バカ強スペックの沙条愛歌になったので、可愛さ布教します   作:だっちゃまん

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評価感想報告マジでありがとう!

報告はもう、すごい助かってます…!


ロキ・ファミリア

 

 

青天の霹靂とは、まさにこの事かと。思わず感嘆の声を漏らした。マナカの放った一撃はアイズの奥義をいとも容易く砕いて見せた。強力無比、あらゆるモンスターを穿ってきた必勝必殺───リル・ラファーガを解れる糸のように、デスペレート諸共後方に弾いた。

 

18階層の壁に消えぬ跡を残し、その威力を物語っていた。呆然と立ち尽くすアイズ、先程の光景を未だに処理できないロキ・ファミリアの面々を後目に、フィンは愕然としつつも言葉をこぼした。

 

「──この勝負、彼女の勝利だ」

 

 

宣言通り、アイズは完膚なきまでに敗北した。

 

しかし、彼女を強者たらしめる一つの想いが生まれる。リベンジの灯火が徐々に、されどフツフツと燃え上がったのをアイズは自覚した。

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

───アイズちゃん、ちょっとパネェよ。

 

エクスカリバーの出力をだいぶ下げたとは云え、一瞬均衡するってなんですかね。対城宝具だよ?最強の聖剣だよ??あの子ちょっとイカれてない?凄いよ、普通にびっくりした。

 

「アイズさん、すっごく楽しめたよ!」

 

いやマジで、これでLv5なんでしょ?原作ではLv6行くんでしょ?ちょっと強すぎるってこの子。

 

「…う、うん」

 

あれ、ちょっと距離近すぎたかな?1回遊んだだけで親友ズラしないで!とか言われちゃう感じ…?

 

「…」

 

なんか無言で見られるの気まずい…。

 

笑顔で駆け寄った俺とは対照的に、アイズはどこか悔しそうな表情で俺を見つめた。俺がどうしようか悩んでいると、アイズは胸に手を置いて、瞳を閉じる。深呼吸を二度繰り返すと、その瞳に新たな感情を纏わせて俺を見据えた。

 

その感情の名を俺は知らない、だけど、どこか晴れ晴れとした顔つきになっている。全力で、必死で、足掻いて藻掻いた先に見つけた目指す場所…そんな決意に満ちた何かが俺にも伝わった。

 

正直、なんでそんな目で俺の事見るのかは分かんないけど…原作のアイズと同じ、強さを渇望しているのなら俺とて推しの名に恥じないように…応援したい気持ちになる。

 

「ね、ねぇ」

 

「どうしました?」

 

「また…私と戦って、くれる?」

 

少しだけ、不安を纏った瞳。この気持ちが自分勝手なものだと理解してるから…想いが空振りすることを恐れてるような、そんな目。

 

俺は、クソ信者。

 

だけどもクソ人間じゃあないんだよ。俺の言葉は既に決まっている。

 

「───もちろん!いつだって相手になるからね!」

 

沙条愛歌の顔を貼り付けることも忘れ、俺は彼女の願いに答えた。はは、やはり気分が高揚すると語調が崩れちまうわ。

 

まぁでも、嬉しそうにはにかむアイズを見たら仕方ないことしよう。今回の戦いを得て、俺もある程度分かったし。知識として識るよりも、経験として知ることが俺にとっても有意義だったし。

 

それに…布教のチャンスやがなぁ!!!

 

愛と可愛さを布教するために、俺はとびっきの笑顔で宣った。

 

「じゃあ!皆さんに聖書を配るのでこっち来てくださーい!!」

 

 

その時、なぜかアイズとの距離が離れた気がした。

 

うん、なんで???

 

と云うわけで、俺は布教活動を開始した。なぜか要らねぇ…とか聞こえたけど多分幻聴だ。転生前はイヤフォンをよく付けていたからその名残だろう、気にしたら負け。

 

「い、いや…さすがに貰えないよ。手間ひまかけたものだろう?僕たちは遠慮────「いえ、めちゃくちゃあるから!」…何処から取り出してるんだい?」

 

スカートの裾からマジックショーの如く出現する聖書を見たフィンは軽く引いて後ずさった。

 

「…すごい、何も無いところから本が出てきた!」

 

「流石ティオナさん!よく食いついてくれました!」

 

「……ティオナ、よく切り替えれるわね…はぁバカバカしくなってきた」

 

「…考えても仕方あるまい、アイズのわがままを聞いてくれたんだ、ここは受け取ろう」

 

「ガッハッハッ!!面白い娘じゃな!!」

 

「……そ、そうだね」

 

うーん!最高!やはり推しの愛と可愛さは最強なんですよ。前世ではクッソ嫌がられたけど、やはりファンタジーの住人は心まで清く麗らかなんだ…!!

