする、だが体は体の激痛に耐えられないのか動くことを拒否する。

 

「おっと、すみません聞こえていましたか...ご安心下さい、今から連絡するのは我らオフェナーの代表であり私達を作ったマスターに連絡を取るだけです。

貴方に害をもたらすような行為はするなとマスターに名を受けておりますので敵意を向けないで頂けると嬉しいのですが...」

 

彼からは焦りの感じることなく片腕で後頭部を掻くようにジェスチャーをする、私は意を突かれたような表情をして少し...恥ずかしくなってしまう。

 

「わ...分かった」

 

勘違い...か..ならよかった。

 

 

私の横にある受話器を使ってアスクは彼のマスターと呼ばれる人物に電話をしている、電話の会話を聞き耳を立てて聞くと、アスクの声の他、彼より声の低い男性の声が聞こえる、どうやら話の内容は私が目覚めた事を話しているようだ。

 

「....ええ、ではこれで。」

 

アスクは話し終わったのか私の元に来て、近くにある椅子を引きベットの横に座る。

 

「マスターは仕事が終わり次第こちらに向かうようですので...そうですね...何かご質問はありますか?」

 

質問...

 

「L社から私はどうやって助け出されたの?それと、L社は今どうなってる?」

 

「そうですね...まずは貴方様の救出方法ですが、都市で言う捻じれの部類のものを使用し、救出を行いました。」

 

「そ、そう....他の、私の同僚たちは?」

 

「逃げ出すことの出来た方は居るようですが、大半の方は幻想体による襲撃で亡くなられたようで...唯一助けられたのは貴方様一人だけのようです。」

 

その言葉を聞き、私は深い溜め息をつき柔らかい枕に頭を沈ませる。

 

「そう、なのね...」

 

「同僚の方とは、仲が良かったのですか?」

 

仲が良いか..か...考えてみれば仲の良い人はあまりいなかったな...いても数人だろうか。

 

「仲のいい人はあまりいないわ、いても都市じゃ次の日には死んでたりするから、関係は作りにくいの」

 

「そうですか、ふむ....2つ目の質問についてですが....この質問は私ではなくマスターに聞いたほうが良いでしょう。」

 

「?...分かったわ」

 

私が会話をしていると、左からスライド式の扉を開ける音が聞こえる、マスターという人物が来たのだろう。

 

 

〚アスク、済まないが少し席を外してくれないか?少し二人で会話をしたい〛

 

「はい、かしこまりました。」

 

といい、右側にある扉を開きアスクは部屋から退出し、マスターと呼ばれるガタイの良い人物と二人きりになる。

 

〚はじめまして、私はオフェナー代表の縺イ縺ウ縺 よろしくね〛

 

「私は、ガリーナよ」

 

マスターと呼ばれる人物は、私より身長が低く、口を白いマスクで覆い、切れ目でオールバックとしか分からない。

 

〚怪我の具合はどうだい?〛

 

「体を動かすとまだ痛むわ....それより....」

 

〚それより?〛

 

 

「何故私を助けたの?」

「貴方が都市の人間かは知らないけど、人を助けた後の結果は分かってるの?」

 

 

やはり、都市のルールが染み付いているのか....この問の答えに関しては都市のルールを則って考えれば恩を仇で返されると言ったほうが正解なのだろうが私は都市の人間ではないということを強く出すために違う答えを出そうか

 

〚私は困っている人は放おっておけない質でね、たとえ恩を仇で返されようとも生きてくれているのなら良いと考えている。〛

 

「それで死ぬことになっても?」

 

〚私は死ねない、いや、”死ぬことは許されない”だから死ぬことは考えていないよ〛

 

「.....変な人」

 

〚他になにか聞きたいことはあるかな?〛

 

「私が所属していたL社はどうなったの?」

 

〚L社か...L社ね...今は詳しくは分かってはいないんだが........簡単に言うとL社は”崩壊”した。〛

 

「崩壊.....翼が一つ...落ちた?」

 

〚そうだね、今L社の自治区内に送ったうちの諜報員の情報だと、L社外に居た職員が急いで現場処理に追われているようだよ。〛

 

「そう.....」

 

そう小さく呟くと彼女はこの先の人生のことを考えるようにして空を見つめる。

当然だろう、自分が所属していた会社が急に崩壊し職を失ったのだ、この先の未来を考えると嫌でもため息も出る。

 

 

〚そこで何だが、私から君に提案がある。」

 

 

この世界がいかに残酷で、絶望しかない世界でも

この世界で私が創り出した子どもたちに幸せを与えたいと

 

”平和を”与えたいと。

 

だからこそ、私は彼女に問う。

 

 

 

 

〚ガリーナ君、君”私の所で働かないか?”〛




人物プロフィール

名前:ガリーナ・ベレツハイム

性別:女

来歴:20区育ち
   父:グイド・ベレツハイム
   母:不明
   元L社職員

年齢:27歳



身体情報

身長:187cm

体重:60Kg

髪色:シーグリーン

瞳:カーマイン
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