ラズハはわずかに、医療支援を続けていた。
それは、ラズハで長期治療をしている家族のよしみで、とか友好的な町との付き合いで、ということで医療サービスを提供し、対価として報酬をもらっていた。
報酬目的というよりは、ただただあちこちを彷徨っている艦、というよりは、何かしら活動していた方が目立たないからである。
それに、ラズハの戦闘員は更なる増員が期待されていた。ホーンバーンが従えていたコピー人間は、ロゴスの読み通りホーンバーンの声ならよく聞いたのである。不器用なホーンバーンに育成を頼むのは心もとなかったのでスノーグラウスに付き添ってはもらっていたが、ようやくゾンビ人間から普通の人間らしい振る舞いが出来るようになっていたのだ。
「コイツらが、まさかフォークを使って飯を食えるようになるとは思わなかったな」
とホーンバーンが言うと、そばにいたスノーグラウスも同感を示した。
「俺も似たような経験をしたが、今では立派なラズハのオペレーターだ」
「へぇ……いつか俺も、前線に出ることになるのかねぇ」
「なるだろう。あんたの力なら」
「言うじゃねぇか、子どもの癖に」ホーンバーンは口は悪いが、もう拳を作ることはなくなっていた。「早くその怪我治して俺とタイマンしてくれよ。今度は負けねぇから」
「望むところだ」
どうやら二人も、仲良くなったらしい。
「「トターお兄さん!」」
そしてトターはというと、いつもマホガニーとツルギ、イウニとセネトに囲まれていた。子どもたちからしたら初めて見るクロスボウに、トターは注目の的だったのだ。
「そんなに訓練の先生を頼まれても……俺が教えられることは一つも……」
トターは子どもたちに何度も先生になってくれと頼まれていた。トターの狙撃の腕は、誰が見てもカッコイイものだろう。その内、子どもたちはトターの耳の良さを知って、目隠ししながら訓練を始めたものだから私は驚いたが。
「そう、そうやるのよ」
もう一つ変化があったのは、イネスが訓練室に来るようになったことだった。
「……なんか、見える」
セネトは、精神的な部分を見透かしたり干渉することが出来るアーツの使い手であることが判明したのである。ある時イネスに向かって、セネトが唐突に「黒い山羊が視える」といったことがきっかけで、イネスは積極的にセネトにアーツの使い方を教えるようになったのだ。
「いいなぁ。イウニにも教えて欲しい〜」
とイウニは駄々を捏ねたが、こればっかりは得手不得手があるので教えて出来るようになる訳ではなさそうだ。
そうして、ラズハは徐々に力を蓄えていった。来るべき日のために。
そんな時であった。ラズハ外で自由行動をしていたレオンハルトが、ビックニュースを持ち込んできたのだ。
「ねぇねぇ、聞いて聞いてドクター!」
口早に喋りながらまたもや無断で執務室に入ってくるレオンハルト。レオンハルトの手には、大きな新聞が握られていた。
「トイフェルにいた研究者たちが一斉になって逃げ出した話が記事になってるんだよ!」レオンハルトの声はいつもより大きかった。「俺も見に行ったんだけど、すごい多くの研究者と、有名な研究者もいてね……で、その研究者団体のリーダーが記者のインタビューにこう言ってたんだよ!」
『ロドスのトップになら全てを話す』