双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

126 / 127
一年後

 

 

「私が眠っていた間に、そんなことがあったんですね……」

 

 

 真横には、あまりにも美し過ぎる湖。私はアーミヤと並んで湖畔の波打ち際を歩いていた。

 

 

「ほんと、色々あったよ……」

 

 

 アーミヤに話しながら思い浮かぶ様々なことに、私は落胆なのか懐かしさなのか分からないまま息を吐いた。

 

 

「ドクター、ありがとうございます」

 

 

「え? 私は別に何も……」

 

 

「いえ、私が眠っていた間、ロドスを守ってくれていたこと、嬉しく思うんです」

 

 

「六年間は逃亡していたけどね」

 

 

「でも、ドクターは生きていてくれていたじゃないですか」

 

 

「そう、だね……」

 

 

 アーミヤはそのアーツのおかげか、あまり記憶障がいが残っていなかった。性格の変動もあまりなく、以前から変わらない彼女の言葉と意思に、私は泣き出してしまいそうだった。

 

 

「どうしたんですか? ドクター」

 

 

「ああ、いや……」

 

 

 私は足を止めて湖に視線を投げた。この湖は、アーミヤが眠っていた小屋があった場所付近だった。小屋は老朽化して跡形もなくなっていたが、ここは変わらず静かで人気がなかった。ここが自殺スポットであるというケルシーの話を思い出して、今頃パラレルはどうしているのだろうと考えてしまう。

 

 

「……思い出しているんですか? ドクター」

 

 

 アーミヤはアーツを使ったのか、それとも私がそんなに分かりやすいのか、そう聞いてきた。

 

 

 私は感情を抑えようと首を振った。

 

 

「この七年の間に、私は随分涙脆くなったようでね……すぐに泣き出してしまいそうになるんだよ」

 

 

 色んなことがあった。思い出すとこんなにも辛くて、悲しい。何よりあんなに真摯で優しいマッドグリーンに生きてアーミヤと会わせることが出来なかったのが悔しい。

 

 

 だけど、アーミヤが隣で柔らかく微笑んで。

 

 

「そういう時は、思い切り泣いていいんですよ。皆さんいますし、私もいますから」

 

 

 その言葉は、あまりにも優しかったから。

 

 

「ありがとう、アーミヤ」

 

 

 私はそれだけ答えて顔を上げた。

 

 

 テラは変わらず時間を刻み続けていて、風がそれを知らせるかのように私たちの頬を撫でた。私は、泣いてもいいのだろうか? もう何度も、泣いてきた気もするが……。

 

 

「おーい、そこにいる人たち!」その時、誰もいないはずの岸辺から誰かが走って寄ってきた。「そこで死ぬ前に、ちょっと僕たちに付き合ってくれないか? 悪いようにはしないからさ!」

 

 

「誰でしょう? あの方は……」

 

 

「赤毛のアダクリス……」

 

 

「知り合いですか?」

 

 

 このお話の続きは、またどこかで。

 

 

 おしまい

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。