双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

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看病と反省会

 

 スノーグラウスは三日間、眠り続けていた。

 私は適宜点滴を変えたり薬を調剤したりと度々スノーグラウスの元に訪れたが、ネイルはその間ずっと付きっきりだった。

 元々細身なネイルがどんどんとやつれ始めるので、ネイルに食事を勧めても返ってきたのは「食欲ない」だった。

「これなら食えるっすかね」

 食事を取っていないネイルに気を遣ってジェイが用意してくれたのは魚肉団子のスープのみのものだった。それなら辛うじてネイルも飲んでくれたが、栄養失調が心配だったのは変わらなかった。

「ん……」

 そして、四日目の朝。

 私が薬の交換をしていると、スノーグラウスが僅かに動いたのだ。私は咄嗟に、ベットの縁で寝ているネイルを揺すった。

「ねぇ、ネイル」

「ん……?」

 私の声に反応してネイルはのそりと起き上がる。瞼をこすったのち、ネイルはスノーグラウスが瞬きしたことに気づいたようだ。

「スノーグ!」

 ネイルは飛びつくようにスノーグラウスの顔を覗き込んだ。

「ここは……」

 呼吸器の向こう側でスノーグラウスの口が開く。数値は安定している。

「良かったぁ……」

 ネイルはスノーグラウスの傍らで突っ伏した。私が代わりにスノーグラウスの質問に答える。

「ここはラズハだ」

「ラズハ……」スノーグラウスは目を閉じ、深呼吸をした。「そうか……俺、生きているんだな」

 私は何度も頷いた。

「良かった……ネイルに告白しないまま死ぬのだけは嫌だったから……」

 え。

 反応はネイルと同じだった。ネイルは顔を上げ、スノーグラウスの顔をもう一度見つめる。

 しかし、スノーグラウスはまた眠ってしまったようで、それ以上何か言うことはなかった。ネイルが泣きそうな声で笑った。

「何言ってるのさ……ここ、ドクターもいるんだよ?」

 私は出来るだけ急いで処置と記録を終わらせ、病室を後にした。ネイルは、ずっとスノーグラウスの手を握っていた。二人の邪魔は出来るだけしたくなかった。

 病室を出た瞬間私の体から一気に力が抜け、通路のど真ん中で座り込んでしまった。どうやら私も心労を抱えていたみたいだ。スノーグラウスが目覚めて良かった。

「え、ドクター、そんなところでどうしたんですか?」

 そこに、丁度よくラズハ艦内を巡回していたマッドグリーンに支えられ、私はなんとか立ち上がった。マッドグリーン、君に話があったんだ。

「私を執務室に連れて行ってくれるか?」

「疲れているなら宿舎に行った方が……」

「君に頼みたいことがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はマッドグリーンに頼んで自分の執務室に向かうと、ある一枚の書類を手に取った。

「先日の戦いでスノーグラウスは重症を負った。これは指揮官の私のミスでもあるだろう」

「しかし、あれは予想外の戦闘だったと聞きます」

 皆、私のことを悪くは言わないだろう。だがケルシーは一喝するのだ。お前が迷わなければもっと被害が抑えられたと。

「そうだとしても、反省会は必要だ」いつかある人に言われたことを思い出しながら。「そこで、あの戦いで気づいたことがあるんだ。私たちには足りないものがある……それが、重装オペレーターだ」

「重装……?」

 マッドグリーンは首を傾げた。

「ロドスにあった職業名でね、オペレーターの戦闘スタイルなどに合わせて、それぞれの得意なことを活かせるように名前をつけて分けていたんだ」

「ああ、マホガニーさんが前衛で、ツルギさんが特殊というようなものですか?」

「そう、そういうこと」私はマッドグリーンを真っ直ぐ見つめた。「マッドグリーンには重装オペレーターをやって欲しいと思っているんだ。敵からの攻撃を一斉に受け続けて仲間を守る職業」

「やります」

 マッドグリーンは即答した。

「いいのかい? そんなすぐに決めて」

 自分で頼んで置いてなんだが、あまりにもマッドグリーンが迷わな過ぎてこっちが困惑してしまう。

 マッドグリーンの瞳に揺らぎはなかった。

「もちろんです。重装というものはオレはよく分かりませんが、恩人には助けられましたし、恩人の恩人である貴方も、オレにとっては大事な方なんです」

 ……ああ、私は、ちゃんとやれているんだな、と眉間に手を当てた。やはり私はこの六年の間で、涙脆くなったのかもしれない。

「……ドクター?」

「ああ、いや、すまない、なんでもないよ」私はもう一枚紙を差し出した。「マッドグリーンに重装の素質があるか適正検査をするから、まずはここに訓練室の使用許可に名前をくれるかな」

「分かりました」

 マッドグリーンは自分の名前を書いた。私が名付けた名前だが、マッドグリーンという文字が、ますますカッコよく見えた気がした。

 

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