「応急処置は出来た。ただ、ちゃんと手当てはしなきゃならない。一度艦に来てくれないか」
私はコートの下に仕舞っていた簡単な医療具でコータスの少女の手当てはしたが、包帯の長さがやや足りていなかった。私は第二ロドス艦に来るよう誘ったが、少女はいい顔はしなかった。
「さっき泥棒に入った艦にまた来いって? そんな罰当たりなことしていい訳?」と少女は言う。「それにまた、私が何か盗んだら嫌だし」
その言い草に、なぜだか私は親近感を覚えた。私は彼女を放っては置けない。そんな直感が、私の脳を支配しているような。
「お姉さん、名前は? ぼくはマホガニー。で、こっちは妹のツルギ」
そこに、コミュ力の高いマホガニーが入ってきた。ツルギはマホガニーに紹介されて小さくお辞儀をした。
「お姉さん、ドクターはすごい人だから、怪我もすぐ治るよ」
とツルギは付け足して。
さすがに子どもにそこまで言われて分が悪いと思ったのか、少女は目を逸らしながらしぶしぶ答えた。
「私はレ……じゃなくて、ロープ。ここら辺で泥棒しながらその日暮らししてる、よくいるコータスだよ。だから私に何かしてもらっても、お返しなんて何も出来ないし……」
「ロープ……?」
その時急速に、私はロープという名前のオペレーターのことを脳裏に描き始めた。紫色の髪の毛をしたちょっと盗み癖のあるコータスの女性。それは今目の前にいる茶色いコータスに、かなり似ている容姿と口癖に、私はなぜか強い確信を持ってこう聞いたのだ。
「それは、君のコードネームかい?」
「えっ」
私があまりにもはっきりとそう聞いたからだろう。ロープと名乗った彼女は驚いたように目を見開き、私を見つめた。足元のマホガニーとツルギはきょとんとしていたが、私はある答えに行き着くのではとわずかな希望を胸に抱いていた。
「なんで、これがコードネームって知ってるの?」
彼女は質問を返してきた。私は答える。
「ロープと名乗る別の女性を知っているからだ」
それは本当のことだ。
すると少しして、彼女は諦めたようにため息をついた。
「はぁ、うっかり母さんのコードネーム出したのがマズかったよね」と彼女は話し続ける。「私の本名はレナハート。私にコードネームなんかない。ロープは、母さんが使ってるコードネームだよ」
「やっぱり、そうなんだな?!」
「へ?! 何この医者! さっきから変だよ!」
と彼女に大声を出されたが、私の変人具合はマホガニーとツルギはもう慣れているはずだ。私に口出しをする人間は今はここにはいない。
「君はロープの娘なんだね?? ロープは、ロドスにいたオペレーターなんだよ!!」
私は嬉しくて更に大きな声をあげていた。そうか。あのロドス壊滅で生き残っていたオペレーターはいたのだ!