双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

101 / 127
儀式

 

 そうして私たちは、荒野続きのカズデルにやって来ていた。

 内戦が酷く続いているカズデルにマホガニーとツルギは連れては行かず、私はしっかり防護服を着せてイネスとロゴスと共に例の儀式場所とやらへ向かっていた。ついでに現物の石を見たレオンハルトと、源石に強いブルー生命体の一人であるマッドグリーンも連れて。

 イネスの語る集落はもう衰退して見る形もなくなっていたが、奇妙な儀式をしていたという洞窟は森に隠されるように残っていた。イネスが語るにはこうだ。

「物心がついた子どもを親が捨てる場所。洞窟の中には偉大な力が眠ってるとかで、唯一生き残って出てきた子どもに、嵐を呼ぶ力が宿ると云われていたのよ」

 それからイネスは、私から後ろにいるロゴスをちらりと見た。この辺りのことはきっとロゴスの方が詳しいのだろう。他のサルカズよりやや異端なロゴスを前に、サルカズではない自分が語るのは引け目を感じているのかもしれない。

「中には入って大丈夫なのか?」

 私が割り込むように聞くと、イネスは気持ちを切り替えたように話を続けた。

「当たり前よ。私たちはこの洞窟を雨宿りに使ったもの。中に偉大な力なんてない」イネスは言い切った。「前にヘドリーから聞いたのよ。そういう集落が使ってた洞窟だったって」

 ヘドリーか。イネスと共にロドスに来た一人だったな、と思い出すと感情が溢れそうになる。いけない。ここで冷静さを失う訳にはいかないのだ。

「ふぅん……確かに、なんの変哲もなさそうな洞窟だね」

 颯爽と前に進むレオンハルトは、何も怖がる様子なく洞窟の中を覗き込む。ロドスの時から術師のはずなのだが、相変わらず術師っぽくない。

「レオンハルトの言っていた不思議な石はあの中にあるってことかい?」

 と私が歩きかけると、待て、とロゴスに止められる。

「中から異臭がする。呪術で閉じ込められているから気づきにくいだろうが」

 呪術というのは少なくとも私の目には見えず、洞窟は誰もが入っていいように大口を開けている。ロゴスの言う異臭は私には感じられなかった。

「まさか……前に来た時は呪術だってなかったのに……」

 とイネスが呟いているところ、何か異変が起きていることだけは分かった。私はロゴスを振り向いた。

「呪術の解除は可能だ」

「じゃあ入ってみようよ!」

 冷静なロゴスとお気楽口調なレオンハルトに風邪を引きそうになりながら、とりあえず呪術を解除してもらう。洞窟の出入口を遮っていた呪術が解除されると、たちまち異臭が立ち込めて私は思わず口元を覆った。

「この臭いは……」

 マッドグリーンがそう呟いて私に目を向けた。彼は前にも、この異臭を嗅いだことがあるのだ。

「行ってみよう」

 私の声を合図に、一行は洞窟へ入って行った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。