「早く! こっちこっち!」
私たちは監獄を脱出し、急いでラズハに向かっていた。追っ手は相変わらずチラホラといて、マホガニーとツルギに任せていたがキリがない。ラズハ側にはクロージャが早く来いと手招きして待っていた。
「ドクター、無事か」
そこにスノーグラウスとも合流し、あとはラズハに戻ってここから離れるだけだと思いきや、敵が最終手段を取り出してきたのだ。
ドォン……!
岩の巨人だ。
私たちとラズハの間に放り込まれたのは、動きは遅いが攻撃がとてつもなく重いあの敵である。下手すれば気絶だけでは済まなくなる。スノーグラウスですらギリギリな相手だ。
「なんだよ、コイツ!」
「斬る……!」
マホガニーとツルギは目の前の巨人に驚きながらも攻撃態勢に入る。私は二人を止めた。
「ダメだ! 奴は物理攻撃はほとんど効かない!」
そうだった。双子たちにはまだ術攻撃のことを教えていない。
横のスノーグラウスはパレットソードを開いてはいるが、例え術攻撃が出来たとしても一人では無理だ。私は作戦で、何度もその戦いを目にしてきたから分かる。
「じゃあどうすれば……!」
マホガニーは焦っていた。その間にも岩の巨人はズシンズシンとこちらに近づいてきている。ツルギは不安そうに、私のコートの裾を掴んできた。
「あんたらは先に行け。俺が足止めする」
スノーグラウスはそう言って術攻撃の準備を始めた。周りの空気が冷え始める。彼のアーツが放たれる前兆だ。
「無理だ! いくらスノーグラウスでも奴の攻撃は……」
私は途中で言葉を切る。見ると追っ手はいない。岩の巨人は攻撃の範囲が広いからと、巻き込まれないように距離を置いているのだ。それは私たちに逃げる猶予を与えていることにもなる。
「凍てつけ!」
スノーグラウスの呪文が唱えられ、岩の巨人が凍りついた。逃げるなら今しかない!
「行こう!」
私は双子に呼び掛け、ロープを抱えたまま走り出した。きっと、スノーグラウスならなんとかなるはず! もう誰も失いたくない私はそんな淡い希望を胸に、ラズハへと急いだ。
パキパキパキ……!
後ろで氷が割れる音がした。今日は天気がいい。スノーグラウスにとっては相性が悪い。
「ロープを!」
私はロープをクロージャに任せ振り向いた時には、スノーグラウスは岩の巨人諸とも土埃に覆われて見えなくなっていた。
「スノーグラウス!」
私は引き返した。ここでお別れなんて嫌だ。引き返せば私は敵の思う壷だろうがそんなのは構わなかった。
土埃が晴れると、そこには山のような岩の巨人の背中があった。私は足を止めた。スノーグラウスは、岩の巨人の下敷きになってしまったのだ──
と思ったら……?
ガラガラと岩の巨人の体が崩れ、ただの石ころとなって私の足元に一部が転がってきた。どういうことか分からないでいる私に、ある人物の声が聞こえた。
「間に合った? あとから来るヒーローはこうじゃなくちゃね」
そしてウインクをする金髪のコータスが、高台で余裕そうに笑う。私は、彼の姿を知っていた。
「レオンハルト……!」
思わぬ登場に、私たちは助けられたのだ。