 

推しをバカにしたアイツらに見せてやりたいぐらいだぜ!!まぁ、信者の俺でもクソ野郎って思ってるから仕方ないけど。

 

「……け、結構重いわね」

 

「これでもまだ序の口ですよ!」

 

「…すっご、いっぱいいろんなこと書いてある…」

 

「でしょ!渾身の力作!」

 

「…凄まじい、熱量だね」

 

「当たり前ですよぉ!」

 

「……私には、ちょっと重量かなぁ……なんて」

 

俺は聖書を両手に持って、それぞれに一つずつ手渡していく。概ね、好感触のようでみんなページを見開いて驚いていた。ガレスさんも、あの顔で結構「すごいのぉ!」とか言ってくれてめちゃくちゃ良い人だった。

 

若干顔を引き攣らせるフィン君とかエイナちゃんとかいたけど、まぁまぁ分厚いからね。重いし仕方ないね。

 

そんな具合で、べートに聖書を渡そうとしたら。なんかすごい睨んでそっぽ向かれた。

 

「……俺は要らねぇよ」

 

「ど、どうして…」

 

「んなもん、邪魔でしかねぇだろ」

 

おし、このくそオオカミ。俺に喧嘩売ったな?良いぜやってやりますよぉ!そっちがねぇ!喧嘩を売るならねぇ!僕だって推しの伝道者としてブチ切れですわぁ!

 

 

 

「むむ?べートさん……貴方、もしかして……」

 

 

 

俺は口に手を添えて、心底驚いた風に片足を一歩後ろに下げ────。

 

 

 

 

 

 

 

「──聖書で手が塞がってるからって18階層も降りられないヘタレ……なんですか?」

 

 

 

 

弱者を嫌う彼が最もムカつく言葉を吐いてやった。

 

 

 

 

「…ぷふっ!」

 

「うわ、すごいこと言っちゃったよ!?」

 

「…あ、逃げる」

 

「ガハハハ!!」

 

「…どうして、私の周りには問題児が集まるんだ……」

 

ティオネは吹き出し、ティオナはギョッと此方をガン見。アイズはそそくさと距離を離し、ガレスは大爆笑。エイナ、リヴェリア、フィンは頭を抱えてしまった。

 

そして、べートは身体を震わせ。

 

目に見えて。

 

「あ……?」

 

彼の表情が赤く染まり。

 

「てめぇ…今、なんつった?」

 

瞳からは、溢れんばかりの殺意が───。

 

「んなもん、余裕に決まってんだろうがッ!!!!寄越しやがれ!!!今すぐ往復してやるわクソ野郎!!!」

 

俺の手から強引に聖書を奪い取ると、そのまま18階層の入口まで全速力で駆け抜けた。遠ざかる背中をみんなして見送り、俺はべートに悪口を言えた満足感に満たされていた。

 

聖書が完成した時以上のスッキリ具合ですわ。達成感を滲ませている俺の横で、フィンは聖書を片手に、眉間を指で押さえながら俺に問うた。

 

「──君の"神"は、一体何者なんだい?」

 

少しだけ目を細め、じっと見てくる。その表情は、探るような、けれど確かな警戒を含んだものだった。

 

「神とは──大抵、もっとこう、わかりやすく振る舞うものでね。君の神は……まるで、君そのもののように感じるんだ」

 

俺はにっこり笑って、親指を立てる。

 

「信仰は心に宿るものですからね!」

 

「…何となく、君のことがわかった気がしたよ」

 

深くは追及せず、フィンはそれ以上は問わなかった。むしろ、この後どうしよう…みたいな中間管理職の苦悩じみた顔付きで笑っていた。

 

ちょっとだけ、フィン君達との距離が縮まった気がする。警戒は依然として感じるけど、まぁでも距離が縮まったのは個人的には嬉しいかな。これで信者が増えてくれたら最高、本当に狂喜乱舞するってばよ!

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

「じゃあ、お暇するよ」

 

マナカとの戦闘から2時間が経過した。ロキ・ファミリアの幹部勢が長時間留守にしている訳にはいかず、彼らとて迷宮遠征だけが仕事では無いため、やる事が山ほど積もっている。

 

その中で切り詰めて、マナカとの邂逅を果たしたわけだが……エイナもギルド員としての仕事もあるし、マナカの報告も必要なのだ。ある程度情報も揃い、完璧とは言い難いもののマナカの実力、立ち位置、目的を確認できたので良しとした。

 

「今度はいっぱいお話聞かせてよ!」

 

「うん!いっぱい話そうね!」

 

既にティオナとは意気投合したマナカはキャッキャと話し込んでいる。アイズもあわあわと二人を見つめて、会話に入りたそうにしていたが、マナカがそれに気が付いて今では三人で楽しそうに笑っていた。

 

「べートちゃん、聖書をゴミにしないでね」

 

「うるせぇ……!」

 

結局、べートはこの短時間の間に二度往復して、ドヤ顔を披露しながら「俺にかかりゃあこんなの余裕だわ!!!」と若干キレ気味でマナカに自慢していた。対して、マナカは瞳を輝かせて「すごい!!次は30階層までできる!?」と、純粋な目で言われてタジタジになっていたべートが居たとか居なかったとか。

 

「あんた、実力とか腹の内はともかく容姿は良いんだから、いろいろ気をつけなさいよ」

 

