私は、ブルーグラスとの交渉のために、とある街外れの建物にやって来ていた。
当時、ロドスのドクターとして羽織っていた防護服ともなるコートは六年前に失っていたのだが、クロージャが似たようなものを用意してくれて、今回私はそれを身につけていた。鏡で自分の姿を見た時、ロドスのドクターだったことを思い出して私自身ですら驚嘆してしまったが。
交渉時間より少し早く来過ぎたが、建物内にはすでに知らない人物が仕切りに彷徨いたりしていて、恐らくそちら側の護衛なんだろうと思われた。
武器の持ち込みを禁じられていなかったので、マホガニーは堂々とあのデカイ武器を背負って私の護衛としてついて来ていた。そちら側の護衛は一瞬戸惑った様子だったが、何も言わずに部屋に通してくれた。
……それにしてもマホガニーの武器、私が渡した時よりだいぶ見た目が変わっているな。ますますソーンズの武器に似てきていて、いずれ毒でも飛ばすのでは、とさえ思えてくる。
私は案内された部屋のソファに座っていた。両隣にはマホガニーとツルギが座っていて、私たちはブルーグラスを待っていた。
トントン……。
しばらくして、扉のノック音がし、振り向くと護衛らしき人が到着したことを知らせに来た。そして、とうとう、ブルーグラスをこの目で見ることとなる。
「ど、どーも〜、こんにちは〜……」
そこにいたのは、護衛の背中にしがみつきながら腰低く部屋に入ってきたエーギルの男だった。
「こ、こんにちは……?」
私は想像していた人物よりヒョロヒョロしていて自信なさげな彼の姿に拍子抜けした。
「あ、あの、きょ、今日はわざわざ、ここに来てくださりアリガトウゴザイマス……」
声小さい。え、声小さいんだけど?
「と、とりあえず座って話しませんか?」
招待された側なのになぜか私がそう言う羽目になり、エーギルの彼を向かいのソファに座るように促す。
「は、はい、そうデスヨネ……」
と言いながらなんとかエーギルの男はソファに腰を下ろした。その間ずっと、隣の護衛の袖を掴んでいる。
「……あなたが、ブルーグラスさんですか?」
私は、青い頭飾りを身につけている彼に問いかけた。彼は何度も小さく頷きながらオドオドと答えた。
「はい、そうですぅ。ブルーグラス、です……」
とブルーグラスは指をソワソワと絡めたり離したりと落ち着かない様子。彼は一体、何者なのだろうか。
「それで、新聞の記事の話なんだけど……」
「ご、ごめんなさい!」ブルーグラスが唐突に声を張り上げた。「ロドスの人だって狙われてるのに! あんなこと言っちゃってすみません! わたしの意思でもあるんだけどあれを言ったのはわたしではないんだ! 本当にごめんなさい!」
「え」
「トイフェルのことはなんでも話す! だから匿って欲しいんだ! お願いしますっ!!」