「ほんとーにすまないっ」
ブルーグラスは悪気はなかったと何度も頭を下げた。
「いや、仕事は普通に出来るから大丈夫だよ」
私はブルーグラスの誠意を感じて許したが、彼自身は自分が許せないらしい。
「今日は特にわたしをこき使って欲しい。なんでもする! なんなら甲板にぶら下げても構わない!」
とまで言い出す。
「よく甲板にぶら下げる話知ってたね?」
ロドスでは問題を起こすと、問題を起こした本人が甲板にぶら下げられるという謎の罰があった。それはロドスでしかしないことだと思っていたが……。
「ロゴスさんから聞きました。……あ、聞かない方が良かった、デスカネ」
途端に弱気になるブルーグラスの感情は、いつ見てもある意味忙しそうだなぁと思う。別にいいんだけどね? 話くらい知ってても……。
「やっほー! ドクターが小さくなったって本当ー?」
「ひっ?!」
そこに執務室に天井から入ってきたのはロープだ。いつ見ても天井の通気口から逆さまに出てくるロープの顔には見慣れない。
「おい、ロープ。小さくなったドクターがびっくりしてるだろ」
びっくりしている私に代わり、後ろにいるスノーグラウスが言い返した。てか私、なんでスノーグラウスの膝の上にいるんだろ。
「あはは、そっかそっか、ごめんね〜」と言いながらも反省はしていなさそうなロープ。「でも残念。ネイルも連れてきたのに、ドクターを膝の上に乗せたままでいいのかなー?」
「え」
私はぎょっとした。私今、スノーグラウスの膝の上に座っていてはマズイのでは。
だが私のこの小さな体ではスノーグラウスの腕力から逃れることは出来ず(恐らく成人している私でも逃げることは不可能だろうが)間もなくロープの後ろから茶色いコータスの耳が見えてきた。
「ど、ども〜」
スノーグラウスがいると分かったからなのか、やや目を逸らしながら執務室に入ってくるネイル。怒られる。私絶対怒られるよね?
私が焦っていると、とうとうネイルと目が合って……。
「ズ、ズルい、スノーグ!」ネイルは声をあげた。「私だって膝の上に乗せたいのに! スノーグばっかズルい!」
ん??
「ネイルもドクターを膝の上に乗せたいのか? よし、今そっちに連れて行くから座って待っててくれ」
と言いながら、スノーグラウスはR-0c改を操作してソファに近づく。ネイルはソファに座ったのだ。
「ちょちょちょ、ちょっと待って?! どういうこと?!」
そもそも私がなんでスノーグラウスの膝の上にいるかなんだが、今度は何するつもりなの?
「ネイルの膝の上に連れて行くだけだ。そうだろ? ネイル」
スノーグラウスは普段と変わらない顔でネイルに確認する。ネイルは何も言わずこくんと頷いた。
「ええ?! 小さくなったとしても中身は私なんだよ??」
ネイルからしたら私はただのおっさん。なんで小さくなっただけで……ってちょっとスノーグラウス! なんの躊躇いもなくネイルの膝の上に乗せるじゃん! 二人の嫉妬はどこに行ったの?!
「……ドクター、ちっちゃくて温かい」
後ろからぎゅっとされるネイルの両腕とお胸。当たってる? 当たってるよね? マズくない??
「いいなぁ、ぼくももうちょっと大きかったらドクターを膝の上に乗せたかったなぁ」
それを見ていたマホガニーがそんなことを言い出した。ええ、マホガニーは私のことを親戚のおじさん感覚だったと思っていたんだけど……。
「頭を撫でるとかはどうだ?」
しかしスノーグラウスは私を置いてどんどんと話を進めてく。え、どゆこと?
「あたし、頭撫でる!」
そこにツルギが横から飛び込んできて、私はネイルの膝の上で頭を撫でられることとなる。次にはぼくも! とマホガニーもやって来て私の髪の毛はクシャクシャにされた。
「いいですねぇ……こういう絵を見たかったんデスヨネ」
そして、私が小さくなった原因を作ったブルーグラスは満足そうに頷いている。隣のロープもクスクス笑うばかりで助けようともしない。なんでただ見守ってるんだ、この人たち……。
「とにかくまずは助けてくれる? ブルーグラス」
私が言うと、黒い目を見開いてブルーグラスは驚いた。
「いいんですか? わたしが助けても? 女の子の膝の上になんてそんな乗れる体験なんてないのに……」
だから中身は私のまんまなんだって!