私は、外で待機していたケルシーとロゴス、イウニとセネトを呼んで交渉部屋で集まった。
その間もブルーグラスはオドオドしていて落ち着かない様子だったが、真偽を見抜くアーツを使うセネトに視てもらったら、
「嘘はついていないみたい」
とのことだった。
「なら、新聞に載っていたブルーグラスの顔写真は誰だったのか?」
と私が聞くと、ブルーグラスは袖を掴んでいる横の護衛へ目を向けた。
「グッピー、その兜を外すんだ」
そうブルーグラスが言うと、その護衛はゆっくり動いて兜を外した。その兜で隠されていた顔を見て、私たちは驚かざるを得なかった。
「初めまして、ブルーグッピーです」
と名乗ったブルーグッピーは、ブルーグラスと瓜二つの顔だったのだ。
「君たちがどこまでトイフェルのことを知っているか分からないが……」ブルーグラスは話始める。「わたしは、一人でコピー人間を造り出していたのだ。ブルーグッピーは私のコピー人間。最初は、サボるために気まぐれに作ったコピー人間デネ……」
「気まぐれに人間を造るとは、エーギルのやることはますます規格外だな」
とケルシーが冷ややかに言うとブルーグラスは怯えたように首を縮めた。だが、同じ顔をしているブルーグッピーの方は落ち着いている。
「性格までは似ていないんだな」
と私が言うと、ブルーグラスはパッと嬉しそうに口を開いた。
「そうなんだ。わたしと似た臆病な性格にはなって欲しくなくてね、しっかり教育はしたんだよ。ついでに目が悪いのも困るから目の遺伝子は弄ったんだがね」とブルーグラスが言っているように、確かにブルーグッピーはメガネを掛けていなかった。「そしたらちょっと自信家のわたしになってしまって。でもまぁ、色々と役に立ってくれてるし助かってもいる自慢の子なんだけど……今回の新聞記者のインタビューに、なんでロドスの話をしたのか」
とブルーグラスが横の護衛を見やると、ブルーグッピーはとうとう口を開いた。
「だけどグラス博士、わたしたちはトイフェルに酷い扱いをされていましたよね。わたしたちはトイフェルに縛られていました。わたしたちは助けが必要だったんです」ブルーグラスそのまんまの声でブルーグッピーがそう話す。「ブルーグラス博士は、ロドスのファンなんですよ。博士の話すことなんてロドスのドクターが〜とか、ロドスのここの技術が〜とか、そんな話ばかりで」
「だが、こうして会うのは初めてなのでは……」
同じ人間が二人いることに私は未だ困惑が拭えないでいたが、ブルーグラスは嬉しそうに話し続けた。
「ロドスの話は噂とかわずかに残っていた資料から知り得ましたからね! 本当、一度だけでも会ってみたいと思っていたんデスヨ……」
「そのロドスを襲ったのがお前たちだろう」
研究者というのは、好きなことをいつまでも長く喋っていたいものである。その気持ちは私も分からなくはないが、ケルシーの警戒心は解けることはなかった。
「ええ、そうデスヨネ……」ブルーグラスは何度も頭を下げた。「家族が、人質に取られていたんデス……それで、仕方なくトイフェルの指示に従っていて……」
それからだんだん、元々小さいブルーグラスの声はか細くなり、最終的には俯いた。
「亡くなったんデス……最初から、わたしの母を人質になんて取っていなかったんデスヨ……唯一のわたしの家族……デシタ……」
「魚のおじさん、可哀想」
話を聞いていたイウニが、とうとう言葉にした。見ると、周りにいる護衛たちもシクシクとすすり泣きを始めていた。
「……もしかして、周りにいる護衛たちもあなたのコピー人間なんですか?」
私はブルーグラスに聞いてみた。ブルーグラスは頷いた。
「ええ、そうです。……本当はまだうちの子たちがいるんですが、全員は……ここにいる子たちはわたしが育てたいい子たちです。元の人間が誰か分からないコピー人間が多数ですが、本当に……」ブルーグラスは顔を上げなかった。「不本意だったんデスヨ……まさかうちの子たちが兵士として使っているだけでなく、乱雑に廃棄されていたことに。カジンに任せるからあんなことに……」
ブルーグラスは言葉を切ったが、今重要なことを聞いた気がする。
「カジン?」
私は聞き返した。ブルーグラスの黒い瞳が、私を見つめる。
「あれ、ご存知なかったですか? カジンはトイフェルの幹部、三柱の一人デスヨ?」