「俺のことを倒すつもりでかかってこい。分かったな?」
「分かりました、スノーグラウス先生!」
スノーグラウスの言葉にマホガニーはそう言ったが、ツルギはモジモジしていた。
「どうした、ツルギ」
そこにスノーグラウスが声を掛けるとツルギは、
「スノー……スノーグ……お兄さん?」
と首を傾げている。どうやらツルギは、スノーグラウスの名前が長くて上手く聞き取れていないらしい。
「俺のことはスノーグでいい。分かったか?」
しかしそこはスノーグラウスが折れ、ツルギにそう言った。ツルギはようやく頷いた。
「分かりました、スノーグ」
「なら訓練開始だ」
スノーグラウスの声に応じ、真っ先に動いたのはマホガニーだ。
「行くぞ、スノーグ!」
マホガニーもちゃっかりスノーグと呼びながら、跳躍して武器を振り上げた。だがスノーグラウスはパレットを一度と開かずひらりと避けた。
「遅いな」
「速さで行く!」
しかし身軽なツルギは、避けたスノーグラウスの背後に迫っていた。私は一撃くらいは当たるのではないかと思ったが、スノーグラウスは身を翻して拳で向かい撃ったのだ。
「うっ……!」
吹き飛ばされるツルギ。手加減はしているだろうが、かなり飛ばされた。
私がハラハラしていると、焦ったマホガニーが武器をもう一度振りかざしていた。
「ツルギに何してる!!」
「怒りで動きが雑になってるぞ」
マホガニーの突撃は、くるりと半回転したスノーグラウスの足払いによって崩された。うわぁと悲鳴を上げて飛ばされるマホガニー。私はもうやめようと言いかけた時だった。
「まだ、終わらない」
ツルギは立ち上がりながらどこかに向かう。私は、そのツルギの予想してもいなかった動きに呆気に取られていた。
ツルギが、投げ出されたマホガニーの武器を手に取ったのだ!
「これで……!」
それは、マホガニーが振り上げた時よりも早いスピードでスノーグラウスに向けられていった。これはいったのではないか、と思った私だが、そうなるとスノーグラウスが怪我をしてしまう。どちらも彼らの大事な子どもなのに、と私の感情が複雑だった時、スノーグラウスのパレットが開いた。
ガンッ!
スノーグラウスから飛び出した刃が、ツルギの武器を止めた。だがスノーグラウスは尻もちをついていて、どちらもすぐには動けない状態だった。
「ひ、引き分けー!」
私はすかさずそう叫んで間に割り込んだ。もういいのだ。これは訓練なのだし、一度くらいの模擬戦闘でそこまで上達することもない。
ツルギは武器を下ろし、スノーグラウスはパレットを閉じて立ち上がった。
「なかなかいい筋だった。……痛くないか?」
スノーグラウスはそう言って二人の様子を確認する。倒れたままだったマホガニーもすぐに立ち上がった。
「大丈夫! 兄ちゃん強いな!」
マホガニーはすっかりスノーグラウスに懐いたみたいだ。マホガニーがスノーグラウスに駆け寄る。スノーグラウスがマホガニーの頭を撫でると、ツルギも近づいた。
「あたしも、撫でて」
「分かった」
スノーグラウスはマホガニーとツルギの兄になってくれそうな予感だった。きっとロドスにいたら、もっと早く兄妹みたいになっていたかもしれない。
直後、艦がグラリと大きく傾いた。次にはアナウンスが流れる。
「敵の偵察ドローンを感知した。航路を急遽変更する」
ケルシーの声だった。
そうか、この艦は今動いていたのかと私はマホガニーとツルギをスノーグラウスに任せて中枢制御室へ向かった。この艦がどこに向かっているのか聞きに行くのだ。いつどのタイミングでロドスへ乗り込むのか、も。