「すまないが今日は休診日だ……」
と言いながら私は席を立って扉を開けた。もしかしたら急患なのかもしれない、と先程警戒していたにも関わらずあっさりと扉を開けると、そこにいた人物に私は声を失った。
「久しぶりだな、ドクター。まさかこんなところにいるとは」
「ケルシー……」
彼女の姿は、あの時と全く変わらないまま私に冷ややかな眼差しを向けていた。
私は彼女の名前を呼びはしたが、次の言葉が思いつかないまま再会したケルシーを中へと招き入れた。そこには警戒深げにマホガニーがツルギを庇うような仕草をした。ケルシーの横顔が、わずかに緩んだ気がした。
「大きくなったな。あの二人によく似ている」
そう言ってケルシーはその場にしゃがみ、マホガニーとツルギの目線の高さに合わせた。ケルシーは私には冷たいが、医療部にいた子どもたちには人気だった。その理由がよく分かる。
「だ、誰だよ、お姉さん……?」
マホガニーがツルギを背中にそう聞いた。双子たちには常に、おばあさんでもお姉さんと呼ぶようにしろと言いつけてあったので、警戒しながらもマホガニーはケルシーをお姉さんと呼ばざるを得なかったのだろうと思う。今更ながら、私はよくちゃんと言い聞かせていたなと自分で褒めたい。
「教育はしっかりしているようだな」ケルシーは立ち上がり、こちらへ目を向けた。「戦いの方はどうなんだ」
私は、すぐには答えなかった。ケルシーがなぜ私のところに訪れてきたのか、そしてなぜそんなことを聞いたのか、だんだん分かり始めてきたからだ。
「オリジムシならよく倒すぞ! ぼくは強いパパの血が流れてるからな!」
だが子どもというのは無邪気なもので、そう簡単に大人の言う通りにはならないものである。マホガニーは木の枝を振り回すフリをしながら得意げにそう言った。
ケルシーの目が、もう一度私の方を向いた。
「先程からエーギルの方が喋っていないが、コミュニケーションに問題があるのか」
これもケルシーの質問だ。エーギルというのはツルギのことだろう。
「いや、問題はない」私はようやく答え、双子たち側に立った。「マホガニー、ツルギ、この人は私の大事な人、ケルシーだ。自己紹介してごらん」
「ぼくはマホガニー! 薬作りのお手伝いをしているんだ!」
真っ先に名乗ったのはずっとお喋りをしているマホガニーの方だ。今度は両手を腰に当てて胸を張った。
ツルギは、と私が彼女を見下ろすと、最近人見知りをするようになったツルギはモジモジしながらなんとか答えた。
「あたし、ツルギ。よろしくお願いします、ケルシーお姉さん」
「ほう」
ケルシーは相槌を打ち、私にちらりと目配せをした。双子たちの器量の良さにケルシーも不満ではなさそうだ。
「……それで、ここに来た理由は?」
私はケルシーに聞いた。ケルシーの鋭い目が私を貫くみたいだ。
「決まっているだろう。ロドス復興のためだ」