結果から話すと、子連れの商人には会いに行くこととなった。
もし街を牛耳っているのが本当なら、子連れの商人だけではなくその部下もラズハに受け入れられるとのことで、これもロドス奪還のためであると説き伏せられて決まったことだった。(といっても私は一つも反抗すらしていないのだが)。
その移動中、訓練室で特訓をしているマホガニーとツルギには、新たな先生がついていた。レオンハルトだ。
レオンハルトは術攻撃に詳しく、目の前で大岩を砕いて見せると特にマホガニーが自分もやりたいと興奮していた。ツルギもレオンハルトの言葉上手なのもあって術攻撃に興味を持ち、アーツの使い方を学び始めた。
「アーツか……」
「ケルシーも見に来ていたのか」
訓練室でアーツの適正検査を受けている双子たちに、ケルシーが見に来たのである。
「アーツの学習も必要だろうと思っていてな。いずれロゴスを迎えに行くつもりだったが」
「ロゴス? 生きているのか」
「もちろんだ」ケルシーは話し続ける。「冷却保存したエリアに呪術を掛けたのはロゴスだからな」
「それって……」
「そうだ。ロドスを奪還し、呪術を解くには奴の力が必要だ」とケルシーは話した。「あの双子たちにはより強くなって貰わないと困るからかな。そろそろロゴスを迎え入れ、早急に学びを強化しないと、ロドス奪還前に命絶えてしまうだろう」
「ロゴスは今どこに?」
「さぁな」
そう言い残し、ケルシーは訓練室の監察部屋を出て行った。あのような言い方はしているが、おおよそは「次の目的地」の話をしてくれただけなのだと思う。
ロゴスもこのテラのどこかにはいるのか、という安堵感と共に、私は例の彼女の名前がケルシーの口から出てこないことが気掛かりであった。私は、なぜか聞いてはいけない気がしていつも聞けず終いだった。
……アーミヤのことを。
レオンハルトの聞いていた街にやって来た。
街は龍門によく似ていて大きな建物が建ち並び、人々で賑わっていた。マホガニーとツルギは初めて見る都会に興味津々そうに辺りを見回していた。
「そこの子連れのお兄さん! ちょっと寄って行かない?」
派手な格好をした客引きなんかがいて、私は慌てて大通りから離れる。双子たちに、都会としての動きを教えて置かないと。
「いいかい? 都会はああやって世間知らずそうな私たちを誘い込んで金を騙し取る人もいる。気をつけるんだよ」
と私は双子たちに言い聞かせたが、いきなり言われても難しいかもしれない。
「嫌な人がいたら、爆発の薬使ってもいい?」
とマホガニーは言うし、
「嫌な人は斬る」
とツルギが言い出す始末。六歳にして戦場に引き込むと、こういう考え方になるのかもしれない。
「いきなり暴力を使ったら余計目立つからね」
そう。私たちがこうして親子のフリをしながら街を歩いているのは、子連れの商人探しのためであった。人探しのために大騒ぎを起こしたらますます目立ってしまうだろう。前のヘルザルド炭鉱監獄に関しては、劣悪な環境下で囚人が反抗して壊滅したという話で収まり、ラズハが関わっている話までは広がらなかったのは幸いのことではあったが。
そうして大通りを外れた静かな場所に出た私たちの耳に、ある一つの声が飛び込む。
「また子連れの商人が事件解決したって?」
それは、オープンテラスでコーヒーを嗜んでいる紳士たちの席からだった。
「そーそー。なんでも、イジメられていた女の子を助けたのが子連れの商人らしくて。たまたまイジメていたギャングの奴らが子連れ商人の敵だったらしくてさ〜」
「おかげでここら辺がそれなりに平和になるんだったらなんでもいいよなぁ、ハッハッハッ!」
そんな会話をしている人たちに、私は近寄って行った。
「その話、詳しく聞いても?」