色々話を聞きたかったというのもあり、私は執務室で仕事中は、ロゴスに秘書を頼むことにした。
ロゴスはそれなりに書類作業を手伝ってくれるし、暇になると横笛を吹いている。そして時々、ぽつりぽつりと呪術について話してくれることもあった。そのタイミングで、私はロゴスに今のラズハをどう思うか訊いてみたのだ。
「今のラズハの現状……やはり、ロドスと比べると、戦闘員が少ないのは一目瞭然だ」とロゴスははっきりと言った。「今すぐロドス奪還のためにトイフェルの拠点に踏み込むのは、危険性が高いと推測する」
「そうだよね……」
ロゴスがいる今、ロドスの土台に眠っている主要オペレーターのところには行けるだろう。だがそこに行くためには、トイフェルの拠点に突っ込まなければならない。コピー人間の話はこれ以上得られたことはなく、レオンハルト主導で「雷の天災」があっただろう現地へ行っては貰っているが、そこに失敗作だろう誰かがいることもなくなっていたのだ。トイフェルは、コピー人間の失敗作を廃棄することをやめたらしい。本当にやめただけならまだいいのかもしれないが。
「しかし、子どもたちが確実に力をつけて成長をしているのは明確だ。トイフェルに何かしら隙が生じたら、主要オペレーターを連れ出すことだけは出来るかもしれぬ」
とロゴスが言う子どもたちは、マホガニーやツルギだけではなく、ネイルやブラックローズのことを指していた。それに、最近はイウニとセネトも訓練室に通うようになり、日々オペレーターになれるよう努力していた。
「オペレーターたちだけの奪還、か」
それは私も構想を練ったことはあった。主要オペレーターたちだけを連れ出し、その後でロドスを奪還する。それは、私が石棺から目覚めてアーミヤが助けてくれた時の状況によく似ている気もした。
その時、ロゴスが何か資料を見かけて視線を落とした。もう一枚捲り、少し沈黙したのちにロゴスは再び口を開いた。
「角に鈴があるエラフィア……トライディシャンのことではないか?」とロゴスが言った。「独特な巫術を用いていて、自らの里自体にもステレスのような呪術を掛けているのだ。この者が敵となると、目視するのは我でも難しい」
どうやらロゴスは、カジンのプロファイリングを見ているらしい。よく、トライ……なんとかの話を知っているものだと関心したが、ロゴスでも目視するのが難しいのならお手上げだ。
「……一人心当たりがある。行ってみるか?」
ロゴスの夕焼け色のような眼差しが私に真っ直ぐ向けられる。私は小首を傾げた。
「トライなんとかの人に?」
と私は訊いたが、違うぞとロゴスは目を伏せた。
「ステレスでも目視出来る人物だ」