バカ強スペックの沙条愛歌になったので、可愛さ布教します 作:だっちゃまん
ちなみに、ベル救出から一日経過して朝に帰ってます。ちょっと分かりずらい描写しかしてなかったごめんよ。
誤字報告評価ありがとね
時は遡って一日前。
「おかえり───ベル君」
「ただいま、神様」
空も陰る時間帯。エイナの尋問が終えたベルはフラフラな足取りで、自分のマイホーム『廃れた教会』に無事帰還した。一日の間に体験するには余りにも濃ゆい凝縮された今日と云う日に疲労三割、嬉しさ三割の複雑な感情を抱いて、出迎えた我がファミリアの主神ヘスティアの笑顔に応えた。
「どうしたんだい?なんだか、いつもと違うね」
「あぁ、いえ……その…色々ありまして」
「何があったんだい…?」
「少し、長くなっちゃうんですけど…実は───」
そうして語ったのは、今日の事。迷宮で2階層に登ったらミノタウロスに追いかけられ、少女に助けられたこと。死にかけたことは敢えて明言せず、その事をギルドのアドバイザーに「助けてくれた特徴の冒険者」を尋ねたら、それが冒険者として登録されていない正体不明の子だったこと。
それで、1時間以上の事情聴取されたこと。実に20分近い時間を使って話し終えたベルの説明を聞いたヘスティアの反応はと云うと。
「──誰だぁ!!ボクのベル君を誑かした女の子はぁ!!」
ブチ切れである。バァンッ!!とテーブルを両手で叩いて立ち上がったヘスティアの大声が、廃教会に響き渡る。沈黙するヘスティアに神としての何かを見極めようとする気配を感じていたせいで緊張しながら、ようやく話し終えた安堵で肩の力を抜いたのに、第一声がそれとは誰が誰も思わない。
「なんだいッ!正体不明の女の子に助けられたってっ!!完全に白馬の王女様の其れじゃないか!!ボクのベル君に色目なんて使って、許さん!!」
「い、色目!?ち、違いますって!」
「誑かし女め…!」
「ですから!違いますから!」
ぐぬぬぬ……と唸るヘスティアを宥めようとベルが近寄るも一切の効果なし。これには流石にベルも困り果てた。
「──あーもう、こうなったら確かめるしかない!!」
「へっ?」
突然、くるりと背を向けたヘスティアが、足早に部屋の奥へ消えていく。戸棚をごそごそと漁り、何やら巻物のようなものを引っ張り出してきた──恩恵を写す用紙だ。
「ベル君、明日からの予定は?」
「え、明日は……ダンジョンのつもりですけど」
「変更だ!捜索だよ、捜索!!その正体不明の子を探すんだよ!!」
「さ、探すって……え、神様も一緒に!?」
「当然だろ!?ボクのベル君にちょっかい出した子がどんな子か、自分の目で確かめる責任があるでしょうが!!」
「ちょっかい出されたっていうか……命助けられたんですけど……」
とは云え、ベルとしてもまた会いに行けるチャンスが掴めたのは嬉しい限り。と、明け透けな感情を見抜いたヘスティアは悔しさのあまりに顔を歪めて拳を握った。
「ぐぬぬ……それでも!ベル君が気になってるって顔してる時点で、もはや黙ってられないよ……!」
「いやいや!ダメですよ!?神様は迷宮に入っちゃダメって決まりじゃないですか!」
「うるさい!街で捜査するんだいっ!さぁ背中を晒すんだ!出せ!」
「か、神様!?ち、ちょっと落ち着いて────!!」
ベルの抵抗も虚しく、ベッドに無理やり連行されたベルはうつ伏せの状態で倒されて背中を跨るようにヘスティアが座り込んだ。
いつも行うステイタス更新、神の血を背中に刻んだ紋章に垂らすだけでステイタスが更新され、更なる力を眷属に与える神にのみ許された行為。やがて、神の恩恵を更新してすぐ……新たな文字が刻まれた背中を見て、ヘスティアは思考を止めた。
(──なん、だい?この上がり方…いつもと違う)
力、耐久、俊敏、器用の何れもが通常では考えられない上昇幅を遂げていたのだ。毎日のように彼の背中に跨ってステイタスを更新し続けてきたが……一日たりともこのような上がり方をした日がない。
