「敵襲だ!!」
パーティ会場の警備隊が声を荒らげ、煌びやかなだった場所はあっという間に戦場と化した。
「傲慢な貴族たちに成敗を!!」
と言いながら武装してきた兵士たちが流れ込んできたところ、賊たちの襲撃のようである。
「ドクター、こっちだ!」
いち早く避難経路を探し当てたマホガニーに手を引かれ、私は賊たちから逃げようとする。先程まで無邪気そうにケーキを食べていた子どもとは思えないくらいの切り替えようだ。
「ドクターだとぉ? 丁度いい! 医者は高く売れるぞ!」
そこに賊の一人が飛び出してきてあっという間に私たちの前に回り込んできた。マホガニーは懐に手を突っ込んだ。
「ここはあたしに任せて」
と言うなり、ツルギが手の平を前に突き出す。すると賊が見えない衝撃に弾き飛ばされて吹き飛んだ。ツルギのアーツは、近くにアーツユニットがあれば物や人を吹き飛ばすことが得意となっていた。
「追え! あいつは医者だ!」
しかしやはり賊は何故か「医者」にこだわり、私たちは執拗に追いかけられた。早く外に出なくては、後から来た賊に囲まれるかもしれないのに……!
「ドクター、ツルギ! 口閉じて鼻を塞いで!」とマホガニーがとうとう奥の手を使い始めた。「これでも食らえ!」
そう言ってマホガニーが懐から出したのは一つの蓋付き瓶。武器の持ち出しが禁止のパーティ会場で、飲み物の瓶と見せかけたマホガニーの危険な薬だ。
「な、なんだこれは?!」
「ただの煙幕だろ! 進めー!」
バタバタバタ!
賊たちが毒の煙で足止めされている間に私達は走った。マホガニーが言うには、裏口から外に出られるということだったが……。
「ドクター!」
裏口から飛び出すと、そこは屋敷の庭であった。ツルギが飛んできた矢を素手で鷲掴みにしなければ、私は敵の狙撃手にやられていたことだろう。
「アイツだな!」
次には、マホガニーがもう一つの小瓶を放り投げて屋根の上にいた狙撃手を倒した。ここから余裕で四メートルはあるはずだが、あの高さに届くマホガニーの腕力が恐ろしい。
賊も撒いたようなので、とにかくここから離れようとした時、一つの悲鳴が聞こえた。
「ひぃ、許してくれ!」
逃げ遅れた誰かがいたのだろうかと振り返ると、外に出ようと転んだのかあのちょび髭男……アウトロー企業の社長が敵に迫られていた。
あんな嫌な奴は見捨ててもいいが、助けたらいい交渉相手になるかもしれない。私のそんな卑怯な考えが浮かんだのだ。
「マホガニー、ツルギ、あの人を助けよう」
「「分かった」」
私たちは出口から引き返した。マホガニーが敵にドロップキックをお見舞いし、ツルギがちょび髭男の手を引いた。まだ怯えている男に、私はこう言ってやった。
「私の護衛、強いでしょう?」
そこでようやく男は私と目が合い、バツが悪そうに視線を逸らした。
「あ、ああ、そうだな。だから早く助けてくれ!」
男は必死だった。
「こっちだ!」
あとから来る敵をツルギはアーツで吹き飛ばし、先導のマホガニーについて走ってパーティ会場を抜け出した。だが、まだ追っ手がいる中、どこへ逃げようか思案している時にスノーグラウスが飛び出してきた。
「凍てつけ!」
その後は私たち含め、パーティ会場にいた者たちは全員ラズハに避難したことでなんとか助かった。スノーグラウスのそばにいたことで、ツルギのアーツの媒介としていたペンダント型アーツユニットは凍ってダメになってしまったが、命ある方が大事だからそれくらい大丈夫だろう。