双星方舟〜ラズハ・シップ〜   作:青瑠璃

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言霊

 

 ラズハにロゴスが来たことで、色々と大きな変化があった。

 まず、ロゴスの呪術によって保護されていたロドスの情報を、クロージャによって取り出すことが出来るようになったのだ。それによりマホガニーとツルギは、初めて、ロドスで外勤任務に出ていた時の両親の姿を映像として見ることが出来たのだ。

 マホガニーもツルギも相当嬉しかったのか、何度も再生して記録映像を見ていた程だ。

「ドクター、医療用チューブ少し貰っていい?」

 特にマホガニーは、ソーンズの独特な武器と戦い方に影響を受け、自ら武器を改造し始めたのである。そして今度は医療用チューブを使いたいと言い始めた。

「いいけど……一応許可申請出してね」

 医療道具は特に、紛失すると困るものも多いのでラズハには色々と決まりがあった。この辺りはだんだんとロドスに近づいてきたかもしれない。

 マホガニーも、毒を武器にするのだろうか。

 そしてツルギはというと、レッドがいる作戦記録だけではなく、他のロドスオペレーターの作戦記録も見るようになった。どうやら見ているのはテキサスとかラップランドとかの作戦記録で、私は最初は気づかなかったが、どうやらツルギは、ループスの動きに着目し始めたようである。

 ツルギとマホガニーは、少しずつ自分なりに特訓をしていった。

「これらは現代アーツと呼ばれるもので……」

 ロゴスも、子どもたちに対してアーツについての授業も開いてくれたので、強化訓練や学習はますます加速していった。

 ただ、ラズハにはまだ問題を抱えていた。ある日の昼間、私はロゴスにある部屋へと連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ううっ」

「あー……」

 それは、ホーンバーンが従えていたトイフェルのコピー人間たちのことである。

「彼らがトイフェルのコピー人間か」

 とロゴスは強化ガラスの向こうにいる、言葉を話さずに意味もなく彷徨いている彼らを眺めた。

「項にマークがある話はしたよね。マッドグリーンやスノーグ戦隊は私たちが根気強く面倒を見ることで、私たちとはほとんど変わらない動きが出来るようになったんだ」と私は改めて説明をする。「ただ、彼らは全く進歩しないんだ。余程失敗作だったのか、ホーンバーンがあまりにも雑に扱ったからか、もっと療養期間が必要なだけかもしれないが……」

「こういう話を聞いたことがある」とロゴスが話し出した。「ある駄獣を育てる時、一方では優しく育て、一方は酷く厳しい育て方をする実験をした者がいてな。当然、酷く厳しい育て方をした駄獣は、凶暴で荒々しい怪物と成り果ててしまった」

「私もそんな気はしていたんだけど……」

 それでも、彼らはこうして生きているのに、と私はガラスの向こうにいる彼らを見つめて慈悲をかけてしまいそうになる。

「記録を見る限り、マッドグリーンと共にいたコピー人間は短命だったそうだな」

 ロゴスは思っている以上に、ラズハの情報をもう記憶しているのかもしれない。

「そうなんだ。今ここにいる彼らも、何人かは衰弱し切っていて……」

 私はちらりと部屋にいる彼らを確認する。何人かは座り込んでいたりフラフラしている者もいる。栄養剤だけでも与えたいが、口から入れても注射で注入しようとしても、ジッとすることが出来ない者が多くてほとんど与えられていなかった。

「言葉というものは、一つ一つに力が宿っている。そしてそれは、聞き慣れた声ならもっと反応がしやすいものだろう」それからロゴスはこちらに目を向けた。「こちらからの声は、向こうには聞こえるのか?」

「ああ、ここからなら声が届くよ」

 私はこちら側と向こうの部屋に繋がるスピーカーをONにする。するとロゴスが、何か呪文を宙に書き始めた。

 

「お前ら、座れ!」

 

 え、その声って……。

 突然ロゴスの呪文から発せられたホーンバーンの声に、部屋の向こうにいた彼らが途端に動きを止めてその場で座り始めたのだ。一寸の狂いもなく。

「どういうこと……?」

「羽獣が生まれた時に見た動くものを親と思うのと同じ、刷り込みというようなものだろう。彼らがホーンバーンの声に従っていたのなら、効果あると思っていてな」

 通用するとはな、と興味深げにロゴスはガラスの向こうの彼らを観察する。この人、思っていた以上に出来ること多いしやることすごいし、それでいて通用するかも分からないことを躊躇いもなくチャレンジする精神力も高いんだよな……。改めて、ロゴスはすごいなと心の中で拍手を送る。

「どうした? 早く処置を済ませた方が良いのではないか?」

 ついうっかりロゴスの横顔を見取れているとそう言われてしまった。

「あ、ああ、そうだな。ありがとう、ロゴス」

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