そして、昨日までは空欄だった『スキル欄』に一つのスキルが発現しているのに気づく。
───ソレを、見るまでは信じられなかった四項目のステイタス値の上昇幅に納得がいった。
……あぁ、そういう事かと。
神は不変にして、時代に取り残された異物。しかし、下界の子供達は常に価値を動かして、時代を進んでいく世界の適応者。
(ボクの知らないところで、ベル君は変わっていくんだね)
しかし、例えそうだとしても……自分では無く他人の手によって変わりゆく眷属を見るのが、堪らなく───嫌だ。認められなかった。嬉しいはずなのに、胸の奥がぎゅっと痛くなった。だからヘスティアは、拗ねることでしか想いを伝えられなかった。
「───ぐすん、もう知らない!ボクはバイト先の打ち上げあるからそっち行く!君もたまには一人で羽を伸ばして寂しく豪華な食事でもしてくればいいさっ」
吐き捨て、教会を逃げるように去った。その背中を見たベルは、ただポツリと呟くことしか出来ないでいた。
「…神様。僕の服ごと、持っていくなんて……」
その日、乾ききってない少し濡れた服を着て過ごした。
■
「───君が、マナカと云う少女だね」
改めて、俺の正体を問うロキ・ファミリアの団長ことフィン君は鋭く光る眼を隠すこともなく、ただ俺の目を見ていた。背後にいる六人の反応は疎らであるものの……中にはこんな子が?等の疑う言葉が聞こえ、信じられないと云った感情を纏っている。
それも仕方なし、傍から見ればただの超絶美少女なんだから。しかし、同時に俺の正体は根源接続者───紛れもなく、人間を辞めた化け物だ。
肯定の意を示すように、俺は頷いた。
「えぇ、まさか直ぐに接触されるとは思いもよらなかったけれど…会えて嬉しい」
「…はは、そうだね。僕達としても……待ちどうしかったよ。色んな意味でね」
言葉通りの意味を言ったつもりなんだけど、なんだろ。凄い警戒されてる気がする。おかしいな…。俺かわいいよ?べらぼうにかわいいよ?え、そんなに警戒しなくても良くない?
そんなに変な出会い方してなくない??ただ目の前でフォモちゃんぶん殴って後ろに転移しただけだよ?
あ、めちゃくちゃ怪しいわ。
フィンは、俺の問いかけにも似た視線に一瞬口元を緩めたが、そのまま笑わずに言葉を継いだ。
「──警戒は、当然だよ。少なくとも“君が何者なのか”をまだ僕たちは知らない。そうだろう?」
周囲の空気が、再び引き締まる。さっきまでの「かわいいのに……」という俺の内心とは裏腹に、全員の目には明確な緊張と警戒の光が宿っている。
やれやれと肩をすくめて、やや芝居がかった調子で呟いた。
「……まるで、私が何か恐ろしい存在みたいな言い方じゃない」
「そうじゃないとでも?」
それまで沈黙していたリヴェリアが、鋭く言葉を刺す。
「いきなりフォモールを殴って転移──並の冒険者に出来る芸当じゃない。仮にそれを戦闘技術と捉えたとしても、瞬間移動のような行動は魔法と捉えるべき。だとすれば、それは“認識されていない魔法”ということになる」
やっぱ地頭が良い人達の集まりだから、何言われても驚かないと思ってたけど、そこまで正確に観察していたことに、内心少し驚いた。
「……さすがエルフのお姉さん。怖いくらいに鋭い」
「…褒め言葉として受け取っておこう」
「でも、残念ながら──それは魔法じゃないのよ」
リヴェリアの眉がぴくりと動く。
「じゃあ、何だと?」
「才能、とでも言っておくわ」
ふふ、と微笑んだマナカに、またしても空気が張り詰める。
え、だってそうでしょ!推しの才能だよ!普通こんな転移出来ないからね!?そうポンポンと!生まれた時から使えるこれはもう、魔法なんてカテゴリー飛び越えて才能だよ才能。
それよりも──ずっと立ちっぱなしで話すなんて、お客様に失礼じゃない?ボールスちゃん、何とかならないかな。布教活動もあるしこのチャンスは逃したくない。
幹部の殆どが揃う場面なんて次いつあるかなんて、分かったもんじゃないし。ここは全力でおもてなししなくちゃ!!
