双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

11 / 127
コータスの少女

 

「応急処置は出来た。ただ、ちゃんと手当てはしなきゃならない。一度艦に来てくれないか」

 私はコートの下に仕舞っていた簡単な医療具でコータスの少女の手当てはしたが、包帯の長さがやや足りていなかった。私は第二ロドス艦に来るよう誘ったが、少女はいい顔はしなかった。

「さっき泥棒に入った艦にまた来いって? そんな罰当たりなことしていい訳?」と少女は言う。「それにまた、私が何か盗んだら嫌だし」

 その言い草に、なぜだか私は親近感を覚えた。私は彼女を放っては置けない。そんな直感が、私の脳を支配しているような。

「お姉さん、名前は? ぼくはマホガニー。で、こっちは妹のツルギ」

 そこに、コミュ力の高いマホガニーが入ってきた。ツルギはマホガニーに紹介されて小さくお辞儀をした。

「お姉さん、ドクターはすごい人だから、怪我もすぐ治るよ」

 とツルギは付け足して。

 さすがに子どもにそこまで言われて分が悪いと思ったのか、少女は目を逸らしながらしぶしぶ答えた。

「私はレ……じゃなくて、ロープ。ここら辺で泥棒しながらその日暮らししてる、よくいるコータスだよ。だから私に何かしてもらっても、お返しなんて何も出来ないし……」

「ロープ……?」

 その時急速に、私はロープという名前のオペレーターのことを脳裏に描き始めた。紫色の髪の毛をしたちょっと盗み癖のあるコータスの女性。それは今目の前にいる茶色いコータスに、かなり似ている容姿と口癖に、私はなぜか強い確信を持ってこう聞いたのだ。

「それは、君のコードネームかい?」

「えっ」

 私があまりにもはっきりとそう聞いたからだろう。ロープと名乗った彼女は驚いたように目を見開き、私を見つめた。足元のマホガニーとツルギはきょとんとしていたが、私はある答えに行き着くのではとわずかな希望を胸に抱いていた。

「なんで、これがコードネームって知ってるの?」

 彼女は質問を返してきた。私は答える。

「ロープと名乗る別の女性を知っているからだ」

 それは本当のことだ。

 すると少しして、彼女は諦めたようにため息をついた。

「はぁ、うっかり母さんのコードネーム出したのがマズかったよね」と彼女は話し続ける。「私の本名はレナハート。私にコードネームなんかない。ロープは、母さんが使ってるコードネームだよ」

「やっぱり、そうなんだな?!」

「へ?! 何この医者! さっきから変だよ!」

 と彼女に大声を出されたが、私の変人具合はマホガニーとツルギはもう慣れているはずだ。私に口出しをする人間は今はここにはいない。

「君はロープの娘なんだね?? ロープは、ロドスにいたオペレーターなんだよ!!」

 私は嬉しくて更に大きな声をあげていた。そうか。あのロドス壊滅で生き残っていたオペレーターはいたのだ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。