双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

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ゼロ

 

 テラには様々な問題がある。

 防ぎようのない天災に、決まらない統一者の争い、そして、未だ完治方法のない鉱石病。

 その中でも日常的に必要とするものは「雨」であろう。どんなに豊かな土地でも、雨が降らなければたちまち荒野と変わり果てる。サルカズの者たちも、雨を求めることが多かったのだ。私たちと同じように。

 そうしていつからか考え出されたのは「雨乞い」の儀式だったのだそうだ。その雨乞いは最初はたまたまの偶然で上手くいったこともあっただろうが、そう簡単にいかない方が多かった。そうしてその偶然が何度も重なることで、本当に雨乞いを成功させる者が何人かいて、その何人かの一握りが他の者にも雨乞いのやり方を教えようとした。

 それは相当苦しい修行だったり、厳しいものだったりした。

 あの洞窟もかつてはその雨乞いをするための儀式だったのだろう、とロゴスは語った。ある一帯のサルカズの中では、同じ形をした石が雨を降らせると信じられていたのだと。

「それが、この石だったと……?」

 私は足元に転がるなんの変哲もなさそうな石を眺めた。洞窟内にはそういった石がゴロゴロと転がっている。

「可能性は高いだろう。これだけ同じ形の石があるなら」

 とロゴスは言った。

 私は石を見、マッドグリーンへ目を向けた。ここにある複数の石が全て同じ大きさと形をしているとなると、どうしてもブルー生命体と関係性を疑ってしまうのだ。ブルーグラスはどうやってあんなに沢山のコピー人間を生み出したのか……元々コピー人間の技術を持っていたとしても、それだけではあんな恐ろしい軍隊までの数を作り出すには手間も時間もかかるはずだ。

「おい、誰か中にいるのか!」

 そんな時だった。洞窟の外から声が飛び込み、私たちは一斉になって顔を上げる。マッドグリーンは真っ先に私の前に出た。

「この辺りの者かもしれないな。一旦ここを出ることを推奨するぞ」

 とロゴスが洞窟の外を見据えながら言った。私は賛成した。

「ここを出よう。……警戒態勢は崩さずに」

 私は皆にそう指示を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟前には、ゾロゾロと武装した者たちが大量にいた。

 てっきり、この辺りのサルカズの者かと思ったが、武装した彼らはサルカズの他にフォルテやフェリーン、なんならサンクタもいたりして、種族まちまちの軍隊に見えた。

「我らはこの洞窟の調査に来た者だ。遺跡を荒らしに来た訳ではない」

 なんの指示も出していなかったが、真っ先にそう言って軍隊の前に出たのはロゴスだった。うちの術師たちは頼もし過ぎるんだよなぁと思っているとそこにいるレオンハルトの翠玉色の視線とぶつかった。私が何を考えているのか分かったのかなんなのか、レオンハルトは悠長にウインクをした。

「リーベリがなぜここに……?」

 ロゴスをリーベリと勘違いする人が大半である。だが私は、彼らには戦う気がないと見て取れたので、洞窟の影から外へ姿を出した。

「初めまして。私たちはラズハ医療支援団体の者だ。訳あってここの洞窟を調査しに来た」私は慎重に言葉を選びながら話した。「そちらの話を聞いてもいいかな?」

 すると軍隊たちは静かになり、私たちを見据えた。様子を伺っているという感じだろう。私は防護服以外何も身につけていないが、他のメンバーは武装している。まさに、一触即発状態だ。

「話がしたいなら私がするわ」

 そんな緊迫した空気を裂いたのは一つの女性の声だった。私は思わずイネスを振り向いてしまったが、この声はイネスからではなかった。

「私はトイフェルから脱走してきた……そうね、ゼロとでも名乗りましょうか」

「えっ……」私は、軍隊の方から出てきた人物に一瞬言葉を失った。「イネスが……二人いる?!」

 

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