a.m. 0:00 天気/晴天
小屋に近づいた部隊たちは、半数は裏側へ、半数は正面へと分かれて行動していた。
カラクリ羽獣が小屋の隙間からパタパタと出てきた。それを回収したサンドレコナーは、カラクリ羽獣を通して分かったことをあらかじめ決めて置いたハンドサインで中の様子を伝えてくれた。それを見る限り、小屋の中の武装した兵士たちは寝静まっているらしい。
ただ気を付けなければならないのは、サンドレコナーがもう一つの部隊に三の数字を見せたことである。三人の見張りがいるようだ。
先行するムースが、小屋の裏口へと近づいた時、正面から誰かが出てきた。一人のサルカズ兵士……どうやら酔っ払っているのか、足元がフラフラしている。
そこにスノーグラウスのパレットソードの刃が飛んだ。彼のあの武器は風の音を聞くより難しく、早い。フラフラしていたサルカズ兵はあっという間に倒れた。
それをカラクリ羽獣を通して見ていたサンドレコナーが良しと見てムースに裏口を開けるよう指示を出す。裏口はあっさり開いた。
ムースが振り向くと、すかさずマホガニーとツルギも近づいてきた。彼らは小さくて身軽だ。先に潜入してもらい、小屋の詳細を確認してもらう。
私は何も出来ないので彼らの様子を遠くで見守ることしか出来ないが、ずっと緊迫した状態で息が詰まりそうだった。
もし、小屋の中で不足の事態になったら……。
良からぬ考えが浮かんでは消し、私は彼らが行う次の動きを見守った。
マホガニーとツルギが小屋に入ったと同時に、ロープとネイルは屋根によじ登っていた。もしもの時に奇襲を掛けられるようにだ。
その間に、予定外で外に出てきた酔っ払いのサルカズ兵をスノーグラウスは小屋から見えないところまで連れて隠し、そこでジェイが正面扉の方をノックした。
「すいやせん、水産の商人なんすけど」
なんてジェイは言ったかもしれない。とにかく突然の訪問者のように装えばなんでもいいと私が言った時、じゃあいつものセリフを言うっす、とジェイが答えていたのを思い出す。
案の定見張りの一人であろう兵士が武装したまま出てきた。ジェイは何か言いがかりをつけて小屋から外へ連れ出し、スノーグラウスの攻撃範囲内まで案内する。それからはお察しの通りだ。
そうこうしている内に、裏口側にいたムースとサンドレコナーも小屋の中に入ったようである。遠目の私から見ると何事もないかのように静かだった。
「……心配ですね」
私の護衛として傍らにいるマッドグリーンがそう言って小屋を見つめ続けていた。マッドグリーンも一応ある程度の戦闘は出来るというのは分かっているが、昼間のことのように精神的ショックを受けて事態に対応出来なくなる可能性もあった。だから私のそばにいる。
やがて、屋根の上で待機していたロープとネイルも、小屋の屋根を打ち破って中に入って行った。どうやら戦闘が始まったみたいだ。
その内にわらわらと兵士たちが正面から流れ出し、それらを待機中のスノーグラウスとジェイが倒す手筈となっていたが、そこで「様子がおかしい」と言っていたものを私は目にすることとなった。
まず兵士だと思っていたソイツらは、皆ボロボロのシャツに擦り切れて破れたズボンを履いていたのだ。装甲を身につけていないとは兵士にしては軽装過ぎる格好。そして足元は常に覚束ず、酔っ払っているという次元ではない程フラフラしながら武器だけを手にしている状態だった。
次には誰もいない空間や地面に武器を振り回し、なぜなのか銃すらも鈍器のように使って構える素振りすらしない。スノーグラウスもジェイも戸惑っている様子だったが、流れ弾などが二人を襲ったので仕方なく迎え撃つ形となった。
そうして戦闘を繰り広げている中、マホガニーとツルギが、二人のサルカズの子どもを裏口から連れ出しているのを私は目視した。
私は立ち上がり、作戦は成功したことを伝えるための爆発する薬を手に取った。本当は煙幕とかがいいんだろうけど、ラズハにそんな金のかかるものはない。
その時だった。小屋から一際大きな男が現れたのだ。周りの装甲を身につけていない兵たちより大きな体のソイツが、山かと思ってしまう程に。
「お前ら、何をしている!! 侵入者を許すな!」
こんなに離れているのに、ソイツの声はまるで轟きのように響いて聞こえた。私は、爆発する薬を仕舞い、マッドグリーンを振り返った。
「……お連れします」
マッドグリーンは何を言いたかったか察してくれたらしい。私を丁寧に抱えると、小屋がより近くで見える地点へと急いだ。緊急事態だ。あんなのがいるのは把握していなかった。
「撤退しろーーーー!!!!」
私ははち切れんばかりの声で叫んだ──