「ドクター、連れてきたよ!」
「マッドグリーン、こっち」
と執務室に入ってきたのはマホガニーとツルギだった。
「シ、シツレイ、シマス……」
マホガニーとツルギの後について来たのは、マッドグリーン。マッドグリーンはまだ言葉を流暢に話せないものの暴れることがなくなり、文字の読み書きも出来るようになっていた。そこで私はマッドグリーンの待遇をどうするか、と何度もケルシーと話し合い、スノーグラウスが付き添い出来る時に執務室にならいてもいいということになったのだ。そのためにスノーグラウスは今日は私の執務室に護衛という形で来ることとなった。何かあった時のためだ。マホガニーとツルギもついているが、念の為である。
そうして、ラズハがどんどんと寒い地域に近づいてくると、マホガニーとツルギが唐突に窓に駆け寄った。
「あ、雪が降った!」
「雪……不思議……」
双子たちにつられてマッドグリーンも窓に近づいた。窓からは、確かに雪が降り始めている外の景色が見える。次の目的地であるイェラグにはもうすぐで着くだろう。
「ユキ……キレイ」
マッドグリーンはカタコトで呟く。マッドグリーンはおおよその言語を取り戻していたが、今までどこにいたとか、何をしていたのかなど、自分では分からない様子だった。脳に損傷がある訳でもなかったが、恐らく記憶喪失なのだろう。
そんな彼らの半歩後ろの方で、スノーグラウスが不意に話し出した。
「雪……たまに両親と共に雪のある街に出掛けたことがある」とスノーグラウスが言う。「俺が父さんのようなタレットソードが欲しいと言ったから、あちこちの店を練り歩いていたんだ。だが、俺はどうしてか物心ついた時から、アーツユニットを凍らせてダメにしていてな」
それからスノーグラウスも窓に近づいてきて懐かしむように目を細めた。
「色々探したが良さそうなものはなかったんだ。俺がワガママを言ったからだろう」それからスノーグラウスはこちらを……マホガニーとツルギを見やった。「それで父さんは、俺に合うような武器をソーンズに相談したと言っていた」
「「パパに?」」
マホガニーとツルギはそう言ってスノーグラウスを見上げた。それは私も初耳だ。
「このタレットソードがどこの物か分からないが、俺は十五になった時、ロドスに行くと決めていた。その時に、ソーンズに感謝をしようと思っていた」
「そうだったのか……」
確かに、ソーンズは武器に関しても詳しいところがあった。変わったアーツユニットがあると、技術部の者がソーンズに相談しに行くくらいだったし。
「やっぱり、パパはカッコイイんだな」
とマホガニーは言い、
「ママもカッコイイよ」
とツルギは言った。スノーグラウスは優しく笑み、双子の前でしゃがんだ。
「そうだな。間違いない」
スノーグラウスはくしゃくしゃと双子たちの頭を撫でた。私はマッドグリーンの様子を伺う。出来れば彼の家族の記憶も、取り戻して欲しいなと私はコピー人間にもそう思った。