そうしてラズハの行き先は、イェラグに近い名もなき森となった。
なんでもそこに、ラズハに手助けをしてくれる人物がいるというロゴスの情報だったが、その人が誰なのかははっきりとは教えてくれなかった。ただ、ロドスのオペレーターだった人物、と聞かされただけだ。
ロドス襲撃時、戦火から逃げ切った者は何人かはいるようだが詳細はほとんど得られず、些細な情報でも有難かった。誰でもいいから手を借りたいラズハは、ケルシーと相談して早速その森へ向かった。
「早速ドクターの護衛だ!」
「ドクター、守る」
外に出ると、すっかり元気になったマホガニーとツルギが私に同行してくれていた。スノーグラウスはまだお留守番だけど。
本当はロゴスとも同行して欲しかったが、彼はラズハに来てずっと私に付き添ってばかりだったので、休んで欲しいと留守を頼んで置いた。だから私の他に、マホガニーとツルギだけで協力者に会いに行くことにした。
「なぁドクター。これから会いに行く人はどんな人なんだ?」
森を歩きながら、マホガニーがそう聞いてきた。
「うーん、ロドスでオペレーターをやっていた人みたいなんだけど……」
私はロゴスに、名前すら聞かなかった。ただ、森の奥地にある小屋に行けば分かる、とだけ言われて。
「怖い人じゃないといいな」
とツルギも言い、森の中を進んで行く。ロゴスが言うには、この川を辿って行けばいいらしいが……。
ガサン!
「うわぁ?!」
その時、私は急に足元を捕えられ、あっという間に逆さま吊りとなって網の中に閉じ込められた。恐らく獣の罠だろうが、まさか引っ掛かってしまうとは情けない。
「ドクター、今助けるからな!」
マホガニーはすぐに飛びついてきたが、私が慌てて妙な動きをしたからだろう。腕や足が網と複雑に絡まってしまい、罠を解くのは難しそうだった。
「……斬る?」
とツルギも木に登って近づいてきたが、猟師さんの罠を勝手に斬っても大丈夫なのかなぁと私はちょっと不安になる。まぁ斬ってもらうしかなさそうなのだが。
「お願い、ツルギ」
このままではいけないので私はツルギに頼む。マホガニーの武器も一応刃物ではあるが、あんなデカイ武器を振りかざせば私の腕ごと持っていかれそうなのだ。
「分かった」
だがツルギの武器はナイフである。それなりに大きな獣を捕らえるのだろう罠の紐が、そう簡単に斬られるようには出来ていないだろう。ツルギは慎重に、罠を斬り始めた……。
ガサガサ……。
直後、茂みを掻き分ける音がし、警戒したマホガニーとツルギが一旦私から離れる。
緊迫した一瞬。
出てきたのは……。
「待ってくれ。俺は人喰いの趣味はない」
一人の、リーベリの男だった。
リーベリの男は片耳にクロスボウを持っていたが、敵意はないと示すように両手をあげている。その格好を見る限りこの辺りの猟師だろうが……私は彼の顔を見て言葉を失っていた。
「「ドクター、指示を」」
一方、突然の猟師の登場に警戒を解かないマホガニーとツルギは、私の指示を待っていた。私はすぐに伝えた。
「その人が、私が探していた人物だ。……久しぶり、トター」
私がそう言うと、リーベリの男がわずかに驚いたような顔をした。