「ケルシー、クロージャ」
私は中枢制御室へ向かい、そこにいた二人に呼び掛けた。ロドスより迷宮になっていないので、中枢制御室には簡単に辿り着いたのだ。
クロージャはこちらを振り返って手は振ったが、何も言わなかった。ケルシーはというとちらりとも見ずに行き先を熱心に見据えていた。私は前置きを抜いて早速本題を質問した。
「どこへ向かっているんだい?」
「名もない密林だ。丁度身を隠せそうな場所があったんでな」と説明しながら、ようやく私の方を振り向くケルシー。「それに、第二ロドスにはまだ人が足りない。志を持った者が、この艦に乗ってくれる新たなオペレーターも必要だ」
聞くところによると、元々いたロドスオペレーターは一人もこの艦にはいなく、ケルシーとクロージャ、そして三年前に出会ったスノーグラウスしかいないらしい。私と双子たちを合わせてようやく人員が六人になったということだった。
私は途中から記憶喪失だったので分からないが、ロドスの最初というのはこんな感じだったのだろうか。こんな形ではあるが、似たような空気感を知ることが出来て私は少し新鮮な気持ちだった。
「よし、敵のドローン偵察範囲からは距離は取れたみたい。あとはあの密林に接地するだけだね!」
艦の操縦をしているらしいクロージャが、そう言って目の前の画面を見つめた。そこにケルシーが冷ややかに一言を刺す。
「今度はしっかり接地してくれよ」
「大丈夫だって! さっきはオリジムシが来たから上手く出来なかっただけで……」
ドォオオオン……!
直後、艦が激しく揺れた。画面上ではまだ艦は接地していないはず。一体どこから……と私が思っていると、画面の一角に誰かのコールが入った。
「スノーグラウスだ。訓練室で、マホガニーが爆発した」
「えっ?!」
衝撃的発言に私は驚き、急いで訓練室に向かった……。
「マホガニー、大丈夫か!」
訓練室に向かうと、そこにはいつか誰かの頭を思い出させるような小さなアフロがそこにあった。
そばにはそこに座り込むツルギがいて、スノーグラウスは反対の隣で立っていた。怪我をしていそうなのはその二人の間にいるマホガニーだけのように見えた。
「ドクター」
マホガニーがアフロ頭のままこちらを振り向いた。手には割れた試験管。私はそれを見た瞬間思った。君は、そうなのか。君はソーンズと同じ道を辿るというのか?
「どういうことだい?」
マホガニーは平気そうにケロリと笑うので、私はスノーグラウスへと目を向けた。スノーグラウスの言い分はこうだ。
「マホガニーはもっと強くなると言い出して、その妙な瓶を取り出して中身を自分の武器に掛けたら、爆発した」
「そうか……」
彼の子どもならそういう想像も出来た。だが、今まで爆発させる薬作りなんてしなかったのに。それもこれも、私が彼らを戦場に引き込んだからだろうか。
「マホガニーを怒らないで」私が何か言うより早く、口を挟んできたのはツルギだった。「あたしが、マホガニーにスノーグみたいな刃を飛ばせるようになったら強いかもって言ったから……」
「ツルギのせいじゃないよ。失敗したのはぼくのせいだし」今度はツルギを庇うようにマホガニーが割り込んだ。「刃を飛ばすのは無理だけど、爆撃なら飛ばせるかもって思いついたままやったぼくが悪いし」
私は最初から彼らを責める気はなかったのだが、二人がそうして庇い合っていることが嬉しかったのだ。彼らは互いに想い合っている。それが分かれば充分で。
「研究室の用意が出来るかケルシーに相談してくるよ」
私はマホガニーとツルギの頭をぽんぽんと撫で、再び中枢制御室へと向かった。世はどこも戦場で暗がりをもたらしていたが、彼ら双子たちの間ではそれすら無意味なように見えたのだ。