私は四人を療養室に連れて行きしばらく休むよう指示を出して緊急手術室へ向かった。
手術室の前にはネイルが床に座り込んで蹲っていて、それを包むように両隣にはレオンハルトとロープがいた。
「スノーグラウスは……?」
私が三人に聞くと、レオンハルトが目で手術室前の赤い警告灯を指した。まだ手術をしているようだ。
「私が……弱いからだ……」すすり泣き声で、ネイルがぽつんと言った。「あんなに沢山いたのに、私が狙われたのって……弱いからだよね? ドクター」
「そんなことは」
ネイルが私を見上げる。顔が真っ赤に腫れていた。
レオンハルトもロープも、何も言わずに私を見つめた。レオンハルトはネイルの頭を撫で、ロープは寄りかかるネイルの支えになっている。片方だけ垂れているネイルの耳が、ますます下がっていた。
私は膝をついてネイルの目線の高さに合わせた。
「前に、スノーグラウスに言ったことがあってね。私は弱いんだって。そしたら、スノーグラウスはこう返してくれたんだ。あんたはずっとずっと強い。俺なんかよりって」私は、スノーグラウスに言われた言葉を昨日のように思い出していた。「だからきっと、スノーグラウスならこう答えるんだと思う。ネイルはずっとずっと強い。俺なんかよりって」
「そんなことないじゃん……っ」
そう言いながらネイルの瞳から涙が溢れた。でも、笑ってもいた。
「ふふ……スノーグらしいじゃん……もう、腹立つなぁ……」
スノーグラウスは腹が立つ程優しく、強い。それはいつの間にか、私だけではなく、ネイルも支えていたのかもしれない。
「信じよう。スノーグラウスは強いから」
その時、手術室の警告灯が消え、扉が開いた。出てきたのはケルシーだった。
「一命は取り留めた」ケルシーの声は相変わらず冷静だった。「だが、療養期間は長くなるだろう。看病はお前がやることだ」
「分かった」
そうしてケルシーは立ち去り、中にいたブラックローズが振り向いた。
「どーぞ。まだ眠ってるけど」
「スノーグ!」
ブラックローズの声で真っ先に飛び出したのはネイルだった。
私はそのあとをゆっくりとついて行った。ネイルはそっと、スノーグラウスの顔を覗き込んだ。顔に傷はつかなかったようだ。まるで眠っているみたいなスノーグラウスに、先程の戦いはなかったのでは、とさえ思えてくる。
「スノーグ……ありがとう」
ネイルが彼の間近で小さく呟いたのを聞いた。私はスノーグラウスを病室へ連れて行く準備をした。