「で、ジェイは本当に、子連れ商人でスラム街を牛耳っていたの?」
ラズハに帰った翌日の夜。子どもたちが眠った時間、私たちは食堂で囁かな酒席を開いていた。
「冗談はやめてくだせぇ、レオンハルトさん。子連れ商人なのは確かに認めやすが、スラム街を牛耳ってはいないすよ」
と言いながら夜食を提供するジェイ。ふぅん、つまんないなあとレオンハルトは夜食を摘んだ。
「ねぇ〜、それよりこれもうちょっとしょっぱくしてくんない?」
酒席より夜食目的だろうロープが、そう言ってジェイに文句を言った。ロープはすっかり元気になったようだ。レオンハルトとは真反対の席にいるのは気になるが。
「もうちょいしょっぱくすか。今やってみやすね」
ジェイはこの程度のクレーマー()には慣れているのか、そう言ってロープの夜食に味付けを足していく。私は手元のアルコールを一口含んだ。
「それにしてもジェイ。あの時どうして、私のことを助けてくれたんだい?」
私はジェイの屋台に勝手に逃げ込んだことを思い出していた。ジェイはあー、と宙に目を泳がせながら頬を掻いた。
「最初から、大将だとは気づいていなかったんすが、あの辺り、治安悪いんすよ」とジェイは話す。「けど、あの辺りを知らない観光客とかも迷い込みやすくて。あそこで屋台開いてると金も入るんすよ」
「……つまり、わざとあそこに屋台を開いて迷い込んだ観光客を助けていたのかい?」
「そうなるっすね」
ジェイは淀みなくそう答えた
「やっぱり、女の子助けるためにギャングを敵に回したのは本当ってこと?」
そこにレオンハルトが入ってきた。レオンハルトもその話は耳にしていたようだ。
「まぁ、そういうことになるっす」それからジェイは、優しい顔をして目を伏せた。「人助けなんてあまり意識したことなかったんすが、大将と出会って、ロドスに世話になって気づきやしたよ。人助けも悪くないなって」
そして、私はジェイを見つめた。相変わらず人相悪そうな顔はしているが、私にとっては頼りになるカッコイイオペレーターであることには変わりない。
「それもこれも、ドクターのおかげっす。ドクターが生きてて良かったっす、本当に」
私は、ジェイにそう言われて堪えてきたものがどっと溢れた。ずっと、後悔してきた。ロドスから離れたこと、みんなのことを助けられなかったこと。
私は自分を自分で責めることしか出来なかった。ただ預かったマホガニーとツルギを育てることにしか自分の生きる理由はなかった。
「こっちこそ……本当に、良かった……」
涙声でぐしゃぐしゃになってしまったが聞こえただろうか。私は俯き、零れる涙を擦って拭いた。
「大丈夫大丈夫! みんなで取り戻そ、ね?」
「そーだよ! 泣くことなんてないんだから!」
レオンハルトとロープに背中を撫でられ、私は少しずつ落ち着きを取り戻して行った。涙脆くなったのはきっと酒のせいだ。私はこの六年間、ちゃんと生きてて良かったと、今ここでようやく思えた。