ラズハは依頼があれば、枯れた大地にすら医療サービスの提供に向かう。
ラズハが次に依頼を受けたのは、砂漠地帯からだった。
とある砂漠で起きた天災は、現地の天災トランスポーターでも予想出来なかったとのことだ。あちこちで複数の落雷があり、死傷者や負傷者が出る中、避難を受け入れた国があまりにも重症者が多いと支援を要請してきたのだ。
最初、支援を受けてその国に来た時、私の後ろに連れている者たちがあまりにも若くてげんなり顔はされたものの、皆それぞれ出来ることを一生懸命やっている内に徐々に受け入れてくれた。特にスノーグラウスの評判は良かった。怪我には関係のない力仕事や子どもたちの相手をしてくれたことが高評価の決め手となったらしい。
「この人は、もう……」
一方で、助からない怪我人も多くいた。そんな時に心の支えになってくれたのが、七歳のローズだった。ローズはラズハで管理していた植物や花の一部を持ち出して、丁寧に弔ってくれたのだ。
「どうか安らかに眠れますように」
とローズは花を添えて。
ローズは、マホガニーやツルギと話している時は子どもらしい振る舞いをするのだが、悲しんでいる大人にはしっかりと対応するのだ。そのことについてジェイに聞くと、
「ローズは、よく来るお客さんの相談役もやってやしたから、自然と話の聞き役が得意になったかもしれないっす」
と言っていた。
「あら、ロープちゃん、この前はありがとねぇ」
「少ないけど、ロープちゃん、これ食べるかい?」
ロープはというと、なんだかんだ年配者に好かれた。ロープも優しい人なので、困っている人がいると不器用なりに助けてあげることが多いみたいだ。
「あ、ありがとう……でもさ、ぼくなんかといたら……」
「母さん! ただで貰えるものは貰っちゃおうよ!」
謙虚なロープにはいつもネイルがそばにいたので、色々となんとかなりそうだった。
「……何よ。こっち見ないでくれる?」
と言うイネスは、いつも避難民たちの破れた服を直してくれていた。イネスもあんな態度だが手伝ってくれているし、何より裁縫が得意な人手がいないので地味に助かっている。
「ジェイさんの魚肉団子スープ、本当に美味しかったわ」
「また作りにきてくれよ!」
言わずもがな、ジェイの魚肉団子スープは避難民たちの人気商品ともなった。すり下ろした魚は食事が億劫になっている人にも食べやすく、それがスープになって提供しているから多くの人に受け入れしやすかったのだと思う。ボランティアということでジェイは金は取らなかったが、ラズハとしてはちゃんと見合った給料を払うつもりだ。とはいえジェイは大抵同じところにいるので、お礼として何か貰っているのは度々見かけた。でもやっぱり、皆口揃えて言うのだ。「最初は怖い人かと思った」ってね。
「わ、オリジムシだ……!」
そして、マホガニーやツルギは、もっぱら避難所の護衛をしていた。
「ぼくに任せて!」
「斬る!」
敵が現れた時に二人は真っ先に飛び出し、あっという間に倒し切る。ラズハの印象はますます良くなる一方だった。
「うーん……」
私は書類を眺めているレオンハルトの元に近づいた。レオンハルトは書類を見つめたままずっと難しい顔をして唸っている。
「何か分かったかい?」
私はレオンハルトに声を掛けると、見ていた書類を渡してきた。
「これ見て、ドクター。明らかにおかしいんだよ」
とレオンハルトが渡してきたのは天災の報告書だった。天災について疎い私だが、見る限りある一定の期間を持って天災は起きていたことが分かる報告書である。
「私にはよく分からないが……」
「ここの避難民たちを襲った天災のことだよ」とレオンハルトは最新の天災日を指差した。「普段なら、この辺りの天災は一ヶ月ごとに来るはずだった。といっても、多少のズレは生じるから天災トランスポーターがいるんだけど」
レオンハルトがまた別のところを指差した。そこには、天災トランスポーターの名前が記されてある。
「最新の天災報告書だけ違う人が書いている。これっておかしくない?」
「まさか、天災は偽造だったと?」
私はそう聞いたが、レオンハルトはイエスともノーとも答えなかった。ただ意味深そうな顔をして私から離れ、スノーグラウスを呼び寄せた。
「天災があった現地に行きたいんだけど、護衛お願い出来る?」
「俺は構わない。ドクターも来るのか?」
レオンハルトの急なお願いにもスノーグラウスは嫌な顔一つしなかった。スノーグラウスは私を見上げる。私は、レオンハルトに目を向けた。
「確認しに行こうよ、ドクターも」
レオンハルトは言い、私は頷いた。