結局、サンドレコナーとムースの関係は聞けず終いになったが、彼らの飼い猫「コハクレア」と共にラズハに受け入れることとなった。
ジェイやイネスもそうだったが、彼らはロドスで慣れているのもあり、書類手続きや艦での過ごし方はスムーズに進んだ。
そうして色々落ち着いた頃に、私は執務室にサンドレコナーを呼び出してゆっくりと話を聞くことにした。サンドレコナーの言い分はこうだった。
「ロドスはあっという間に戦火に飲まれ、恥ずかしながら数えられる程度の患者しか避難させることが出来なかった」とサンドレコナーは落ち着いた声音で、それでいて悔しさを滲ませるように話した。「そこに、最後まで戦っていたムースを見掛けた。私は避難するように指示を出したが、彼女は最後まで、あなたの安否を気にしていた」
「そうだったのか……」
ムースはよく、執務室に来ては構って欲しいとアピールをしてくる可愛い女の子だった。それは、彼女から私への愛情表現方法だったのだと思うと、もっといっぱい構ってあげれば良かったなって少し後悔する。それにしても、六年間であんなにも成長したムースには目を引いたが。
「……私は、ほぼ強引にムースをロドスの外へ連れ出した。なかなか大変だったが、そんなことは大したことではない」
とサンドレコナーが一旦言葉を切ると、その頭の上にあるカラクリ羽獣がゆらりと揺れた。彼の杖とカラクリ羽獣は、今も現役のようだ。
「ムースは、ずっと泣いていた。ロドスが跡形もなくなっても、私が帰るよう指示を出しても」
「それで、ムースはサンドレコナーのところに?」
私が聞くと、サンドレコナーは目を伏せた。
「私は住み慣れた砂漠の方に暮らそうとしていたが、妙な噂も度々耳にしていた」サンドレコナーは話し続けた。「ロドスの生き残りはいないか探している者たちがいると」
「それって……」
「それが敵の動きであることは私も把握はしていた。あのままではムースも危険だと思ってな。敵の目的は分からないが、ムースと共に旅を続けながら宝石商人をしていた」
なんだか重要なところだけ話を端折られた気もするがまぁいいだろう。今はそんなことを聞いている場合ではない。
「つまり敵……ロドスを襲った人たちは、ロドスの人間を探していたってことだね?」
「そうだと推測する」
サンドレコナーはしっかりと頷いた。
どんどんと分かり始めてきた事実が、線と線で繋がり出して、私は背筋がゾッとしてきた。サンドレコナーにも言わなければならないだろう。ロドスを襲ったトイフェルのこと、そしてそのトイフェルの目的のことを。
「サンドレコナーに見てもらいたいものがある」
私は、席を立った。