「え、伝導アーツ?」
その日の夜。術攻撃に詳しいだろうレオンハルトを執務室に呼び出し、昼間訓練室で見た双子たちのアーツの話をした。
「伝導アーツってのは私が今さっき考えた名前なんだけど……自分の中にあるアーツ能力を、他人に伝えるアーツ術師はいるのかなって」
と私が言うと、うーんとレオンハルトは天井を見上げた。
「補助オペレーターみたいな職業っぽいけど、今まで攻撃をさせる補助なんてなかったよね〜、攻撃力を上げるとかならいるけど」とレオンハルトは言う。「でもまぁ、やれなくはないかも? アーツの適性が優れているとか……それに、サルカズの人たちって特にすごい術攻撃をしたりするじゃん? 今までロドスにはいなかっただけで、テラのどこかを探したらいっぱいいるかもね」
「そうなのか……」
私は落ち着こうと背中をソファに寄りかかる。ただ、レオンハルトはもう私の考えを読んでいたみたいだ。
「ドクターの考えてることを当てよっか?」
「え」
「イウニとセネトを、ラズハのオペレーターとして採用したいんじゃない?」
私は言い返せずレオンハルトを見つめた。レオンハルトは図星なんだね? と得意そうに笑みを浮かべた。
「……だけど、二人には戦う理由がないよね」
私は、彼らがまだ小さな子どもであることを改めて思い出しながらそう言った。私の唯一ぶら下がった感情から出た言葉だったのかもしれない。
「それは、二人に聞いてみてからでもいいんじゃない?」レオンハルトの声は明るかった。「言葉は話せるようになった?」
「いや……そもそもなぜかマホガニーが古代サルカズ語を覚え始めてずっとイウニと喋っているんだよ」
まるで大人に聞かれないように話しているみたいだ。
「へぇ、さすがソーンズの息子だね〜。言語の習得も得意なくらい頭がいいんだ」
「そう。特にマホガニーには薬の調合を手伝ってもらっていたし……」
「ますます父親に似てるじゃん」
「そうなんだよ……」
あのままソーンズみたいに育ったらどうしよう。ロドスを取り返しても、今度は部屋爆発の恐怖に晒されたりして。そんなふうに考えるとロドスの日常が懐かしくなって、苦しくなって。
「ドクター?」
私が急に黙り込んだからだろう。レオンハルトが心配するように呼び掛けてきた。
「ああ、いや、なんでもないよ……」
私は平気なフリしたが、ふとレオンハルトが立ち上がって、ぽんっと肩に手を置いた。
「ロドスに絶対帰ろ? ね、ドクター」
優しげなレオンハルトの眼差しに、私は心強さを感じる。そうか、レオンハルトもロドスに帰りたいのか。戦う理由は皆それぞれあるのだと気づいて、私は頷いた。
「そうだな。ありがとう、レオンハルト」
「俺は何もしていないけどなぁ?」
少年のように笑って、レオンハルトは執務室を後にした。