「ん……」
翌朝。
ぐっすり眠れたのは、ベットで寝たおかげだろう。私は瞼をこすり、上体を起こす。
カーテンを開けると深い森が見えた。人目を避けるためにこの森の奥に艦を停めた訳だが、今は霧が出ていて真っ白だった。外は少し寒いのかもしれない。
私は身支度を整える。すでにマホガニーとツルギの姿はなく、双子たちは早起きだなぁと思っていると、ツルギが汗だくの顔で部屋に入ってきた。
「ドクター、大変!」
ツルギの第一声はそれだった。
「何かあったのかい?」
私は彼女の声に緊迫感を覚え、急いで気持ちを切り替える。
ツルギは、青ざめた顔で答えた。
「マホガニーが……いない」
「え?」
「マホガニー!」
「マホガニ〜!!」
私たちは全員でラズハ艦内を探し回った。
いつもツルギと一緒にいるマホガニーが、単独行動をする時は大抵薬を作っている時くらいだった。だが、その薬の研究室にもいない。念の為訓練室や訓練の先生に当たりそうな人物に話を聞いてみたが、誰もマホガニーを見かけていないらしい。
「マホガニー、いない?」
「マホガニー、いないの?」
イウニとセネトにも話を聞いてみたが、彼らもマホガニーを知らないみたいだった。私は内心焦っていた。六歳の子どもというのは誘拐されやすい年齢でもある。いくら戦闘の経験があっても、もしかして……と悪い考えばかりが浮かんでしまう。
「ドクター、監視カメラにマホガニーが映ってるのがあったよ!」
ラズハでマホガニーを捜索していた中、クロージャが端末を片手に走り寄ってきた。端末は最近作ったのだろう。初めて見る機械だ。
「ほらこれ! ここの!」
とクロージャは端末の画面を私に見せる。その監視カメラの映像はラズハの甲板を映していて、そこにマホガニーの姿があった。
音声の記録まではないようだが、マホガニーは何か独り言を呟きながら歩いていて……甲板を飛び降りたところで画面の端へと姿を消した。
「まさか、マホガニーは一人で外へ……?」
私は手身近にあった窓から外を覗き込む。そこは霧が広がる森で、何か用があってマホガニーが一人で外に出るとは思えない。
何より、ツルギと一緒じゃないのが不審だ。
「ちょっと、スノーグ、病室戻ってってば!」
そこにネイルの声が飛び込み目を上げると、フラフラのスノーグラウスがまた病室を脱走していた。今度はネイルも引き止めている様子だが、スノーグラウスはお構いなしだ。
「外に出たのなら俺も探そう。外は危険かもしれないからな」
とスノーグラウスはここでも他人優先な考えを言うのだ。
「スノーグラウスは病室で休んでて」
私はスノーグラウスにそうは言ったが、確かにラズハには、即戦力となる者はそんなにいない。私は考えた。
「だが、マホガニーが奴隷船に連れて行かれたらマズイだろ」
スノーグラウスは引き下がらない。奴隷船の話は、エアースカーペから聞いたことがあるのかもしれない。
「そうだけど……」私は、最終手段をもう思いついてはいた。「他の人に頼むよ。大丈夫、マホガニーはすぐ見つかるから」
私はスノーグラウスの肩に手を置いてある人物のところに向かった。今動けるオペレーターは、彼しかいない。