双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

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覚悟

 

 私はラズハに戻り、なんとなく皆の集合場所となっている訓練室へと向かった。

 そこには、ようやくラズハの入職手続きを終えたプラマニクスが、スノーグラウスに風と雪を巻き起こす不思議な現象を見せているところだった。プラマニクスの不思議な能力に、スノーグラウスだけでなく、マホガニーとツルギも目を輝かせるように眺めていた。

「話があるんだ」

 私はマホガニーとツルギを呼んだ。スノーグラウスは知っているだろうかと目をやっても、きょとんとした顔でハテナを返される。その内に私の心境を察したのか、スノーグラウスも近づいてきた。

「俺もついて行った方がいいか?」

 私は迷った。

「あー、うん……そうかも」

 私が曖昧な返事をしたからだろう。いつも決断力に優れるスノーグラウスは、ならついて行く、とはっきり答えた。私、今浮かない顔をしているのだろうな。足元のマホガニーとツルギに心配の眼差しが向けられている。

 私は、他に誰も使っていない適当な部屋に行って、マホガニーとツルギをそこら辺の箱の上とかに座らせる。スノーグラウスは扉の前に立った。何かあった時のための立ち振る舞いが自然と出来ているのだと思う。

「マホガニー、ツルギ、よく聞いて欲しい」

 私もダンボール箱に座り、話を切り出す。自分で思っていた以上に緊張していて私はつい沈黙を長引かせてしまう。

「マホガニーとツルギの……ココットとナギの両親についてだ」

 ココットとナギ。それが、マホガニーとツルギの本名であった。ロドスで出産したレッドは、ソーンズと相談して私に名付けを頼んだのである。そこにいるのは本名を明かしてくれたスノーグラウスしかいないし、打ち明けてもいいだろうと私は信じている。

「ソーンズとレッドは、他の多くのオペレーターたちと共にロドスの土台に眠っている。目覚めるのに五年は必要で、ロゴスの解呪と私の声で目覚めるようになっているようだ」私は何度も、ケルシーから聞いた言葉を頭の中で繰り返した。「冷却保存はどんな酷い怪我をしていても、ほとんど完璧に治療をする奥の手なんだ。きっと、目覚めた時には二人とも元気なんだと思う。ただ……」

 マホガニーとツルギを見やる。二人は私の言葉をじっと待っていた。

「記憶喪失になっている可能性がある」私は、とうとう言った。「ソーンズとレッドは、自分に子どもがいたことすら忘れているかもしれないんだ。自分たちが、ロドスでオペレーターをやっていたことも……」

 言葉が詰まる。これ以上は話せなかった。

 私は黙って口を閉じ、俯いた。すすり泣きすら聞こえてこない。

 最初に話し出したのは、やはりマホガニーからだった。

「なんとなくさ、そう思ってたんだ。な、ナギ」

「え」

 私は顔を上げる。

 そこには、いつもと変わらない顔の双子の顔があって。マホガニーはツルギをナギと呼んでそちらを向いていた。

 ナギは頷いた。

「ドクターがいない時、ココットと夜寝る前に話してた」ナギは思ったより大人びた声をしていた。「パパとママは、あたしたちのこと覚えてるのかなって」

 私の宿舎は、確かに双子たちと同じ部屋だったが、最近忙しくて宿舎にすら寄っていなかった。その間も、この小さな戦士たちは大人のいないところで考えていたのだと思うと、子どもの成長を感じる。

「でもぼくたちは変わらないよ」

「パパとママのところに行く」

 二人の意思は、変わらなかった。

「俺もだ」そこに、今まで話を聞いていただけのグラウスも賛同した。「六年経っているからな。背も伸びたし、俺のことが分からなくても仕方ないと思っていた」

 グラウスの六年前は八歳だった時か。それはそうかもしれない。

 グラウスは優しく笑った。

「これで覚悟がちゃんと出来た。色々悩んだこともあったが、話してくれてありがとう、ドクター」

「こっちこそ、ありがとうだよ……」

 私は三人を両腕で包み、泣きそうになるのをなんとか隠した。

 子どもたちは順調にいい子に育っているよ。早く会わせてあげたいな。

 私は、ロドスのオペレーターたちの顔を一人一人思い浮かべた。

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