大男の声により、今まで乱れるように適当な動きをしていた兵士たちが途端に動きを止めた。大男の声は続いた。
「大切なストレス発散が連れ去られちまったじゃねーか! ソイツらで発散させてやる! やれ!!」
兵士たちは男の声を合図に、まずはジェイに飛びかかった。ジェイは営業中の旗を振り回して敵をいくらか一掃し、後ろから迫ってきた相手には包丁の突きを差し出した。
「薄気味悪い奴らだな……!」
そこにスノーグラウスの刃が無数に降り注いで敵の脳天を突き刺したが、兵士はそれだけでは倒れなかった。敵たちは続けざまに武器を振り上げ、スノーグラウスの凍るアーツが辺り一面に広がった。
「ほう、術攻撃もするのか!」大男は声をあげる。「ならコイツらはどうかな!」
そうして男が何かの合図を出すと、小屋にまだ潜んでいたのか、細身の兵士が何人か出てきた。ソイツらは武器すら持っていない。
「そんな奴ら俺一人で……何っ?!」
スノーグラウスが、敵から放たれたロープのようなもので動きを封じられてしまった。アレに似たアーツを私はかつてのロドスの作戦内で見たことがあった。近くにいるジェイは他の兵たちに囲まれて助けには行けそうにない。私は、もう一度爆発する薬を握りしめたが、まだあの距離に届く程私の腕力がない。
「へぇ、袋叩き……それが君たちの目的かな?」
そこにレオンハルトの声が割り込んだ。と同時に周囲の粉塵が舞い上がり、一気に複数の敵が倒れた。
「まだいたのか!」
大男が怯んでいる隙に、スノーグラウスを拘束しているアーツ使いの敵に鉤爪付きの縄が飛んできた。
「こっちは精鋭部隊なんだよな〜」
「母さん、油断しないでよ?」
ロープとネイルだ。
彼女たちの鉤爪付きの縄がアーツ使いの敵を小屋の屋根まで引き上げられ、意識を失ったところで解放する。さすが母娘。息ぴったりだ。
「お返しといこうか」
動けるようになったスノーグラウスからの反撃。無数の刃がスノーグラウスの頭上に浮かび、一斉になって大男を狙う……!
「ま、待って!」大男はどさりと尻もちをついた。「降参する! なんでもするから勘弁してくれ!!」
スノーグラウスは動きを止めた。無数の刃が大男の喉元で止まっている。スノーグラウスのあの武器って、途中で静止することも可能なのか……。
「なーんてな! やっちまえ!」
「……っ?!」
一瞬でも気を緩めたのがいけなかった。先程までジェイの相手をしていた兵たちは皆、標的をスノーグラウスに変えて飛びかかっていた。私は爆発する薬を投げることを躊躇った。今投げたらみんなを巻き込んでしまうからだ。
「スノーグをイジメるな!!」
「許さない!!」
そこに飛び出してきた小さな勇姿は、紛れもなくマホガニーとツルギだった。見ると敵陣の脇にはサンドレコナーとムースも身構えていたが、手助けはもう不要のようだ。
複数人いた敵は全員倒れ、動かなくなった。ただ一人、大男だけが手を震わせてその場に座り込んでいる。
「今度こそ降参するか?」
スノーグラウスが問い詰めた。彼もあんなふうに怒ることがあるんだ。私はつい彼の横顔を見つめた。
「する! するから! てかなんで襲ってきたんだよ?! もしかしてソイツら、本当はお前らの部下だったのか?!」
本当に大男は降参したようである。