「私が眠っていた間に、そんなことがあったんですね……」
真横には、あまりにも美し過ぎる湖。私はアーミヤと並んで湖畔の波打ち際を歩いていた。
「ほんと、色々あったよ……」
アーミヤに話しながら思い浮かぶ様々なことに、私は落胆なのか懐かしさなのか分からないまま息を吐いた。
「ドクター、ありがとうございます」
「え? 私は別に何も……」
「いえ、私が眠っていた間、ロドスを守ってくれていたこと、嬉しく思うんです」
「六年間は逃亡していたけどね」
「でも、ドクターは生きていてくれていたじゃないですか」
「そう、だね……」
アーミヤはそのアーツのおかげか、あまり記憶障がいが残っていなかった。性格の変動もあまりなく、以前から変わらない彼女の言葉と意思に、私は泣き出してしまいそうだった。
「どうしたんですか? ドクター」
「ああ、いや……」
私は足を止めて湖に視線を投げた。この湖は、アーミヤが眠っていた小屋があった場所付近だった。小屋は老朽化して跡形もなくなっていたが、ここは変わらず静かで人気がなかった。ここが自殺スポットであるというケルシーの話を思い出して、今頃パラレルはどうしているのだろうと考えてしまう。
「……思い出しているんですか? ドクター」
アーミヤはアーツを使ったのか、それとも私がそんなに分かりやすいのか、そう聞いてきた。
私は感情を抑えようと首を振った。
「この七年の間に、私は随分涙脆くなったようでね……すぐに泣き出してしまいそうになるんだよ」
色んなことがあった。思い出すとこんなにも辛くて、悲しい。何よりあんなに真摯で優しいマッドグリーンに生きてアーミヤと会わせることが出来なかったのが悔しい。
だけど、アーミヤが隣で柔らかく微笑んで。
「そういう時は、思い切り泣いていいんですよ。皆さんいますし、私もいますから」
その言葉は、あまりにも優しかったから。
「ありがとう、アーミヤ」
私はそれだけ答えて顔を上げた。
テラは変わらず時間を刻み続けていて、風がそれを知らせるかのように私たちの頬を撫でた。私は、泣いてもいいのだろうか? もう何度も、泣いてきた気もするが……。
「おーい、そこにいる人たち!」その時、誰もいないはずの岸辺から誰かが走って寄ってきた。「そこで死ぬ前に、ちょっと僕たちに付き合ってくれないか? 悪いようにはしないからさ!」
「誰でしょう? あの方は……」
「赤毛のアダクリス……」
「知り合いですか?」
このお話の続きは、またどこかで。
おしまい