「いいねぇ、いいねぇ! 大っ嫌いだよ、お前のそーゆー目!」スノーグラウスと戦っている相手がケラケラと笑った。「ようやくロドスの墓って奴を見つけたのにさぁ、偶然お前たちがいるんだもん! ちょっとちょっかい掛けたくなっちゃってさ☆」
スノーグラウスと戦いながらそんな狂気じみたことを言う敵。なぜアイツが墓を襲ったのか分からないが、雷に見えるアーツは仕切りに墓石を狙っていた。それをスノーグラウスのアーツで守っているということだろう。
だが、あの敵……赤毛の女は遠隔で雷のアーツを使いながらスノーグラウスと戦っているのに少しも息を切らしていない。対してスノーグラウスは既に息を切らしていた。彼があんなふうに疲弊しているのは初めて見た。
「スノーグ!」
「あはは、何この子ども!」
「うっ……!」
そして、スノーグラウスを助けようとするマホガニーを一蹴りだけで遠くに吹き飛ばす。
「斬る!」
すかさずツルギも飛び出したが、同じく蹴り払いで吹き飛ばしていた。スノーグラウスと剣で交戦しながら双子たちの攻撃も見切って反撃しているところ、その女は只者ではないことが分かる。
「行きましょう。身共たちのことがここで明かされる訳にはいかないのでしょう?」
プラマニクスに裾を引かれ、私は、しかしそこから動けずにいた。スノーグラウスとマホガニー、ツルギにも撤退の指示を出さなくては。
「スノーグ、マホガニー、ツルギ! 余計な戦いはするな! 撤退しろ!」
私は三人に叫んだが、彼らは引き下がらなかった。
「墓荒らしを追い出すまで撤退しない!」
「ぼくも!」
「あたしも!」
あの墓に刻まれた名前に、三人の知り合いがいる訳でもない。そもそもロドスのことをほとんど知らないし覚えていない。彼らが戦ってくれるのは本当に有難いことだったが、同時にそれは自分たちがロドス関係者であると相手にバラしてしまうという危険を孕んでいた。
「ロープ、ネイル! 三人を無理矢理連れて行くぞ!」
そこで立ち尽くしたままだったロープとネイルに強行手段を命じた。ロープはすぐに反応した。
「OK! それじゃあぼくはあの二人を!」
ロープはそう言って愛用の武器を振り回し、あっという間にマホガニーとツルギを掴んで引き上げた。マホガニーとツルギは鉤爪付きの縄の中で暴れた。離してくれ、まだ戦える、と。
「スノーグ捕まえるなんて無理だし!」
しかしネイルはやってみる前からそんなことを言い出す。確かに、スノーグラウスの動きは早く、もし捕まえてもすぐ斬られる可能性があった。私はロープを見やる。
「二人でやるよ! ほら、構えて!」
ロープはネイルに声を掛けてスノーグラウス目掛けて試みるも、やはりするりと抜け出してしまう。そこに赤毛の女がケラケラと笑った。
「何? 仲間割れ? 何してんの!」
「気にするな。俺はボランティアで墓を守っている」
スノーグラウスはちらちらとこちらを見ている。明らかに、鉤縄から逃げるように戦っているようだ。
「ああいうところ、エアースに似てるなぁ」そこにレオンハルトがやって来た。「ちょっとだけ手助けしてあげるよ」
そう言うなり、レオンハルトは槍を突き上げた。レオンハルトのアーツに呼応して地面が盛り上がり、一瞬だけ赤毛の女の動きを止めた。
「これは……っ」それから赤毛の女はレオンハルトを見やって、「わお、有名人じゃん! 名前は、なんだっけ? まーそれも捕まえたあとから聞けばいいか」
と標的をレオンハルトに向けてきたのだ。
マズイ! と思った時には既に遅く、赤毛の女はレオンハルトに向かって大きく剣を振り上げた。しかしレオンハルトは余裕そうである。何か策でもあるのだろうか?
「カランドの祝福を!」
そこにプラマニクスのベルの音が鳴り響いた。異変に気づいた赤毛の女は、プラマニクスの攻撃範囲直前で後ずさった。
「何、お前の気色悪いソレ!」赤毛の女が言葉を吐く。「まぁいいや、僕はコータスの男を……」
「おい、離せ!」
レオンハルトとプラマニクスに赤毛の女が気を取られている内に、ロープとネイルはスノーグラウスを捕まえることに成功していた。スノーグラウスは鉤縄でぐるぐる巻きになったまま暴れている。
「ここで交戦する理由はない。撤退しよう!」
私はスノーグラウスにそう言って引き下がろうとした。まだ相手には私たちの正体には気づいていないはず……何かされる前に撤退しなくては……。
「きゃああ?!?!」
悲鳴。私たちは一斉になってある一点に注目した……。