双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

7 / 127
訓練

 

「俺のことを倒すつもりでかかってこい。分かったな?」

「分かりました、スノーグラウス先生!」

 スノーグラウスの言葉にマホガニーはそう言ったが、ツルギはモジモジしていた。

「どうした、ツルギ」

 そこにスノーグラウスが声を掛けるとツルギは、

「スノー……スノーグ……お兄さん?」

 と首を傾げている。どうやらツルギは、スノーグラウスの名前が長くて上手く聞き取れていないらしい。

「俺のことはスノーグでいい。分かったか?」

 しかしそこはスノーグラウスが折れ、ツルギにそう言った。ツルギはようやく頷いた。

「分かりました、スノーグ」

「なら訓練開始だ」

 スノーグラウスの声に応じ、真っ先に動いたのはマホガニーだ。

「行くぞ、スノーグ!」

 マホガニーもちゃっかりスノーグと呼びながら、跳躍して武器を振り上げた。だがスノーグラウスはパレットを一度と開かずひらりと避けた。

「遅いな」

「速さで行く!」

 しかし身軽なツルギは、避けたスノーグラウスの背後に迫っていた。私は一撃くらいは当たるのではないかと思ったが、スノーグラウスは身を翻して拳で向かい撃ったのだ。

「うっ……!」

 吹き飛ばされるツルギ。手加減はしているだろうが、かなり飛ばされた。

 私がハラハラしていると、焦ったマホガニーが武器をもう一度振りかざしていた。

「ツルギに何してる!!」

「怒りで動きが雑になってるぞ」

 マホガニーの突撃は、くるりと半回転したスノーグラウスの足払いによって崩された。うわぁと悲鳴を上げて飛ばされるマホガニー。私はもうやめようと言いかけた時だった。

「まだ、終わらない」

 ツルギは立ち上がりながらどこかに向かう。私は、そのツルギの予想してもいなかった動きに呆気に取られていた。

 ツルギが、投げ出されたマホガニーの武器を手に取ったのだ!

「これで……!」

 それは、マホガニーが振り上げた時よりも早いスピードでスノーグラウスに向けられていった。これはいったのではないか、と思った私だが、そうなるとスノーグラウスが怪我をしてしまう。どちらも彼らの大事な子どもなのに、と私の感情が複雑だった時、スノーグラウスのパレットが開いた。

 ガンッ!

 スノーグラウスから飛び出した刃が、ツルギの武器を止めた。だがスノーグラウスは尻もちをついていて、どちらもすぐには動けない状態だった。

「ひ、引き分けー!」

 私はすかさずそう叫んで間に割り込んだ。もういいのだ。これは訓練なのだし、一度くらいの模擬戦闘でそこまで上達することもない。

 ツルギは武器を下ろし、スノーグラウスはパレットを閉じて立ち上がった。

「なかなかいい筋だった。……痛くないか?」

 スノーグラウスはそう言って二人の様子を確認する。倒れたままだったマホガニーもすぐに立ち上がった。

「大丈夫! 兄ちゃん強いな!」

 マホガニーはすっかりスノーグラウスに懐いたみたいだ。マホガニーがスノーグラウスに駆け寄る。スノーグラウスがマホガニーの頭を撫でると、ツルギも近づいた。

「あたしも、撫でて」

「分かった」

 スノーグラウスはマホガニーとツルギの兄になってくれそうな予感だった。きっとロドスにいたら、もっと早く兄妹みたいになっていたかもしれない。

 直後、艦がグラリと大きく傾いた。次にはアナウンスが流れる。

「敵の偵察ドローンを感知した。航路を急遽変更する」

 ケルシーの声だった。

 そうか、この艦は今動いていたのかと私はマホガニーとツルギをスノーグラウスに任せて中枢制御室へ向かった。この艦がどこに向かっているのか聞きに行くのだ。いつどのタイミングでロドスへ乗り込むのか、も。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。