私たちは密林の隅に艦を接地させた。
薬草なども必要だからとケルシーはスノーグラウスを連れて先に密林の様子を見に行った。私は双子たちと共に艦の中で留守番を頼まれたのだ。クロージャは常に艦のメンテナンスをしているから外には基本出ないらしい。
「外の世界はこうなっていたんだな」
艦の甲板からじっと密林を観察しているマホガニーがそう言った。そうだった。彼らは赤ちゃんだった時にロドスから離れて以来、あの名もない集落を出たことがなかったのだ。
「世界には色んなものがある。きっとこれから、色々見ることになるだろうね」
私が甲板の縁にしがみつくように立っているマホガニーの背中にそう言った。マホガニーからはへぇ、の一言だけだったが、そこには期待感が混ざっているように聞こえる。
「……ドクター、あれ何?」
そこに、私の裾をグイッと引っ張ったツルギが、そう言って何かを指した。見るとそこにはコータスの少女が、明らかに艦の中から盗んだ何かを持ち出そうとしている姿があったのだ!
「こら、泥棒!」
「ゲッ!」
私が声をあげると、コータスの少女はビクリと飛び上がってこちらを振り向いた。私はマホガニーとツルギに指示を出す。
「マホガニー、ツルギ、あの泥棒を捕まえるんだ!」
大人としては私が出るべきなのだろうが、何より自分には人並みの体力すらもない。泥棒を捕まえるくらいなら二人の力だけで充分だろうと思ったが、その瞬間コータスの少女が袖から長いロープを繰り出したのだ。
「あれは……!」
不覚だった。
コータスの少女はロープを密林から飛び出していた木の枝に引っ掛けると、あっという間に艦から飛び下りたのだ。そのままコータスの少女は密林へと逃げて行く。どうする? と双子たちが私を振り向いた時、クロージャが艦内から出てきた。
「ちょっとちょっと! 私のおやつがないんだけど!」
どうやら盗まれたのはクロージャのおやつらしい。私はクロージャに手短に事情を説明した。
「さっき、茶髪のコータスが何かを持って行くのが見えた」
「ソイツが犯人じゃん! 早く捕まえてきて! ケルシーにはちゃんと言って置くからさ!」
とクロージャに言われて私は双子たちを見やった。泥棒を目の前で逃してしまい、マホガニーもツルギもますますやる気に満ちあふれているみたいだ。
「よし、行こう、マホガニー、ツルギ」
「「うん!」」
私はケルシーの許可もなく、謎の泥棒を追いかけて密林に踏み入ったのである……。