「あの、サンドレコナーさん……そこにいるのは、本当にドクター、ですか?」
ラズハが停留している街角で、私はサンドレコナーとある人物を待っていた。すると建物の影で顔だけ出してこちらにか細い声を向ける女性がいた。金髪に茶色が混ざるフェリーンの女性だった。
「私が嘘を言う価値はないだろう。間違いなくドクターだ」
とサンドレコナーが声を掛けると、そのフェリーンの女性がもじもじと出てきた。そうして初めてちゃんと見た時、大人になったな、と私は思った。身長も伸び、胸には豊かな膨らみがある。
「ムース」
私が呼び掛けると、ムースはビクリと肩を震わせた。
「あ、あの、ムースにはあまり近づかないで下さい……その、左腕が……」
ムースは隠すように左手を背中で隠した。彼女は鉱石病で、左手は特に顕著な症状が出ていた。ただ、ロドスにいた時はその進行を抑えられていた。ロドスが、あった時は。
「ドクターにちゃんと診てもらえ」
焦れったいと思ったのか、サンドレコナーがムースの右手を引いてドクターの前まで連れて来た。ムースはそれでも左手を隠そうとしたが、袖の上からでも分かった。右腕と左腕の細さが違う。
「……診察室行こうか」
ここは人目もあるから、と私が提案すると、ムースはハッとして俯き、それから自分で左腕の袖をまくった。
ムースの左腕は、鉱石病の合併症が進行していてほとんどが真っ黒になっていた。六年の間でこんなに悪化するとは予想もしていなかった。それは、正しい薬が処方されなかったからと示しているようなものだった。
「すまないっ、ムース!」私は深く頭を下げた。「ロドスを壊滅に追いやった原因は私のようなものだ。そして六年間、生きていたにも関わらず、鉱石病の進行を遅らせる薬すら流通させていなかった私に、責任がある……」
「ち、違いますよ、ドクター!」ムースは慌てたように口を紡いだ。「ロドスがあんな風になったのは、ムースが……ちゃんと戦えなかったから……」
「敵は圧倒的な力と数で一気に押し寄せてきた。ムースのせいではないと、六年前から言い続けてきただろう」
しおしおと落ち込むムースに、力強い声でそう言ってきたのはサンドレコナーだ。
私は、二人が生きていたことは本当に嬉しくて仕方がないのだが、それより気になっていることがあってついこう訊いてしまったのである。
「それで……二人は付き合ってるの?」
すると、サンドレコナーとムースの視線が私に向けられた。
「そうだ」
「ムースと一緒にいてくれるって言ってくれました」
と二人は答えて。
え、結局どっちなの……?