ロドスだったトイフェルの拠点は、ほぼ壊滅した。
だが今回の作戦で戦死者は一人を除いて誰もいなかったのだという。私はオペレーターたちに誰も殺してはならないと指示は出していたが、やむを得ないことも考慮はしていた。
それは、ゼロたちが自分の仲間であるコピー人間たちを捕まえるだけにして収めたのもあり、コピー人間ではない敵の兵士たちは、カジンが引き連れて逃げていたので誰も命を落としていなかったのだ。間もなくカジンはスノーグラウスに捕らえられて逃げ切ることはなかったようだが。
ただ、あのあとアイディーはパラレルを連れてラズハを離れてしまったので、彼女たちの行く末を誰も知らない。捕まったカジンから話を聞いても、
「俺たちは本当に世界征服を目指しているんだと思っていたからさ」
としか答えず、彼女たちの行動の理由までは不明のままとなった。
「ありがとうございます、サンドレコナーさん!」
そして、サンドレコナーは任せていた通り、トイフェルが無差別に誘拐し続けていた医者たちの発見をし、多くの人たちに感謝をされていた。しかしサンドレコナーは冷静に、私は任務を全うしただけと返すだけだった。
「大将」
私は、瓦礫と化したトイフェルの拠点だった物の前に立ち尽くしていた。そこに声を掛けて来た人物がいた。
「ジェイ」
ジェイだった。
「ウチもいるよ〜」
ジェイの足元にはブラックローズもいて、手には白い花束を抱えていた。ラズハとして各地で医療支援をしていた時、ブラックローズが弔いの意で皆に分け与えていた花だった。
「これ、マッドグリーンさんに」
ブラックローズに花束を手渡され、私はありがとうと受け取る。綺麗な包み紙に黒いリボンが結んであった。それだけで涙が零れそうだった。
「……ありがとう、マッドグリーン」
私は瓦礫に花を手向けた。
マッドグリーンの遺体は、見つからなかった。瓦礫の真下で無惨な形となっているのだろう。私は、悔やんでも悔やみ切れない感情に、ただただしゃがみ込むことしか出来なかった。
「「ドクター……」」
声がして振り向くと、そこにはマホガニーとツルギがいた。本当はもっと両親のそばにいたいだろうに、私のところに来てくれるなんて、彼らの優しさにとうとう涙を流した。
「ごめ……」
「謝らないでよ、ドクター」私の言葉を遮ったのはマホガニーだ。「誰も悪くないって、ドクターならそう言うだろ?」
「ドクター、頭撫でてあげる」
そしてツルギからは頭を撫でられ、私の髪の毛はくしゃくしゃになったと思う。ありがとう、二人とも。ここで謝ったら、マッドグリーンが命懸けで守ったセネトが悪くなってしまう。
誰も、悪くない。もし悪者がいるんだとしたら、それこそこのテラ自体が悪い。私たちはそのために、ずっと戦って来たのではないか。
「……行こう」
私は涙を拭いて立ち上がった。マホガニーとツルギは自然と手を繋いでくれる。双子の手は、やはり小さい。
あー、助けられたんだな、私は。この小さな双子たちに。
私は、誰に話し掛けるでもなく空を仰いだ。