双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

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その後

 

 その後、六年間眠っていたオペレーターたちの検査やカウンセリングを経て、やはりほとんどの人たちは記憶喪失であった。

 自分の名前までは辛うじて覚えているのだが、自分の出身地や過去の出来事、また酷いと文字の読み書きが出来なくなっているオペレーターたちもいて症状の程度は個人差があった。

 とりあえず私たちは、彼らに契約書を見せてロドスのオペレーターであることを説明し、記憶喪失後のケアもするということでこのままラズハで預かることとなった。中にはラズハを出て行く人もいたが、症状によっては許可を出した。

「父さん……」

 エアースカーペはというと、不思議なことにレオンハルトの護衛だったという記憶まではあったのだが、やはり自分に子どもがいたということまでは覚えていなかった。スノーグラウスが不安げに父親を呼んでいたのを私は遠巻きで見守っていた。

「話は聞いた。俺に息子がいたんだな」エアースカーペがスノーグラウスに言った言葉だった。「俺は何も覚えていないが、それでも俺が父親でいいのか?」

「もちろんだよ!」

 スノーグラウスは嬉しそうに耳をパタパタさせていた。エアースカーペは、記憶がないというのに、スノーグラウスをほぼ自分の息子と認知したのだ。

「そうなると、アンタの母親は誰なんだ?」

「それは……」

「私らしい」

 会話を蚊帳の外で見守っていたフリントが父子に近づいていった。エアースカーペは動揺したのか、スノーグラウスとほぼ同じ色をした耳をピクリと揺らした。

「こんなにデカくなっちゃったんだが、その……」スノーグラウスは少し口ごもる。「時々でいいから、頭を撫でて欲しい」

 本来もっと甘えたかった六年という空白期間。

 スノーグラウスは照れた様子だったが、フリントの回答は一言だった。

「そんなんでいいなら、いくらでも撫でるぞ」

 フリントの性格はあまり変わっていないみたいだ。

「親というのは、頭を撫でるだけでいいのか?」

 エアースカーペが不思議そうにスノーグラウスに聞いた。スノーグラウスはちょっと恥ずかしいのか、うんともすんとも言えずにキョロキョロしたが、エアースカーペの顔が綻び、分かったと頭を撫でていた時は微笑ましかったな。

「痛っ……父さん、それ漏電してるんじゃ……?」

「ん?」

 エアースカーペは自分の漏電する武器のことまでは忘れていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の息子がループスとはな……」

 ソーンズはというと、自分の子どもがいたことだけでなく、出身のことも、自分が薬学研究者だったことも忘れている記憶障がいを抱えていた。基礎的なことまでは覚えているようだが、記憶喪失とは本当によく分からないものだ。

「パパ、僕が息子だと困る?」

 と聞くマホガニーは、ソーンズの両腕に抱えられていた。ソーンズも自分に子どもがいたことを受け入れ難いところがあったようだが、マホガニーが懐いていることは不快そうではなかった。

「困るも何も、困る要素が思いつかないな」

 とソーンズが答えている辺り、おおよそ受け入れているらしい。

「レッドがママで、ソーンズがパパ……」

 ソーンズの隣には、つかず離れずレッドがすり寄っていた。ソーンズはなぜか、レッドとは配偶者の類という曖昧な記憶はあるらしく、レッドの接近を許していた。レッドもソーンズのことは覚えていて、レッドの言葉いわく「安心出来る人」なのだそうだ。そのソーンズが許すなら、マホガニーとツルギがそばに来ても嫌な気持ちにはならないらしい。

「ツルギ、寝ちゃった……ソーンズ、どうしよう」

 レッドはツルギを片腕で抱えていてソーンズに助けを求めた。なんだかこの光景、六年前にも見たような。

 私はそんな彼らの様子を見守ったのち、ゆっくりとそこから立ち去った。

 

 

 

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