サンドレコナーから聞いた話は漏れなくケルシーたちにも伝えた。
そうなると急がなければならないことがハッキリとしてきた。トイフェルがロドスの人間を狙っているとなると、まだどこかで生き残っているオペレーターだった誰かが襲われる可能性がある。そのために早くロゴスを探し出したかったが、サンドレコナーのように移動しながら生活しているとなると、それは想像以上に困難を極めた。
そしてもう一つ。目的がハッキリしたことがあった。
ロドス襲撃時、たまたま外勤任務中だったり休暇中だったオペレーターたちを情報として細かく出すことに成功した。その中に確実にロドスの人間であるとトイフェルにバレていてもおかしくない目立つ人物が出てきたのだ。
プラマニクスだ。
プラマニクスはロドス襲撃事件の時、宗教に関する行事があるとかなんとかでイェラグに帰っていたのだ。彼女は宗教団体のリーダーである。彼女は目立つし、いずれトイフェルがロドスにいたと分かれば命を狙うかもしれない。
コンコン……。
執務室の扉がノックされ、どうぞと返事をすると、ぬうっと私の目の前で白い誰かが入ってきた。
「ドクター。今日は護衛も兼ねてここにくる任務だったよな」
と言いながら入ってきたのは、声からして間違いなくスノーグラウスだった。だけど彼の長いコータスの耳は、いつもは黒いはずなのに今は真っ白となっていて、私は返事が出来ずにいた。
「どうした、ドクター」
白耳となったスノーグラウスがなんてことはないと言うかのようにこちらに質問を投げてくる。いやいや、どうしたと言いたいのはこっちのセリフだ。
「スノーグラウス、耳も髪も白くなってるよ……?」
と私がなんとか言うと、スノーグラウスは「ああ、そうだった」と呟いて自分の垂れた耳に触れた。
「いつからだったか、俺は寒くなると白い毛に生え変わるんだ。ケルシー先生に聞いても困るような病気じゃないらしいから、このままにしている」
「へぇ、そうだったのか……」
確かに冬毛になるオペレーターはかつてのロドスにもいたけれど、黒から白になるのはかなり変わり過ぎていて目立つ。それに……モフモフしているし。
「……ドクター?」
またしてもスノーグラウスは不思議そうにこちらを見つめてくる。空色の瞳に白い髪が、まるで冬空を体現しているかのようだ。
「あの、スノーグラウス……」私は一旦言葉を切る。「ちょっと、頭撫でていい?」
思い切ったことをつい訊いてしまった私だったが、スノーグラウスはその耳をパタパタさせて優しく笑った。
「いいのか? 撫でて欲しいな」スノーグラウスは嬉しそうだった。「よく母さんに撫でてもらっていたんだ。父さんは耳を触られるのを嫌がったから……ドクター、こっちも撫でてくれ」
思っていた以上に撫でられることが好きらしいスノーグラウスに私は逆にドキマギしながら、スノーグラウスのモフモフな冬毛を堪能する。スノーグラウスはもっと撫でて欲しいと甘えるように私の手の平にぐいぐいと頭を押しつけてきた。こうして見ると、スノーグラウスも子どもなんだなぁと思う。大人びていてクールだが、彼は八歳の時に両親と関わることが出来なくなっている。そう思うと、私はちゃんと彼のこと甘やかさなくてはな、とスノーグラウスの頭を撫で続けた。何より冬毛でモコモコになったスノーグラウスの耳の触り心地がいい。エアースカーペも、耳だけは触られるの嫌がったもんなぁ。
と考えている間に、またノック音が聞こえてきた。