「行ってくる!」
そう言って真っ先に飛び出したのはマホガニーだった。
「あたしも!」
次にはツルギも飛び出し、私は二人をすぐに追いかけようとした。
「待って、マホガニー、ツルギ!」
「待て、ドクター」
私を止めたのは、ロゴスだった。見るとマホガニーとツルギは、イウニとセネトも連れて行っている。
「彼らの指揮はどうするのだ?」
ロゴスはそう言って周りを見渡した。目覚めたばかりのオペレーターたちは皆、困惑したり暴れたり、中には不安で泣き出す者もいた。私は彼らを宥め、連れて行かなければならない。
だが、ソーンズとレッドは意外にも落ち着いていた。ソーンズは元からそういう性格だったのだろうが、レッドは不安そうに耳を垂れ下げてはいるものの、何も言ってこない。感覚的には何かに気づいているのかもしれない。
マホガニーとツルギのことも。
私はソーンズに言われて託された、あの時の赤ちゃんだった双子たちを思い出していた。マホガニーとツルギを任せられたのは私だ。私は、彼らを放って置くことなんて出来ない。
何より、状況が分かり始めたソーンズとレッドになんて説明をすると?
「ロゴス、ついて来てくれるかい?」
私がそう問うと、ロゴスの羽衣が揺れた。周りは騒然としながらも、ケルシーやレオンハルトがバラバラなオペレーターたちをまとめ始め、撤退の準備に取り掛かっていた。
「ついて行こう」
瞬きをするくらい短い間があって、ロゴスは頷いた。
私は、あとは頼んだとケルシーを一瞥して部屋を出た。すると、ペッローの大男もついて来た。
「オレも行きます」
マッドグリーンだった。
「ありがとう」
私はマッドグリーンの同行も許可し、階段を上がった。すでにエレベーターは機能していなかったのだ。見える景色はどこかしら壊されていて、この艦がまだ飛び続けているというのが不思議なくらいだった。
向かった先は中枢制御室。きっとマホガニーとツルギは、その制御室に向かったのだと思った。彼らは本気で取り戻そうとしてくれている。ロドスという艦を。その制御室に待ち構えているだろう人物も、きっともう予想がついているはずなのに。
(マホガニー、ツルギ……)
イウニとセネトは、短い期間で彼ら双子について行く体力と技術をすっかり身につけていた。もしかしたらイウニとセネトはマホガニーとツルギを追いかけたのかもしれないが、どちらにせよ四人はまだ子どもで、失うにはあまりにも若過ぎる年齢であった。失いたくない……失いたくない!
ドドォ……!!
あともう少しで中枢制御室というところで、目の前から爆音が響いた。足を止めた私をロゴスに後ろから包まれるように掴まれて、前でマッドグリーンが盾を構えた。あとは謎の爆発に巻き込まれて、私はただただ後ろに倒れるだけとなった。
「わざわざこのトイフェルに乗り込んだ輩だからと、どんな屈強な兵かと思ったら」声が聞こえた。「こんな小さな子どもとはのう! ワラワも舐められたものじゃ……」
「うっ……」
見上げた先に、絶望の光景が映り込んでいた。
そんな、まさか……。
「マホガニー!!」