「ありがとう、ラズハのお兄さん、お姉さんたち!」
私たちは来るべき決戦を前に、色々と整えなければならなかった。
「もし上手く行ったら、その時はある製薬会社で会おう」
私は、ラズハに入院していた最後の患者であった子どものお見送りに出ていた。
ラズハは、これから戦いに巻き込まれるかもしれない。患者たちにはそれだけ伝え、症状が安定した人から次々と退院させ、鉱石病末期の患者はラズハで最後まで看取った。
そうしてラズハには、戦闘員たちとわずかな内勤オペレーターのみとなっていた。少し前までは患者たちも行き通っていたラズハも、今はしんと静まり返っていて。
「嵐の前の静けさみたいだ」
とスノーグラウスが呟いた。
「ロドスの二の舞にはしたくないからね」
ロドスが襲撃された時のように、非戦闘員まで巻き込みたくない。私はそう考えて、患者たちを退院させたのである。
それは、スノーグラウスにも分かっているみたいで。
「ああ、そうだな」
とスノーグラウスは頷く。
「ドクター、出発の準備出来たよ♪」
ラズハに戻ると、出発の準備を整えたレオンハルトがいた。隣にはイネスがいる。
「この手紙をパールホワイト企業の社長に届ければいいのよね」
とイネスは丸めた手紙を見せる。それは、ブルーグラスへ交渉の意思を示すメッセージだった。それをパールホワイト企業のシルクへ届け、シルクを通してブルーグラスへ送り届けるつもりだ。こちらの事情は、ドクターの印を使って必ずシルクに届くようにという手紙で伝えている。シルクが快く受け入れてくれたのも有難いことだ。
「荷物と一緒に届けてね。怪しまれたら困るから」
「分かってるって!」
レオンハルトはこんな感じだが、テラの移動の仕方をよく知っている。それに顔が割れているから、レオンハルトに荷物の配達を頼んだのである。イネスはその護衛としてついて行ってもらうことにした。
「……危険なことがあるかもしれない。無理はしないで」
私はレオンハルトとイネスに伝える。まさか、薬の試供品を届けることが、ロドスからのメッセージを運んでいるとは思わないだろうが、万が一がある。
「何を今更そんなこと言ってるのよ」とイネスは言った。「今に始まった訳じゃないわ」
イネスは元々トイフェルにいた傭兵なので、レオンハルトのそばにいるというよりは、遠巻きで護衛をして欲しいと頼んでいる。トイフェルがイネスを狙っている可能性が高いのだ。彼女は何も言わないけれど。
だが、今の状況、トイフェルのことを知っているのはイネスだけだというのもあり、レオンハルトの護衛は彼女に頼んだのだ。彼女なら、上手くやれると信じて。
「行ってくるね、ドクター」
手紙を荷物に仕舞い、レオンハルトは私に手を振った。イネスは何も言わないまま鋭い目だけ向けて、そのままレオンハルトについて行く。……多分、イネスには何か視えたのだと思う。
私は彼らが見えなくなるまで見送って、自分の出来ることをしに行った。作戦資料の製作に強化訓練のスケジュール……出来るだけ急がなければ。