双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

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二人

 

 その後、連れ帰ったアーミヤを誰も使っていない部屋で再度冷却保存し、厳重なセキュリティを施した。

 一年後、また会おう。そう心に決めて。

 そうして私は、残りの仕事を片付けてしまおうと執務室に向かっていると、スノーグラウスが通路を歩いていてギョッとした。

「ちょっとスノーグラウス! まだ動いたら……」

 私が慌てて駆けつけると、スノーグラウスを支えているネイルが割り込んだ。

「ごめんね、ドクター。スノーグが、歩きたいってひつこくて」

「寝ているばかりじゃ体が鈍りそうなんだ。歩かせてくれ」

 とネイルもスノーグラウスも言ってきたが、私はこれでも医者である。私はスノーグラウスの手を取った。

「そうやって脱走するオペレーターもロドスにはいたけど、今は休まないといけない。……ほら、まだ骨がくっついていないじゃないか!」

「痛い痛い痛いっ」

 私はわざとスノーグラウスが骨折している部分を触ってやる。スノーグラウスは崩れるように座り込んだ。

「ほら、病室に戻るよ」

 私はそう言い、スノーグラウスの肩を抱えてネイルと一緒に病室へ戻ると、偶然、マホガニーとツルギが通りがかった。

「あれ、スノーグ、もう動いて大丈夫なの?」

「骨何本も折れたって聞いた」

 そんなマホガニーとツルギの様子を見たからか、スノーグラウスは調子に乗ったのだ。

「ああ、もう大丈夫……って痛い、そこは痛いってドクター!」

 私はスノーグラウスの骨折している部分をわざと触って黙らせる。こうして見ると、ロドスにいた医療オペレーターはもっと大変だったんだろうなぁと改めて思い出す。

「マホガニー、あとで薬を作って置いてくれるかな? 筋弛緩剤だ。このスノーグラウスお兄ちゃんを黙らせるために」

「分かった!」

 マホガニーは即答したが、スノーグラウスは慌てた。

「待て、それでまた動けなくなるのは困……ドクター、そこは触るな!」

「ハハハ、分かったなら病室帰るよ」

「……分かった」

 すっかり萎らしくなったスノーグラウスを肩に、私はネイルと共に病室へ向かう。

「ハハハ……やっぱ怒られちゃうよね〜、でも怒られて落ち込んでるスノーグ、ちょっと可愛いじゃん」

 とネイルが言うと、可愛いってなんだよとスノーグラウスは少しだけ不貞腐れた。

 なんだか、エアースカーペを思い出すな。

 私はそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 仕事も区切りがつき、たまには宿舎で休もうと自室に来ると、マホガニーとツルギはすでに寝支度を済ませていて、並んで窓を覗き込んでいた。

「ぼく、パパと同じくらい強くなるんだ〜」

「あたしは、ママくらい」

 そんな会話をしている二人は実に子どもらしくて私は気持ちが和んだ。彼らはまだ六歳なんだなぁと思う。

「パパとママを追い越さないのかい?」

 私は話しかけながらベットに腰掛けた。二人はベットから窓を覗き込んでいたのだ。

「パパとママはね、ずっと強い方がいいから、追い越せないくらいがいい」とマホガニーは言い、隣のツルギも頷いた。「ねぇ、ドクター。パパとママも、スノーグとネイルみたいにいつも一緒にいたの?」

「そうだなぁ……」私は、ソーンズとレッドのことを思い出した。「そもそも、二人が付き合うこと自体、ビックニュースだったんだよ。ソーンズ……パパはね、あまり人と喋るような人じゃなかったし、ママはループスの人に興味があったから」

 そう話すと、マホガニーの耳がピクリと動いた。マホガニーは、自分がループスに近いことをもう知っているのだ。

「で本当に付き合っているのか疑わしがったから、私が直接パパに聞いたんだよ。本当に恋人なのかって。そしたら数日後には文字びっしり書いた書類にして渡されて。本当に、パパはママのことが好きなんだってことが分かったんだよ」

「へ〜!」

 マホガニーもツルギも、ソーンズとレッドの話はいつも楽しそうに聞いてくれる。自分の両親がカッコよくて強いこと、仲良しだったこと、それは子どもにとっては本当に誇らしいことなのだろう。

「思えば、よく一緒にいたかもね。パパとママは大体いつも同じ戦隊で外の任務に出ていたから」と話すと、ソーンズとレッドがいつも肩を並んでいて歩いていたことを思い出して辛くなった。「パパはママと一緒に任務に出ると、ますます活躍してね。本当に、仲がいいんだ」

 だけど、ロドスを無事に奪還したとして、ソーンズとレッドが目覚めた時は、二人が夫婦だったことも忘れているのかもしれない。何気なく手を握り合っていたこと、レッドがソーンズの腕によく絡みついていたこと、それらを忘れてしまっていたら……と思うと。

「ドクター?」

 思い詰めすぎていたのだろう。ツルギが私の顔を覗き込む。私は、なんでもないと首を振った。

「そろそろ寝ようか」

「「うん!」」

 マホガニーとツルギはベットで並んで横になり、私は布団を肩まで掛けてあげた。エーギルとループスの間に生まれた子どもがこれからどうなるのか私には分からないが、それでも、双子たちは支え合って生きて欲しいと願ってしまう。ソーンズとレッドのように。

「おやすみ、マホガニー、ツルギ」

「「おやすみなさい、ドクター」」

 私はただ、二人の未来を願うばかりだ。

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