音声が聞こえなくなり、私はようやくボイスレコーダーの電源を切る。目を上げると、そこにはロゴスがいつの間にか立っていた。
「音声記録はそこまでだ」とロゴスが話し出す。「我も最後までは共にいなかったが、石棺が余っていた理由は知っていた。ソーンズとレッドが同じ石棺に入ったからな」
「余った石棺が、アーミヤの石棺になったのか……」
私はそこで息をついた。ボイスレコーダーを聞いている間、私は浅い呼吸ばかりしていたらしい。私はゆっくりと深呼吸をする。
「ここにアーミヤの石棺を保管している話は聞いた。呪術を掛けては置いたが、まさか余った石棺が使う日が来るとは思っていなかった」
と話すロゴスは、逃げるようにどこかに行ってしまったケルシーの代わりに説明を補完してくれているみたいだった。私は、ロゴスに聞いてみた。
「石棺って、私が眠っていた石棺と同じなのかい?」
「いや、実際はかなり違うが、応用したものではあるな」とロゴスは答える。「ケルシーは、あの日のことを今も悔いている。我は少しだけ助力していた」
「いつかロドスが崩壊しかけた時に?」
「そうだ」
私はアーミヤの石棺のことを思い出していた。一人分だけでもあんなに大きかったのに、それをロドス艦内で密かに用意していたとは……いいや、クロージャも手伝っていただろうし、ケルシーならやりかねないだろう。私に何も知らせないまま。
「だけど、意外だったな。ソーンズの技術も使っていたなんて」
口振り的に、ソーンズ自身は不本意だったようだが。
「我もそれは知らなかった。まさかエアースカーペの息子のために考えたアーツユニットが、擬似石棺の技術に使用されるとは」
気づけばロゴスは、そこにあるスツールに腰を下ろしていて私に横顔を向けていた。その顔は決して明るくはない。私は手元のボイスレコーダーへ視線を落としてから、スノーグラウスと初めて会った時のことを思い出していた。
「そろそろ俺の紹介もしていいか?」
肩身離さずパレットソードを背負っているコータスの少年。あの時から、私たちの物語は動き始めていたのだ。ソーンズたちはあまりにも多くのものを未来に残している。マホガニーとツルギ、スノーグラウス、パレットソード、擬似石棺……。ようやく今と最初が繋がって、私は溢れる感情を抑えるように自分の両手を重ねた。
「行かなきゃな……」
「ん?」
ロゴスがこちらに視線を向けてきた。私はロゴスと視線を交わす。
「ロドス、奪還しよう」
託された未来を、取り返しに。
「うむ」
ロゴスは頷いた。返事は、それだけで充分だった。