「ねぇ、皆さん?このまま立ち話も何ですから、座ってお話しましょう?」
■
詳細はリヴェリア越しで伝えられた為、どのような容姿かも断片的な情報でしか脳内で形に出来なかったロキ・ファミリアの面々の、マナカの第一印象は出会った事で───180度変わった。
ティオナはマナカの存在を認めた瞬間、一瞬とは云え「わ…お人形みたい…」と漏らして、アイズは一瞬、目を見開き──しかし何も言わなかった。リヴェリアは表情を変えず、ただ杖を握る手に力が籠もった。
その他はティオナ同様に概ねは好印象を抱いていた。表面上は警戒を滲ませていたものの…本当にこんな子が?と、疑いがあったのだ。
リアクションは見せたが、リヴェリアやアイズとて、その気持ちは例外ではなかった。見た張本人ですら本当に同じ人物か?と思ったほどに乖離があったのだ。
───しかし、フィンだけは親指に危機が伝っていた。
敵対したら、僕らは終わる。
それを直感したのだ。そして、彼女とコンタクトを取った後の印象は……青天の霹靂。この子は、脅威であると同時に、どこまでも無垢だった。敵対の意思は全く見られないどころか……まるでアイズのような純真さを持ち、目の中に渦巻く何かを持ち合わせている。
なのに、言動は違う。底が見えない。深淵を覗いているような、底の見えない眼差し。その実態は、どこまでも黒く、静かに全てを飲み込む“穴”のような存在だった。
まるで鷹の皮を被った鳩のようだと、フィンは目の前の少女を評価した。
「──クソ、なんで俺の家に…」
「ボールスちゃんの家が1番大きいもん、良いじゃん枢機卿」
「誰がっ…!!」
砕けた会話だ。リヴィラの元締めとして、彼とここまで対等かつ利害もなく接している。その光景が尚更フィンの中で驚きを与える要素でもあった。それはティオナやティオネも感じていたようで、思わず口にする。
「……あのボールスが素直に言うこと聞いてる」
「すごいわね、あのならず者を…」
「……」
それだけ、彼女が此処で力を持っている証左。やがて一同は一際大きい一軒家──ボールス邸に到着した。概観は石造り、屋根は二階建てで、簡素ながら軍の駐屯地のような威圧感を持っていた。通常なら近寄りがたいこの家に、少女が当然のように先導している光景は、まるで世界が反転しているようだった。
そして、ボールス邸まで招いたマナカ達の後に続き、フィン達はリビングの椅子に催促される形で長方形の机に分つように座る。
途中ボールスが「汚すんじゃねぇぞ」と渋々感を残していたが、「茶を汲んでくる」なんて気の利いた言葉を吐いたことに驚く一幕もありつつ…全員が万全の状態で揃った。
マナカの視線と交差する。先程の会話を思い返すフィンは色々な策を思案するが…彼の常套手段である探り合いや言い回しを、敢えてここでは封じる事にした。
ただの勘でしかないが、歴戦で培った感覚はバカにできるものでは無い。絡め手を使わず、愚直に真っ直ぐ──直接言うしかない。
「単刀直入に言うよ───君は、何者だい?このリヴィラで何を企んでいる?」
その瞬間、フィンを起点に威圧が解き放たれた。真剣な眼差しを湛えた視線に、マナカを除いた全員の肩に力が入る。ボールスに限っては、マナカの隣と云うこともあって威圧が流れ込んでいるせいで、少しだけ苦しそうに顔を歪めて───。
「…やめてね?私のお友達なの」
「…ッ、少し、力が入りすぎたみたいだ、ボールスもすまない」
其れは先程まで見せたことの無い、感情の抜け落ちた瞳。ほぼ条件反射で無意識に垂れ流した威圧を解いて、謝罪を行った。後数秒……対応が遅かったら、どうなっていたか…自分の首が一瞬で消えたような錯覚を最後に、マナカからの視線は緩くなった。
「えっと、私の目的だったね。目的はそんな変なことでは無くて……」
すると、どこか躊躇いがちに視線を往生させる。その姿に一気にフィンの中で不信感と警戒心が募る。脳内に『闇派閥』の単語が過ぎり、もしオラリオに仇なす存在であるのなら、例え親指の危機を感じていたとしても今すぐ殺す必要がある───と指に力を入れた途端。
決意したようにフィンを見据えて、ハッキリと告げた。
「───私の神を布教するためです!」
マナカは満面の笑みで告げた。その目は、どこまでも純粋で、どこまでも歪んでいて……これでもかと熱量の籠った声色だった。
フィン達は肩をガクッと落とした。
「「「なにそれ…??」」」
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