「心配してくれるの?」

 

「…何かあっても相手が返り討ちに遭うだろうけれど、女の子なのよ?」

 

「…うん!わかった!私の体に触れたら木っ端微塵にするね!」

 

「うん…?」

 

「ガハハ!やはりお主面白いのぉ!気に入った、今度ホームに訪ねてくると良い!」

 

「ほんと!?じゃ、じゃあ団員の数を教えてくれたら、この聖書を───「「「それは必要ない」」」」

 

そうして、各々がマナカと会話をしつつも当初の険悪な空気は消えて、もはや彼らの中で友好的な存在として打ち解けていた。18階層の入口付近まで、彼らを見送りに来たマナカと向かい合う。

 

「じゃあね!マナカ!またしゃべろーね!」

 

「次会った時は一緒にお買い物でも行くわよ」

 

「ばいばい……」

 

ティオナ、ティオネ、アイズの言葉に頷く。その傍らで身を乗り出すガレスと目が合う。

 

「今度は儂と腕相撲をするぞ!」

 

「ではな、今回は世話になった」

 

「マナカ、また近々呼ぶかもしれない。その時はホームに来てほしい、良いかな?」

 

「うん!じゃんじゃん呼んで」

 

べートは変わらず素っ気ない対応でエイナはお辞儀をして、背を向けた。やがて、手を振って名残惜しそうに見送るマナカの姿が見えなくなるまでティオナとアイズは手を振り続け……完全に姿が見えなくなった。

 

階層を登る彼らロキ・ファミリアに包まれた雰囲気は、格段に良くなっている。緊張感が解けて、肩の力が抜けたのだろう。フィンは小さく息を吐いた。

 

想像していた以上に、彼女は友好的だった。そして、想像以上に───突出した力を内包していた。フィンの直感は間違っていない、もし仮に彼女と『ロキ・ファミリア』総戦力で挑んだ場合……壊滅的な被害は免れない。

 

いや、下手すれば……ただ、一方的に嬲られて終わるかもしれない。アイズに放ったあの一撃はそう思わせるほどの威力を孕んでいたのだ。

 

そして、最も難解だったのはマナカが信仰する瓜二つの神の存在。マナカと意思疎通を行い、この少ない時間で二律背反の存在で在りながら『鷹の皮を被った鳩』と云う評価を付けていたフィンの中で、確かな揺らぎと不確定な部分があった。

 

──彼女は、敵か味方かで言えば味方寄りなのだろう。しかし、不意にみせた感情の抜け落ちた瞳、あれは親しい存在に害意が及んだ場合、あの力が振るわれるのは間違いない。

 

それさえ心に留めれば、今後とも彼女との付き合いも続けられる。選択肢さえ見誤らなければ心強い友人…と思えば良いだろうか。

 

だが、フィンが感じた揺らぎと不確定な部分はその程度の繋がりで払拭出来るほど軽いものでもなかった。

 

───マナカから、不気味な神性を垣間見たのだ。

 

神ではない、それは分かっている。なのに、人間の皮を被った神が此方を覗いているような……今まで感じたことの無い違和感を抱いていた。

 

それらも含め、ロキに伝えなければならない。

 

(……目的も布教活動だけでは無さそうだ)

 

何かを隠している気がする、ただ、その程度でしかない直感。数多の戦を指揮し、己も戦士として戦い続けた先に培った洞察力が機敏に反応していたのだが……今は、ただ彼女を少し信じてみるのも良いのかもしれない。

 

……決して。マナカを思い出して、馬鹿馬鹿しくなった訳ではない。

 

わけでは、ないのだ。

 

 

 

 

 

⬛︎

 

 

 

 

 

 

「────そういうわけで、僕の……いや、僕らの結論としては警戒はすべきだが、彼女と今後とも友好的な関係を築きたいと考えてる、どうだい?ロキ」

 

黄昏の館に着いてすぐ、リヴェリア、ガレス、フィンの三人は直ぐさまロキに報告すべく彼女の自室に突撃し、事の経緯を話した。

 

そして、その話を聞いたロキはと云うと───。

 

 

 

 

「……はは、おもろすぎやろ……」

 

 

 

呆然と天井を見つめる事しか出来なかった。

 

 

 

 

そして、ギルドでも一悶着があった。

 

エイナの報告を受けたギルド長ことロイマンは口頭で説明された内容に動揺を見せてぶっ倒れた。

 

「……ど、どうなっている…?剣姫の攻撃を防いだ挙句あの技を赤子の手をひねるような光線を放って、勝っただと……??」

 

 

 

 

奇しくも、違う場所。立場も種族も違う、二人の声がオラリオに響き渡った。

 

 

 

「───勘弁、してくれ…!!!」

 

 

 

「退屈、しなくて済みそう……やなぁ…って、このアホ!!!」

 

 

 

 

 

 





お陰様でお気に入りも1000人近いですよ。

みんな、こんなノリと勢いで書いただけの作品読んでくれてありがとうね!!
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