「行こう、ドクター!」
マホガニーが私を振り向く。ゼロたちの軍艦がトイフェルの本艦に攻撃を仕掛け、空中戦を繰り広げている中、私たちは地上から接近を試みた。
「第一戦艦、始動せよ。侵入者を発見しました」
トイフェルの陣地内に入るや否や、ドローンがいくつも飛んで来た。頭上でけたましく警告音が鳴り響く。
「うるさいなぁ!」
とマホガニーが大剣が振ると、中に入っている半透明の液体が飛び出してあっという間にドローンが沈黙した。複数あったのに命中が正確だ。
「行ってらっしゃいませ」
ラズハの前には、ブルーグッピーが立っている。彼の任務はラズハを守ること。動かないからこそ強さを発揮するブルーグッピーを最大限に活かす作戦の一つだった。
「行こう」
私の手を引くのはツルギだ。私はトイフェルに乗り込み、冷却保存されている彼らを呼び起こさなくてはいけない。私はツルギの小さな手を握り返した。
「おい、来たぜ!」
「わぁってるって!」
間もなく、ドローンの警報で来たのであろう第一艦とやらが私たちの目の前まで近づいてきた。それを迎え撃つのは前に飛び出したガイターとホウライ。こちらに向けられた砲台を真っ先に破壊しにいった。
「おらぁ、お前ら進めー!!」
頭上で爆発音が響き、ホーンバーンが部下たちを連れて走り出す。敵の防御システムに対応するのはホーンバーンを隊長としたガイターとホウライを含める二つの戦隊である。ホーン戦隊とスノーグ戦隊だ。
「進め! 道を切り拓け!」
スノーグラウスもR-0c改に乗ったまま部下たちの指揮を執る。敵の第一戦艦からゾロゾロと武装した軍人たちが出てきた。地上部隊と空中部隊がいるようだ。
「凍てつけ!」
スノーグラウスの呪文が飛び込む。すると、今まで交戦中で行く手を阻まれるだけだった敵の拠点へと氷の道が出来た。私はスノーグラウスを振り向いた。
「早く行け!」
「ありがとう!」私は短く返事をし、足元にいる子どもたちを見やる。「イウニ、セネト、マホガニーとツルギから離れないようにね」
「分かってる!」
「うん……!」
イウニとセネトは、マホガニーとツルギがいないと戦闘が出来ない特性だった。だがラズハには彼らの力も必要だった。
「お守りしますっ」
マッドグリーンは常に流れ弾や振るわれる武器から私たちを守り続けてくれている。マッドグリーンの盾が間に合わなくなる時は反対側にいるロゴスがカバーしていた。
「作戦通り、あそこから侵入可能そうだな」
ロゴスが目で指す方向にはトイフェルへの出入口が。普段使われていない非常口で、なぜかあまり護衛が少ない部分で兵士たちが良くサボるところらしかった。この情報はブルーグラスから聞いたものだ。
「急げ。この辺りは気温が高い。スノーグラウスの氷もすぐ解けるだろう」
先頭にはケルシーがいる。普段医者として活動している彼女の手には黒い剣が握られていた。それ程、彼女の本気度が高いものだと思われた。
「頭をやればこっちのもんだ!」
その時、敵の一人が上空から飛びかかってきた。狙いは私だった。私には全く戦闘の動きが出来ない。私は半歩後ずさって敵の攻撃を受け入れようとしたが、次に聞こえてきたのは向こうの悲鳴だった。
「うわぁああっ!!」
ドサッと私の足元で敵が倒れる。
「俺の目には見えているぞ」
私より後方でクロスボウを構えていたトターだった。
「ありがとう、トター」
私が感謝を伝えると、トターは何も言わず頷きだけ返した。今はゆっくりと話している余裕はないからだ。
私は皆が切り拓いてくれる道を駆け抜け、トイフェルの拠点へと急いだ。上空で轟音が聞こえたと思いきや、もう一艦が近づいてきてスノーグ戦隊とホーン戦隊と交戦を続けていた。この戦いで味方が何人負傷してしまうのだろう。私はついそんなことを考えてしまう。
「ここは任せて、ドクター!」
そんな私の考えを読んだかのようにブラックローズが声を掛けてきた。ブラックローズはジェイの肩に担がれながら医療用アーツユニットを振り回している。
「よろしく頼みやした、大将」
ジェイの言葉は短かった。片手に包丁を持ちながら、この戦場唯一の医療オペレーターを護衛している。ジェイの任務はブラックローズを守りながら走り回り、医療アーツを味方に掛かるように常に動き続ける特殊兵「行商人」を活かした作戦となっていた。
「そっちこそ、頼んだよ」
私はジェイに言葉を返し、ケルシーに促されるままトイフェルに侵入した。マホガニーはイウニと共に既に中の兵士たちも倒していて、ツルギは恐らくセネトを連れてどこかへと潜伏したのだろう。
私は後ろの騒然とした戦場を一度振り返り、拳を作った。この戦いを無駄にしないためにも、私は無事に彼らを連れて帰らなければならない。意志をますます固めて、私はトイフェルの拠点へ踏み込んだ……。